特集

2002年、今年の渋谷はここに注目

  • 0

  •  

■2002年は中目黒と表参道の動きを要チェック

近年、大きなプロジェクトがなかった目黒・中目黒エリアに大きな動きが予定されている。まず、3月には「目黒駅共同ビル」(仮称)がオープン。JR東日本の発表によれば、このプロジェクトは東急電鉄との共同事業で、JR目黒駅と東急目黒駅の上空を一体的に利用した、オフィス・店舗からなる高層の駅ビル。2000年秋に営団地下鉄南北線が目黒まで開通し、都営地下鉄三田線と2つの地下鉄が東急目蒲線(現目黒線)に乗り入れた。東急電鉄の路線中で最も多い輸送人員を持つ東横線と田園調布、多摩川ほかで接続する目黒線は、2001年3月からは営団南北線経由により埼玉高速鉄道線と相互直通運転を実施し、東急の首都圏鉄道網の一翼を狙う路線になった。東急線の始発であった目黒駅が通過駅・乗換駅となったことで、目黒駅周辺に集客の核となる商業施設が求められていたという背景もある。乗換えの利便性がますます高まる「目黒」の集客パワーに注目したい。

駅周辺の再開発が進められている中目黒には3月25日、6階、15階、25階の3棟からなる複合施設「中目黒ゲートタウン」が誕生する。2,100坪の敷地に「中目黒ゲートタウンタワー」(オフィス棟)、「中目黒ゲートタウンテラス」(店舗・文化施設・住宅棟)、「中目黒ゲートタウンハイツ」(都市公団住宅棟)、公園が配置された「中目黒ゲートタウン」の開業は、渋谷から代官山、中目黒へとつながる商圏の拡大を促すと予想される。渋谷、恵比寿からひと駅(東横線、日比谷線)の中目黒駅の1日の乗降客は18万人を数えるが、実際に改札を出て街を通る人は9万人足らず。1日の乗降客のうち50%がホームからホームを渡り歩いて通過しているのが現状。駅前広場もなく、やや寂しい感のあった中目黒にランドマークが誕生することになる。中でも25階建て、115mの高層ビル「中目黒ゲートタウンタワー」は、都心部にオフィスを求める「大型オフィスニーズ」に応える物件となるもので、テナント管理を担う三井不動産の担当者によると「テナント募集の反響は大きく、ほぼ入居は埋まった」とのこと。商業施設としては飲食店、物販、スーパーがテナントで入るほか、行政機関では手狭になっていた駅前にある中目黒駅前図書館が開館、交通の利便性を考慮して行政サービスの窓口も開設される。一方、都市公団では1月下旬より「中目黒ゲートタウンハイツ」の募集を開始する。こちらは「都心の駅前に住む」ことのできる稀有な物件として人気を集めそうな気配。近年、ユーズドファニチャー・ショップやカフェなどが集積し、少し隠れ家的な雰囲気のあった中目黒がいよいよメジャー化への扉を開ける2002年、果たして「ナカメ・カルチャー」はどのように変遷を図っていくのだろうか。

都市公団

その他、渋谷エリアで気になる商業施設は、4月にオープンが予定されている「パルコ渋谷スペイン坂ビル」(仮称)。現在、スペイン坂下に建設中のこの物件について、同社広報室によると「まだ公表できる段階ではない」とのことだが、総ガラス張りの建物で、ショップや大人向けのレストランで構成される模様。昨年11月に「PART1」7、8階をリニューアルしたばかりの「パルコ」の新たな動向に関心が集まっているだけに、「スペイン坂ビル」のテナントや商品構成は気になるところ。

パルコ

同じく4月には、南青山にショップ、レストラン、美容院などからなる商業施設「ふくい青山プロジェクト」(仮称)がオープンの予定。これは福井県有地を有効活用するもので、福井県のビジネス支援拠点としてイメージアップや情報発信を目的として活用するもの。3棟合計で約2,100平方メートルの敷地のうち、約1,000平方メートルが県の施設となり、残りの敷地に南青山に相応しい集客力の高いショップが誘致される。この一等地は、事業用借地権により東急不動産が福井県から20年間借地するもので、商業施設の運営に実績を持つ東急不動産がどのようなショップを誘致するのか、興味深い。

中目黒ゲートタウン 中目黒ゲートタウン

一方、今春、原宿・神宮前交差点近くに開業予定の「ヴェロックス28」は、香港の不動産開発・投資会社ヴェロックス・シティ・インベストメン ト・リミテッドが原宿のマンション跡地に建設するファッションビル。すでに「ZARA」がテナントで入ることが決定している。同店はヨーロッパ最大規模SPA(製造小売業)のインディテックス社が展開するストアブランド。先行してオープンした国内1号店の「渋谷店」(宇田川町)は、1Fレディス、2Fメンズ、3Fキッズのフル展開の店舗。「ZARA」は現在世界24カ国に約350店舗を展開。日本では、ビギグループとの合弁で「ザラ・ジャパン」を設立。その後、大阪、福岡など出店している。同社の特徴は、最先端のファッション衣料をどこよりも早く商品化し、リーズナブルな価格で販売すること。企画から販売までわずか2週間という「究極のSPA」をコンセプトにトレンドを取り入れ、価格競争力の高いアイテム展開がポイントである。神宮前交差点近くには「GAP」「ユニクロ」と、「Boots」の撤退後に入居した香港資本の「ジョルダーノ」が集積しており、原宿を舞台にしたSPA戦争が静かに繰り広げられている。

ヴェロックス28

一方で、表参道にはスーパーブランドのオープンラッシュがこの秋に控えている。まず、「エスキス表参道」隣に秋にオープン予定の「クリスチャン・ディオール」。広報担当者の口からは「詳細はまだ発表できない」とのことだが、日本のフラッグショップとなることは確実。その「クリスチャン・ディオール」建設地の隣が、2002 年9月1日のオープンを目指す「ルイ・ヴィトン館」。「日本建築界の寵児」青木淳氏が「ルイ・ヴィトン」のトランクを積み重ねたイメージのビルをデザイン。トランク(各フロア)はランダムに積まれるため、随所に隙間が生まれ、店内にいればそこから表参道のケヤキ並木を見ることができるという。フロア面積は3,263平方メートル、地下2階、地上8階。2002年後半、南青山5丁目にオープンする「プラダ南青山店」(仮称)。プラダジャパン・プレスによると、「従来のショップと異なる店づくりをコンセプトに据え、おもしろい素材を使い、ショップの定義をくつがえす建築となる。それはガラスを使った氷山のようなもので、かつてないものができあがる」とのこと。プラダの世界観を体現する情報発信型ショップとして期待が集まる。

クリスチャン・ディオール

■気になる「臨海高速鉄道りんかい線」の全線開業

さらに12月には、アクセス面で渋谷エリアにとっての見逃せないニュースがある。渋谷からお台場までは、今はアクセス面で不便な感じが先行しているが、この2つの街がいよいよ電車1本で結ばれる。2001年春に天王洲アイル駅まで開業した「りんかい線」。これにより、臨海副都心と天王洲アイルが直結し、羽田空港から東京モノレールを経由して臨海副都心へ、さらには東京ディズニーランドや千葉方面との連絡が便利になった。そして今年12月に予定している大崎までの全線開業によって、大井町駅で川崎・横浜方面とのアクセスが便利になる上、大崎駅では同時にJR埼京線との相互直通運転を予定しており、渋谷・新宿・池袋などの商業集積地、さらには埼玉とも結ばれ、東京圏の新しい鉄道ネットワークが形成されることになる。開通すれば、性格を異にする2つの人気商圏、渋谷~お台場(東京テレポート)が乗り換えなしで20分以内で結ばれるようになり、この2つの街を行き来する新たな人の動きが生まれる意味では、渋谷商圏に与える影響も少なくない。東京臨海高速鉄道では、渋谷方面からの利用に加え、埼玉方面からの利用者増加を期待している。

東京臨海高速鉄道
りんかい線

■分散化傾向に拍車がかかる都心部エリア間競争

大手町、丸の内エリアの再開発は、三菱地所が約5,000億円をかけて手掛けるビッグプロジェクト。かつてのオフィス街にはいまや文化施設やブランドショップが建ち並び、丸の内には新名所が続々登場している。東京駅に隣接してオープンした「パシフィックセンチュリープレイス丸ビル」の3~7階には2002年9月、「フォーシーズンズホテル丸の内東京」が開業の予定。客室数は57室で、スイートが中心。高級レストランやフィットネスセンター、スパ施設などを完備し、エグゼクティブのための高級滞在型ホテルを目指す。 丸の内では、2002年9月に約130店舗が入居する、丸の内で一番ノッポの「丸ビル」が開業する。地下1階~地上4階は、ファッション、雑賀から食品まで揃うショッピングモール。「ビームス」や「ザ・コンランショップ」の入居が予定されている。5、6階に飲食店。35、36階は眺望を生かしたレストランが誕生する。2002年10月には、すでにオープンしている「東京サンケイビル」に「メトロスクエア」が登場する。地下鉄と直結した公共スペースで、地下には飲食店が入居予定。丸の内は2002年、「大人の街」に生まれ変わる。生き残りをかけて激しく展開されるエリア間競争は、これだけに留まらない。

品川駅周辺も激変する。すでに稼働している「品川インターシティ」に加え、2002年4月にオープンする「品川プリンスホテル エグゼクティブタワー」は、“ホテルとエンタテインメントの融合”をテーマとしたホテル。立体映像を楽しむアイマックスシアターや映画館、音楽ホール、ボウリング場が入る予定。そして2003年夏には、品川駅東口地区再開発がひとつの形になる。2003年春に開業する新幹線の新駅オープンにともない、駅に隣接して居住空間と大手企業のビルが建設される。三菱三社(商事、重工、自動車)の本社が揃う“三菱村”、全650戸を完売した「品川Vタワー」は高級住宅ビルなど、建設ラッシュが続く。

一方、もともとJRの貨物基地であった汐留地区は、3つの街区に分かれ、進化する。2002年秋には、ゆりかもめと大江戸線の「汐留駅」が開業。続いてJRの線路を挟む西側に、2003年にオープンする「チッタ・イタリア」と呼ばれるエリアは、イタリア人のデザイナーやコーディネーターが監修し、イタリア系企業を誘致し、イタリアの街並みを再現するもの。ここにはショップやレストラン、映画館が入居する予定。東側のエリアには、電通、日本テレビ、共同通信などマスコミ各社の本社ビルが建設されるほか、松下電工本社ビル、大成建設本社ビルなど、8棟の高層ビルが建ち並ぶことになる。汐留地区には2005年までに5つのホテルが開業を予定している。

同じく2003年にオープンする「六本木ヒルズ」は、衣・食・住・遊を追求する巨大プロジェクト。ここには大手企業が入居する高層ビルや高級ホテル「グランドハイアット東京」が開業し、低・高層あわせて4つの住宅棟が誕生するほか、シネコンや美術館「森アートミュージアム」、レストラン、ブランドショップなど合計約200店舗が登場する。 2002年の渋谷は、これらの生まれ変わる都市との競合にさらされることになる。集客力の高いエリアが“南下”傾向にある中、渋谷独自の魅力あるコンテンツが問われる年でもある。多極化する商圏の中にあって、渋谷は路面店パワーでどこまで魅力を持続できるのか。逆に、個店のパワーと個店が集積する面の魅力が、さらに際立つ可能性も高い。その渋谷も2009年の地下鉄13号線の乗り入れにともなう駅周辺の整備に向けて、水面下で改造計画が進行している。

他のエリアが綿密な再開発計画を元に、スクラップ&ビルドで根底から街を“作り変えていく”のに対し、渋谷では、入り組んだ土地の特性から、すでにパワーを持っている個性豊かな路面店パワーを街の中に温存しながらの再開発となる。見方を変えると、渋谷の路面店パワーは「この街で店をやってみよう」「この街で商売をしてみよう」と思うベンチャー精神から生まれてくると言っても過言ではない。他のエリアが「大箱」志向になればなるほど、過小資本での出店は難しく、チェーン展開を図る大手資本のショップや飲食店が中心にならざるを得ない。渋谷では、中心部を離れればまだまだ過小資本での出店できる物件が残っており、脱サラで小さくとも個性豊かなショップをオープンさせ、成功を収めているケースも少なくない。こうした個人の発想や想いをどこまで受け止められる街でいられるのかが、これからの渋谷最大の差別化ポイントかもしれない。2002年の渋谷から、果たしてどんなチャレンジャーが誕生するのだろうか?

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース