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不況下でますますヒートアップ
2002年、渋谷・初売り「福袋」事情

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■渋谷の個性派ショップの福袋は、固定客へのサービス重視

渋谷には、マニアックなグッズを扱う個性的な路面店が多い。こうしたショップでも初売りイベントを催し、福袋を販売する。顧客が何を欲しているのかを把握しているマニアックなショップの福袋は、それだけ“当たり外れ”が少ないと言えそうだ。

アニメやゲームキャラクターのコスプレ衣料・雑貨を販売する人気店「コスパショップ渋谷」(円山町)の初売りは3日。恒例の福袋は、3,000円、5,000円にはじまり、2万円、3万円、5万円、10万円まで用意されている。商品はオリジナルウェアなど高額なアイテムが多いが、同店によると「毎年、高価な福袋もよく売れる」という。不特定多数の客を相手にした量販店とは異なり、固定客がメインなので販売個数も読めるのである。福袋の中身は、コスチューム、キャラクターグッズなど、すべて自社商品。顧客はすでにショップの商品構成をすべて把握した上で購入するので、福袋を開けた時の“失望感”は少ない。また、常連客同士で気に入ったコスチュームを交換することも多いそうだ。

コスパショップ渋谷

ミニカー専門店「ミニカーショップ イケダ渋谷店」は、毎年1日から営業を開始。代表の額賀さんは「東京の人だけを対象とした店ではないので、正月にしか来られない顧客、せっかく上京してきたファンの方のために、開業以来ずっと1日から店を開いている」と説明する。同店では1日に、「カプセルトミカ(カプセルに入ったトミカの小型ミニカー)のつかみ取り」(先着100名)サービスを行うほか、「クルマ雑誌のバックナンバー、勝手にもってけプレゼント」(なくなり次第終了)を催す。固定客に支持される同店だけに、初売りもまたユニーク。

ミニカーショップ イケダ
ミニカーショップ イケダ渋谷店

新日本プロレスの総本山「闘魂SHOP渋谷店」の初売りは3日。福袋は3,000円、5,000円、1万円の3つ。合計200個の福袋を用意している。同店の長島さんによると「金額でいうと、1袋に3倍くらいの価格の商品」がつまっているとのこと。アイテムは、Tシャツ、フィギュアなど、キャラクターグッズがメイン。猪木軍団総帥のアントニオ猪木をはじめ、武藤敬司、藤田和之など人気レスラーに注目が集まる中、1月4日、秋山準対永田裕志、佐々木健介対小川直也のカードが見られる新日本プロレス30周年記念「レスリングワールドVOL.1」が東京ドームで予定されており、正月に上京するファンを対象に東京ドームでの販売も予定している。

闘魂SHOP渋谷店

一方、量販店でも初売りで福袋を販売するショップは多い。ビックカメラ(東口店、ハチ公口店)では、「宝箱」のネーミングで元旦に販売。価格は1万円と2万円。広報部では、「中身はビックカメラで扱っている商品」としかコメントしないが、同店の「宝箱」は、百貨店の福袋のような形態でなく、商品の形に応じた箱をラッピングした形態なので、想像力を働かせる楽しさも加わって“選び甲斐”のある福袋企画となっている。

ビックカメラ
闘魂SHOP渋谷店

■不況下にますますヒートアップする百貨店、ファッションビルの「福袋」

福袋の王道といえば、百貨店とファッションビル。初売りに行列ができる光景は日本の風物詩でもある。百貨店、ファッションビルでは、初売りの日のために、夏から準備を始めるところもある。ちなみに、『明治・大正家庭史年表』(河出書房新社)によると、名古屋の「いとう呉服店」(現・松坂屋)が明治44年(1911年)1月2日に新春宝箱(福袋)発売したのが「福袋」のはじまりとされており、2002年は福袋登場92年目の正月に当たる。

東急百貨店本店、東急東横店とも衣料品、雑貨、食料品など7~10万円相当の商品が入った「新春初夢福袋」を2日10時から販売。価格は1万円(税込)で、本店では600個、東横店では1,000個が用意される。高額福袋は、本店では高級毛皮が入った「毛皮夢袋」200万円(税込)、東横店では挙式・披露宴プラン「お年玉ウエディングパック福袋」(ウェスティンホテル東京、挙式・披露宴50名様、お衣装・引出物他)20万円(税込)が用意されている。また、「ヤクルトスワローズ応援福袋」を両店共1袋ずつ用意。価格は109,000円(税込)。内容はヤクルトスワローズのホームゲームを年間で観覧できるホームランシート(ペア)と、プロ選手モデルのウインドブレーカー(ペア)、若松監督直筆サイン色紙、さらに「つば九郎」ぬいぐるみ、応援グッズ(メガホン)、ヤクルトスワローズ2002年カレンダー。希望者は各店の店頭で応募用紙を投函し、1月6日に抽選の上、各店当選者1名に販売する。

福袋情報 東急百貨店

同じく2日が初売りとなるシブヤ西武では、恒例の「ブランド福袋」が販売される。価格はショップによって異なるが、1万円(税込)が主流。ユニークなところでは、抽選で1名に、総額10万円相当の商品価格となる「シュースタイリストが選ぶオーダーシューズ福袋」(2万円)や、「ソムリエが選んだヴィンテージワイン福袋」(40万円)。「オーダーシューズ」はハリウッド女優などセレブが愛用しているシューズがオーダーできるもので、シューマイスターがカウンセリングし、スペシャリストの手によるフットケアもついてくる。一方、「ヴィンテージワイン」の銘柄は「ボルドーシャトーマルゴー’82」「ボルドーシャトーペトリウス’89」で、18世紀アンティークグラスがセットされている。高額商品では、「ジュエリー2点セット」100万円(3個限り)、「宝飾・特選品4点セット」2,002万円(1個限り)など。

福袋情報 シブヤ西武
東急 ヤクルトスワローズ応援福袋

「渋谷パルコ」は、パート1、2、3、クアトロとも、初売りは2日。パート2の「フランフラン」では、雑貨がつまった3,000円の福袋に注目。大人の渋谷を目指す「渋谷マークシティ」も2日が初売り。ショップによって価格は異なるが、2,000円、3,000円といった手頃なプライスの福袋が多い。「渋谷ロフト」では、2日から「イエローバザー」を開催。福袋は2、3両日販売。福袋は時計、アクセサリー、喫煙具、ステーショナリーなどにジャンル分けされている。時計では、人気の「スウォッチ」が4,000円で11,000円相当(プラスチックシリーズ2本)、「GUESS」が5,000円(時計1本+サングラス1本)で3万円相当の商品が入っている。マルイシティ、マルイヤング、マルイワンの初売りは3日。マルイオリジナル福袋の価格は5,000円、1万円。「ビサルノビスポークスーツ福袋」(2万円、3万円)は、オリジナル生地でスーツを仕立ててくれる商品で、3万円の福袋はインポート生地を使用したスーツ。気になる福袋といえば、リニューアルオープンした「ナイキショップ」(マルイワン)の福袋(1万円)。こちらは長蛇の列が予想される。

パルコ 渋谷マークシテイ ロフト マルイ

一方、日本一の参詣客を誇る明治神宮のある原宿では「ラフォーレ原宿」「フォレット原宿」の両ファッションビルに注目。今年は福袋を買い求めて3,000人もの列ができた。両店とも1日から初売り。今年9月にリニューアルした「フォレット原宿」のショップの中には、10万円相当のアイテムが入った1万円の福袋を販売するところもあり、2002年元旦には再び長蛇の列が予想される。ラフォーレ営業企画販促デビジョンの横山さんは「福袋の準備は、季節の商品だけにギリギリまで選別するため、テナントと相談しながら、11月末頃から始める。初売りの売上げ目標は具体的に設定していない。初売り・福袋のPRは個店が顧客に行うほか、情報誌でのパブリシティも効果的。毎年、来店してくれる常連客からの口コミも大きい」と話す。

ラフォーレ原宿/フォレット原宿
渋谷パルコ 手頃なプライスの福袋 マルイシティ

昨年の初売りでは15,000人の長蛇の列が出来た「SHIBUYA109」も2日が初売り。この行列が“渋谷名物”“正月の風物詩”と表現されるようになった背景には、ここ数年の間にSHIBUYA109に、若い女性のカリスマショップが登場したことが挙げられる。圧倒的な動員力を誇るテナントが全国に自社のファッションを発信し、近年の「マルキュー・ブランド」を構築してきた。各ショップで販売する福袋の価格は3段階で、3,000円、5,000円、1万円というラインナップ。販売個数はショップによって異なり、限定100袋~1200袋。人気ショップの「LOVE BOAT」では5万円相当のアイテムが入った5,000円の福袋を販売、「CECIL McBEE」では5万円相当のアイテムがつまった1 万円の福袋を販売するなど、事前の“情報公開”が徹底されており、人気ショップでは激戦が予想される。

SHIBUYA109
SHIBUYA109

■デフレ時代は、コストパフォーマンスで勝負

不況による大型倒産が相次ぎ、よりいっそう不景気感が増した2001年。年末には、失業率が過去最悪の5.5%まで上昇した。消費者は必要な物と不必要な物を明確に区別し、慎重に商品を購入している。福袋にもこうした傾向が色濃く反映されている。コストパフォーマンスの高さが購入の重要な動機付けとなる中、“運試し”も含めて福袋を購入する人も少なくないが、無駄な出費を控える意味から福袋の購入を控える層も増えている。

販売する側からすれば、福袋の勝負どころは「買うかもしれない」浮動票をいかに取り込むかという点。正月という“ハレ”の日にサイフのひもを緩めさせるには、消費者の衝動買いを正当化させることが必要になる。最大の武器は、コストパフォーマンス。多少の当たり外れがあっても総額としては「安い買い物だった」という満足感がリピーターに結び付く。こうして考えると、福袋は商品自体を購入することに加えて、年の初めに具体的な満足感を購入することかもしれない。

本来の福袋は「何が入っているかわからない」いわば“運試し”的な色彩が強かった。ところが最近では、不景気を背景になるべく消費者を“がっかりさせない”ための工夫を凝らしている。デパートでは、なるべく多くの種類の福袋を用意し、事前に広告やマスコミでの記事を通じて情報を流し、なるべく消費者を“幅寄せ”していく。消費者が選んだテーマのもとで袋詰めされた福袋は、当然のことながら“当たりはずれ”感が減るため、結果としてそこそこの顧客満足度を獲得し、リピーターとしての期待に結びつく。結果として、福袋の種類は増える傾向にあり、西武池袋では約700種類の福袋が売り出される。どのデパートも売れ筋は1万円の福袋。

こうした点を背景に消費者が福袋を購入する時のポイントは以下の3点。

  1. メディアやインターネットを通じて事前の情報収集をマメに行い“狙い”を定める。
  2. 2日の朝はとにかく早起きして列に並ぶ。並ばなければ始まらない。
  3. 不要な商品があればなるべくネットオークション等で処分し、無駄を抑える。インターネットの普及した今は「情報に基づいて足でゲットし、ネットで処分する」のが今風の福袋ライフの基本。福袋はまさに“情報戦”であることを心得ておくことが肝要。

百貨店・ファッションビルがひしめき合う「福袋・激戦区」の渋谷は、コストパフォーマンスの高さを競い合うエリアでもある。消費者にとっては各店の商品の比較がシビアにできる機会だけに、販売する側にも顧客の満足度を見据えたマーケティング能力が問われる。

松飾り
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