特集

忘年会シーズンを前に新店続々登場!
渋谷「居酒屋・和食ダイニング」事情

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■大手チェーン店も個室化で忘年会シーズンに対応

宇田川町にある「北の家族 渋谷本店」(TEL 03-3770-0717)は今年6月、店内のリニューアルを行い「個室化」を図った。2フロアに分かれた店内は、2名から50名までに対応する様々な個室空間に生まれ変わった。今回のリニューアルは、もともとの若い世代の客だけでなく、20代後半から30代までと幅広い層をターゲットにするのが狙いだ。「ここ数年、カップルでもグループでもプライベートを重視した個室空間を望んでいるお客様が多い。そこで、和風モダンを基調にしたほぼ全室個室の空間提供に踏み切った」と北の家族、経営企画室の二瓶さんは、同店の完全個室化計画について話す。

同店のオススメは、忘年会シーズンに伴い用意された冬季限定のサービスコースで「タラバガニ入り豪華寄せ鍋コース」(飲み放題付でサービス料・税込み5,000円)。また、日本海屈指の漁場「鳥取県堺港漁港」で捕れた産地直送の「紅ズワイガニ食べ放題コース」(一人60分1,980円~)も人気がある。「12月は誰でも何回かは忘年会に参加することが予想されるため、予算のはっきりした『タラバガニ入り豪華寄せ鍋コース』などに人気が集中する。また、目新しい素材を使った鍋コースより、キムチや牛肉など一般的な素材を使う方がお客様も安心して注文できる」(二瓶さん)と分析を加える。

北の家族 渋谷本店

同じ北の家族が今年9月、銀座、新宿に次いで宇田川町にオープンしたのが、和風フーディングスペース「遊邑RAKUZA(ゆうゆうらくざ)」(TEL 03-3461-3731)。店名は、人々がどんどん集まってきてにぎわいのある場所、「楽一楽座」に由来するもの。200席以上ある座席のほとんどが個室化されており、カップルからグループまで様々なニーズに応えることが可能だ。

空間デザインは「安土桃山時代に花開いた南蛮文化」をモチーフにしたもので、和とアジアと西洋を取り入れたオリジナルの創作料理が特徴。11月18日からは冬の宴会コースメニューとして、お造りや地鶏のオーブン焼きなどがついている阿吽(あうん)コース(2,500円)、姿盛りやスペアリブなどがついた仁王コース(3,000円)、蟹三昧コース(3,500円)などが用意されている。それぞれのコースにはキムチチゲ鍋、湯豆腐、寄せ鍋など7種の鍋をオプションとしてつけることもできる。客単価は3,500円。

遊邑RAKUZA渋谷店
遊邑RAKUZA(ゆうゆうらくざ) 遊邑RAKUZA(ゆうゆうらくざ)

■渋谷駅東口に和食ダイニングの集積ビルが登場

本格的な忘年会シーズンを目前に控えた11月28日、渋谷駅東口に複合商業ビル「ヒューマックスパビリオン渋谷宮益坂」をオープンした。場所は、宮益坂と明治通りからそれぞれ1本裏通りに位置する角地。このビルはもともと企業のオフィス用で窓がなく、フロア中央部に直径8メートルの吹き抜け空間があるため一棟利用しか見込めない特殊構造だったが、2002年に全館空室となったのを機に全館用途変更工事を行い、飲食店仕様として再生した。吹き抜け部分にはガラスとブロンズミラーで区画を施し、各フロアの独立性の確保すると共に、吹き抜け空間のデザイン性の向上を図った。敷地面積は821.65平米、延床面積は約4,475平米。

同社不動産開発部の吉山さんは、同ビルの開発について「渋谷東口はオフィスなどが多い割には、大型の飲食物件が少ないため、逆にゆったりとできるスペースに対するニーズがあると思った。しかも、表通りからは一本裏手の立地であるため、隠れ家なイメージにもなる」と話す。また、テナントのリーシングについては「当初は業態を特定せず、飲食店ビルとしてリーシングを行ったが、結果として和食主体のテナント構成になった」と振り返る。ビルのリーシング動向からも、和食ダイニング系の躍進ぶりが伺える。同ビルは8フロアで、地上1階から6階までは和食ダイニングをテーマとした飲食店が出店し、地下1・2階にはビリヤードやエレクトリックダーツが楽しめるバーが出店する。入居店舗は以下の通り。6階=「居酒家土間土間」(フードクルーズファクトリー)、6階=「鉄板酒家 てっぱち屋」(レインズインターナショナル)、5階=「魚魯魚魯(ぎょろぎょろ)」(ラムラ)、4階=「モ~モ~パラダイス渋谷宮益坂牧場」(ワンダーテーブル)、3階=「隠れ家ごはん 月の宴」(モンテローザ)、2階=「ダイニング 彩」(エイぺックス)、1階=「小割烹 おはし」(ラヴ)、地下1階=「ダーツバー バネバグース」、地下2階=「ビリヤード バグース」(各コスモ通商)が出店する。

ヒューマックス

店舗の多くは和食ダイニングのチェーン店が占めるが、「魚魯魚魯」と「小割烹 おはし」はそれぞれ初の業態となる1号店だ。「魚魯魚魯」(TEL 03-5774-8811)は、新鮮な魚介や旬菜が楽しめる和食ダイニングで、産直の鮮魚や銘柄地鶏を使った料理、黒豚料理、石焼料理など、各地の素材を使ったメニューが特徴の店。客席数は200名で、2名からの個室ニーズにも対応しており、客単価はランチ880円、ディナー3,500円を見込む。同店を運営するラムラでは「にほんばし亭」「土凡炉」「板前ごはん 音音」など多くの和食系業態を展開するが、同店の出店に際して同社営業企画の山田さんは「渋谷はチェーン店を嫌う傾向もあるため、独自の業態で出店した」と話す。

ラムラ
ヒューマックスパビリオン渋谷宮益坂

1Fの「小割烹 おはし」(TEL 03-5766-1955)は、「マネーの虎」でおなじみの貞廣一鑑氏が代表を務めるラヴ(本社:広島)が手掛ける初の業態。1993年設立の同社は、「茶茶」「石塀小路 豆ちゃ」といった和食店の他、「chano-ma」(中目黒・横浜)や「和カフェ yusoshi」(神南)といったカフェなどの飲食店を全国に27店舗展開する飲食店グループ。

「小割烹」(こかっぽう)とは、同社同社営業統括本部長の浜田さんによると「特に定義付けはされていないが、創作和食のように横文字(カタカナ)や洋の食材を入れず、割烹や料亭ほど堅苦しくなく、気軽に割烹の入門ができ本格的な料理が食べられる店を目指して付けた」と話す。言葉通り、同店では「京のおばんざいと、奇をてらった料理ではなく伝統的な料理を真面目に作った」メニューが特徴で、創作料理のトレンドは一切追っていない。また、デザイナーに「和風旅館」というテーマを与えて造作された同ビル1Fのファサードが目を引き、一見敷居を高そうに見せながら、中に入れば約5,000円という客単価とのギャップがリピートにつながる。店内も中庭や味わいのある廊下などを設けるなど、抑え気味の照明で落ち着いた雰囲気を演出し、86坪の空間に12の個室を含めた125席を展開する。

同社では渋谷・公園通りの通称「カフェビル」にもカフェ「yusoshi」を展開しているが、駅を挟んだ渋谷駅東口はまた利用客のイメージの異なるエリアとして同ビルへの出店を決めた。同店利用客の男女比は半々で、ターゲットはF2層に置きながらも、実際にオープンしてみると「この辺に、こんな店なかった」と、年配のサラリーマンも多く来店するという。浜田さんは「おいしい料理はもちろんだが、サービス面での充実にも力を入れ『あなたがいるからまた来るよ』という一期一会の精神を大事にする店を目指したい」と加える。

ラヴ
小割烹 おはし 小割烹 おはし 小割烹 おはし

■カフェ・バーと融合したハイブリッド居酒屋も新登場

12月6日には、カフェ・居酒屋・バーをミックスした新感覚ダイニング「IZA-CAFE DINING 集」(イザカフェダイニング)(TEL 03-3423-9841)が神宮前にオープンする。同店は床面積約35坪、総席数は72席で、「喫茶マイアミ」「炭火BAR集」を展開するマイアミグループが手掛け、池袋店に次ぐ2号店となる。プロデューサーには1号店の業態開発とデザイン全般を監修した、さとうこういちさん(プロミックス)を起用し、新しい食空間づくりに取り組んだ。同氏はグラフィックデザイナーとしてデビュー以来、主に飲食業を中心とした数々のプロジェクトに参加し、近年は新業態の開発からインテリアデザインまでを監修するクリエイティブディレクターとして活躍しており、今年6月、横浜赤レンガ倉庫2号館にオープンしたダイニング&ティールーム「sumire.」のプロデュースも手掛けた。

同店のコンセプトは「家心地」。エネルギッシュな街の中で、ふと癒される「家的」な居心地を、「新しくて懐かしい」スタイリッシュなデザイン空間として表現している。さとうさんは開発コンセプトについて「LDKという記号化されたものをデザインに盛り込んで業態を開発した。街の中で家と錯覚してしまうような空間にしたかった」と話す。さらに、この新業態について「通常夜業態の居酒屋と、昼からスタートできるカフェ業態をミックスに挑戦した」と加える。

店内には縁側をモチーフにしたモダンな小上がり席やロフト席、個室、カップルシート仕様のカウンター席などが用意され、様々なシーンに対応している。メニューは、季節ごとに替わる15種類の「創作おどんぶり」を中心に、和テイストのアラカルトが提供される。さとうさんによると「想定来店客層は20歳代女性が約8割」と話すように、従来の「男性的」イメージの強い居酒屋を敬遠する女性同士やカップルの利用に期待を寄せる。客単価は昼間1,000円、夜間2,500円を見込む。

IZA-CAFE DINING 集 IZA-CAFE DINING 集 IZA-CAFE DINING 集

■際コーポレーションが渋谷で仕掛ける居酒屋新業態

首都圏を中心に多くの飲食店を手掛ける際コーポレーションも、和食ダイニングや居酒屋業態への取り組みを強化している。

同社は今年10月31日、南平台・旧山手通り沿いに新業態「野献立と団子汁 莫莫居(ばくばくきょ)」(TEL 03-5489-6828)をオープンさせた。店舗面積は約48坪で席数は58席。同店のコンセプトは田舎料理をベースとした「野献立」で納豆や漬け物など地方の食材を使ったメニューが特徴だ。中でも「団子汁(だごじる)」は同店の看板メニュー。「団子汁」とは大分を代表する郷土料理で、豚汁に小麦粉で作り平べったくのばした麺のような団子が入ったもので、古民家風の店内では「名物団子汁」(1,000円)、「鴨だご汁めん」(1,000円)や、「鹿鍋」「芋鍋」「団子汁鍋」(一人前2,000円~)などが提供される。

さらに12月10日には、宇田川町のビルの2Fに居酒屋の新業態「黒長兵衛(くろちょうべえ)」のオープンを予定している。店舗面積は約65坪、席数は約100席で、同じビルの3Fには同社が展開するアメリカンダイナー「デモデクイーン」が入居するほか、すぐ近くには2002年2月に同社が開店した葱料理の「葱や 平吉」がある。同店では鍋料理を中心とした居酒屋業態の確立を目指すもので、11月26日、赤坂にオープンした料亭風居酒屋「黒座暁楼(くろざあかつきろう)」より低めとなる客単価3,000~4,000円を見込む。両業態とも、今後他エリアでの出店を予定しており、際コーポレーション全体としても和食業態の比率を高めていく構えだ。

同社は、「紅虎餃子房」「胡同四合坊」などの中華業態を中心に、若者層から支持されているが、居酒屋業態への取り組みについて同社の中島武社長は「居酒屋業態でも際コーポレーションらしい店を作ってみたい。『お酒がおいしくて食べ物がおいしい』という基本を大事にした日本の居酒屋をテーマにしながら、『骨太の居酒屋』を目指す」と話す。さらに同社長は「渋谷は固定概念がなく、若い人がパワフルに動いている街。下手に格好付けた街より格好いい。そういう街で『際』らしい居酒屋をやるとこうなるんだという店にしたい」と、両店への自信を覗かせる。

際コーポレーション

多様化する居酒屋について、飲食業界の専門誌「日経レストラン」の菅原編集長は次のように今年の動向を振り返る。

低価格競争の終えん
デフレに対応しようとメニュー価格を下げたチェーン店が、客単価の低下による既存店の低迷に苦しみ、逆に価格を上げて食材の質を高めたチェーン店が堅調な業績を示している。

「創作料理」花盛り
料理は素材や産地にこだわり、盛り付けや色合いに気を使い、和洋中の境を取り払った創作料理が百花繚乱だった。

個室居酒屋ブームの定着
平面的な座敷ではなく、個室やカップル席を備えたおこもり系の居酒屋が大ブームに。シャワールームやジャグジー、プールが付属していたり、大画面モニターで好きなDVDを持ち込んで見られたりと、まさに百花繚乱の感も。

ドリンクの低アルコール化、焼酎ブームの進展
2002年6月からの飲酒運転規制強化などもあり、ノンアルコールドリンクやソフトドリンクを充実させたり、カクテルメニューを増やしたりしている店が目立つ。例えば「和民」では40種類以上のカクテルを用意しているが、日本酒は6種類、ウイスキーは4種類に過ぎない。20代の非飲酒率が3割に達するのを受けて、居酒屋も脱・アルコールに舵を切っている。

同編集長によると、居酒屋の今後のトレンドとして「定番回帰」を挙げる。「無茶苦茶な組み合わせで味が破綻したり、素材にこだわっているようでよくわからない『なんちゃって創作料理』が氾濫し、客が飽き始めている。今後は、「おふくろの味」的な手作り感あふれ、ほっとできる定番料理に回帰していくのでは」と話す。際コーポレーションの中島社長が言う「骨太の居酒屋」の出現に期待したい。

日経レストラン
野献立と団子汁 莫莫居(ばくばくきょ) 野献立と団子汁 莫莫居(ばくばくきょ) 野献立と団子汁 莫莫居(ばくばくきょ) 黒長兵衛(くろちょうべえ)
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