11月29日、渋谷・道玄坂と宮益坂の113本のけやきに仕込まれた約40万球以上のライトが一斉に点灯され、イルミネーションイベント「ライトアップクリスマス・イン渋谷」がスタートする。今年の目玉は、拠点となるハチ公前広場に今年初めて登場するクリスマスツリーだ。名付けて「SHIBUYA SMILE CLOCK（シブヤスマイルクロック）。同クロック事務局関係者は、このネーミングの背景について「今年はいろいろと事件も多かったので、年末は笑顔になってほしいとの願いから『スマイル』をテーマにネーミングした」と話す。11月29日17時から、ハチ公前広場で点灯式が行われ、カウントダウンやゴスペルコンサートが開催される。

「SHIBUYA SMILE CLOCK」は、カメラ付き携帯電話で撮影された「デジタル時計風」時刻入りの画像をPDPディスプレー表示することで時刻を告げる「Clockアートワーク」で、画像は携帯電話・PC向けWebサイトを通じて、1分を1枠として60分間×24時間＝計1,440作品を一般から募集する。応募サイトにアクセスすると、「空き時刻」が3つ呈示され、この中からひとつ選んで、カメラ付き携帯で「時刻」入りの写真を撮って専用のメールアドレス宛てに送付することで応募が完了する。携帯はiモード、EZweb、ボーダフォンライブ!に対応し、応募期間は11月29日16時から12月15日24時まで。投稿された作品は12月19日から25日まで、同ツリーのPDPディスプレーで表示されるが、ツリーでの掲示時間は10時から24時までで、それ以外の時間の作品はサイト上のみの公開となる。

一方、12月1日には「公園通り」の80本の並木に約30万球ものイタリアンライトが灯る。渋谷の大動脈「公園通り」の定番となったクリスマス・イルミネーション「ライトアップクリスマス in shibuya Park Avenue」で、イタリアンライトの数は昨年の24万球から6万球増え、明るさも25%アップした。12月7日16時からはパルコ・パート1エントランス前で点灯式が開催され、ビートルズのカバーバンドして知られるデンマークの4人組バンド「ザ・ビートマス」のクリスマスソング・ライブも行われる。イルミネーションは12月25日まで。

公園通りに面した渋谷パルコ・パート1のエントランス前には11月1日、早くもクリスマスツリーが登場した。今年のツリーを担当したのは家具や空間デザインを手掛ける気鋭のデザインチーム「トリオ・デ・パンチ」。「トリオ・デ・パンチ」によると、ツリーのテーマは「明るくゴージャスな輝きを放つ外観と、銀世界のような内面と、二つのストーリーをもったクリスマスツリー」とのことで、ハーフミラーと照明を使った幻想的なミラーのイリュージョンツリーが、公園通りの一角にアクセントを与えている。

同じく11月1日には、渋谷マークシティにも全館で約20万球のイルミネーションが灯った。今年のテーマカラーは「グリーン×ゴールド」で、コンセプトは「オトナの女性に贈る本物のクリスマス」。中でもEAST1Fの吹き抜け空間には、メインシンボルとなる10メートルの巨大ツリーが出現し、すぐ横のエスカレーターを上下に移動する利用客の目を楽しませている。同所は雨に濡れない屋内部分でもあり、早くもクリスマスシーズンの「待ち合わせ場所」としても使われているようだ。

恵比寿ガーデンプレイスでは11月1日より、世界最大級の「Baccarat シャンデリア」を始めとする恒例のクリスマス・イルミネーション「Baccarat ETERNAL LIGHTS－バカラ 永遠のきらめき－」を開催している。今年は「愛へのあかり」をテーマに、バカラ設立230周年を記念し、1994年制作された高さ約5メートル、幅3メートル、パーツ総数8,086ピース、ライト総数230燈の「世界最大級」のシャンデリア、1896年に制作された「Tsarine（ロシア皇后の燭台）」を中心に展開する。オープニングの点灯式では「私にとって、僕にとって大切なもの」をテーマに募集した子供たちの絵画の中から選ばれた最優秀作品を展示したほか、作品の作者がシャンデリアの点灯を行った。イルミネーションは来年1月12日まで実施する。また、12月20日から5日間（22日を除く）、各日17時と19時から各5分間、センター広場に「人工雪」を降らせる「WHITE CHRISTMAS at YEBISU」を開催、あたり一面を幻想的なイメージで演出する。

「代官山アドレス」では11月21日から、アドレスプラザに同館のテーマカラーである「オレンジ」色のクリスマスツリーが設置されている。同館の商業施設「代官山アドレス・ディセ」では、同日より「リース・コンテスト2003」も開催しており、一般から応募された手作りのオリジナルリース約100点を館内に展示し、期間中、来場者の投票により入賞作品を選び、入選者のほか投票者の中から抽選で70名に「ディセお買い物券」がプレゼントされる。12月20日、23日には東京フィルハーモニー交響楽団所属の楽団員等によるミニクリスマスコンサートの開催も予定されるなど、シックな演出が特徴になっている。12月25日まで。

青山方面での注目は、南青山3丁目のエイベックス本社ビル前広場を中心にした「青山クリスマスサーカス byエイベックスグループ」。同社の創立15周年を機に、多くの音楽業界関係者が集うエンタテインメントの発信地でもある「青山エリア」をクリスマスの新名所とするべく、同社が地域商店街や周辺企業と協力して今年初めて手掛けるイベントだ。目玉はエイベックス本社ビル前広場に出現する巨大クリスマスツリー「star☆fountain（スター☆ファウンテン）」。

「star☆fountain（=星の泉）」と名付けられたこのツリーは、「ツリー頂点から降り注ぐように」星の装飾が施され、多くのアーティストを輩出する同グループをイメージしたネーミング。高さはエイベックスビル8F部分の高さに相当する約31メートル、直径は10メートル、総電飾数は23,000個と、もちろん広域渋谷圏では最大の規模、国内でも最大級の高さを誇る。25日にお披露目された同ツリーには27日までの3日間に限り「巨大なサンタ帽子」が被せられ、28日にその全貌を現し、12月25日まで日程や時間帯により7色のイルミネーションを変化させながら、音楽を交えて様々な表情を演出する。点灯式は30日、港区長、地元商店街関係者などを招いて行われる。

さらに、このツリーでは、建築的デザイン=インテンショナリーズが、アートディレクションとデザイン=タイクーン・グラフィックスなど、照明などを含めた各分野の気鋭のアーティストが手掛けている点も見逃せない。インテンショナリーズ代表の鄭秀和さんは「不況の中、元気が出るような企画として、ダイナミックなツリーを企画した。期間も長いので、最初はサンタ帽で隠しワクワク感を演出するなど、二面性が楽しめるように工夫した。時期によって照明パターンが変わるので、いろいろな表情を楽しんでほしい」と話す。さらに、タイクーングラフィックス代表の宮史雄一さんは「ツリーの背景となるビルが暖かさを感じさせる煉瓦色なので、これに映える色として「白」を選んだ。また「白」は照明効果が引き出せるため、エンタテインメント企業が光の演出を行うにも最適」と、ツリーの基本色を「白」にした理由を明かしてくれた。この光の演出効果を高めるため、クリスマス本番が近付く頃には、同ツリーのために新たに制作された3Dのグラスが配られる。宮史さんによると、青山の洗練されたイメージ合うように、オーナメントの種類も極力抑えたという。

エイベックスが同ビルを本社ビルとして取得したのは昨年3月。以来、地元商店街などとの関係を構築しながら、昨年末にはすでに今年のクリスマスツリーに向けての構想が動き始め、その後、エイベックス社内に設けられた横断的なプロジェクトチームが中心となって、実に1年がかりで準備を進めてきた。同プロジェクト・チームリーダーの若泉さんは、「青山クリスマスサーカス」というイベント名称は「気鋭のアーティストが手掛けたパフォーマンスを多くの方に見ていただいて笑顔になってほしい」想いを込めて名付けたと話す。さらに「来年以降は、さらに広域に青山の街と連携しながら東京の冬の名所、将来的には世界の冬の名所を目指したい」（若泉さん）と、今後の定番イベントに向けての抱負を加えてくれた。

なお、同ツリーの登場に合わせて、dream、フルーツポンチ、SweetSの4アーティスト、総勢13人のユニットにより「1st X'mas featuring dream＋フルーツポンチ＋SweetS」が12月10日にリリースされる。

今年は、広域渋谷圏に様々なタイプのイルミネーション企画が出揃った。中でも注目は、携帯と連動するハチ公前の「SHIBUYA SMILE CLOCK」と、青山の街と気鋭のクリエイターがコラボレーションした「青山クリスマスサーカスbyエイベックスグループ」。どちらも「笑顔」がテーマのひとつに掲げらており、混迷化する世界情勢や景気低迷などが背景にあるようだ。さらに、今夏が「冷夏」だったことを受けて、歳末商戦における消費意欲の喚起にも一役買いそうだ。この時期、広域渋谷圏は全域でその明るさを増す。