特集

20歳になったら結婚したい!?
10代と20代のボーダーライン

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■人生で一番幸せなのは10代の時!

2004年6月にインターネット上で行われた博報堂生活総合研究所オリジナル調査(調査対象者:16~19歳の女子/サンプル数:200人)では、加齢に対する意識を尋ねている。「何歳の時が人生で一番幸せだと思うか」という質問に対し、回答結果は下表の通り。

Q:何歳の時が人生で一番幸せだと思いますか。
10代 56.0%
20代 34.5%
30代 4.5%
40代 0.5%
50代以上 4.5%

「10代」が一番幸せだと答えた10代は56%と半数を超え、次いで「20代」と答えた10代が34.5%だった。10代女子の9割が幸せなのは20代まで、と回答したおり、そのうち約5.5割は「20代は10代のときよりも幸せではなくなる」と思っていることになる。逆に「何歳の時が人生で一番不幸だと思うか」という質問項目に対する回答結果は下表の通りだった。

Q:何歳の時が人生で一番不幸だと思いますか。
10代 25.0%
20代 5.5%
30代 14.5%
40代 17.5%
50代 11.5%
60代 2.5%
70代以上 23.5%

幸せな時に比べると意見が各年代にバラついた結果となったが、不幸な時も「10代」だと答えた子が多く25%で、4人に1人の割合だった。次に不幸なときは「70代以上」で21.5%。「20代」は5.5%という低い結果から、10代女子にとって20代は一番幸せではないけれども、ネガティブなイメージを持っているわけでもなさそうだ。

そこで、約2年間に渡り1都3県在住の10代女子100人以上にヒアリングを行ってきた博報堂生活総合研究所の研究員の中村さんに、20代に対する10代の意識について話を聞いた。「多くの子は10代の延長線上に20代があり、ステージアップしていくという意識を持っていると思うが、近年の特徴的存在としては、10代と20代は全く別のものと認識し、自分の『見せ方』をガラリと変えようとする子が、特に女子に多く見受けられる」と話す。その背景には、昔と比べて10代の価値が上がったことが挙げられる。ブームの発信源として、10代の意見を商品開発に取り入れる企業などが増えたことや、元々日本社会においては「若さ」が重視される風潮にあることを10代も自覚しているからだ。そこで、10代のうちはいろいろな事を経験し、たくさん遊ぶ。しかし20代になったら一端スイッチオフし、大人として生活していくものだというように、10代と20代を切り離して考える10代が出現したのだという。

「極端に言えば、10代のうちは犯罪を犯しても名前は出ないし、10代のうちにやったことはチャラになる、と考えているのではないか。10代女子の中には軽い風俗のアルバイトをする子もいるが、それも10代のうちに、という意識で20代になったら辞めるつもりの子がほとんど」と中村さんは言う。10代女子の間では「20代になったら20代の振る舞いをするべき」という意識が強く、例えば、ガン黒のギャルも、20歳になったら肌の色を落としてコンサバ系のファッションに変え、社会に適合していこうと思っているようだ。「特に女子の場合、年代が自分に強いる役割というものを彼女達なりに汲み取っており、将来はまじめに生きていこう、という意識が高い」と中村さんは見ている。

一方、10代男子については、中村さんによると「『20代』から連想することは職業、社会人といったことで、自分が何をしてどう生きていくかということを女子よりも真面目に考えている傾向がある。男子の場合は『20代のための10代』という意識で、今から土台を築こうと努力している子も少なくない」という。中村さんが接した現在、慶応大学1年生のある10代男子は、いわゆる「ギャル男」ファッションで毎日のように渋谷で遊んでいた。しかし、2年生になったらアメフト部に入部すると決めており、その理由は航空会社のパイロット職に就くための推薦枠があるからだそうだ。彼は高校時代に留学した経験があり、海外の高校でアメフト部に所属、英語も堪能だという。1年のうちは思いっきり遊び、2年生になったら推薦枠を狙おうと計画してはいるが、それがダメだったときのために、今から専門学校の資料も集めているという。「10代男子の場合、将来に対して『コレがダメだったらアレ、アレがダメだったらコレ』と次の手をいくつも用意しているのが特徴的。彼の場合も、推薦枠がダメなら専門学校、専門学校でもダメだったら総合職として航空会社に入社し、何年かに一度あるという総合職からパイロットへの転職制度を利用する計画でいる」と中村さんは言う。10代と20代を切り離して考える10代女子に対し、男子の場合は比較的真面目に、20代での生き方を考えた合理的な10代を過ごしているようだ。

日本の社会では、20歳になると酒やタバコが解禁になり、選挙権を得、国民年金制度に加入する義務が生じる。20代になってからのこうした変化を、今の10代はどう受け止めているのだろうか。中村さんは「昔と違って今の10代は酒やタバコにそんなに興味を持っていない」と話す。昔と比べ、酒やタバコが一般的なものというイメージが定着したことに加え、10代のうちからもやろうと思えばできるからだろう。「選挙権については、特に男子は『今後どう生きていくか』といったことに絡め、比較的真面目に考えている様子。また、国民年金については男女共『払わなければいけない』と認識している」と中村さん。年金を払っても自分たちには返ってこない、ということは知りつつも、上の世代に対する責任を感じている10代。上の世代に対して自分たちが損をしている、という感情を持ち合わせつつも、一種の諦めで受け入れている様子が伺える。

博報堂生活総合研究所

■20歳になったら結婚したい…男女共に強い結婚願望

渋谷センター街を歩いていた20人の10代に「20歳(20代)になったらしてみたいこと」を聞いたところ、意外に多かったのが「結婚」という回答で、男女2人ずついた。現在14歳のアイちゃんは、「結婚したいから早く20代になりたい。もう相手もいる」と言う。同じく「結婚」と答えた16歳のユウタくんは「1回はしてみたいから」という理由で、まるで今から離婚することまで考えているようだった。中には「子供を作りたいから」(ユウスケくん・16歳)と答えた10代男子もいた。そのほかには「一人暮らし」「パチンコ」「留学」などといった回答があった中、16歳のトモアキくんの回答は「カリスマ美容師」。やはり、20代=社会人として、働く自分をイメージしているのだろう。ただし、「特になし」と答えた10代も6人と多かった。20代になった自分に対して希望を持てないでいるのだろうか。もしくは、10代と20代の自分に大して差がないと考えているのかもしれない。

「20歳に早くなりたいか、なりたくないか」について聞くと、「早くなりたい」と答えた10代は20人中8人、「なりたくない」が12人だった。「早くなりたい」と答えた子の理由は「結婚したいから」(アイちゃん・16歳、レイちゃん・19歳)、「大人な感じがするから」(アイちゃん・19歳)、「今より何かできそうな気がするから」(ダイスケくん・16歳)など。一方、「20歳になりたくない」と答えた子のうち、女子の理由は「20代になったら現実見なきゃいけないから、ずっと10代でいたい」(チヒロちゃん・13歳)、「若い方がいい」(チカちゃん・18歳)、「歳を取りたくない」(ユミちゃん・17歳)といった加齢に対する否定的な考えが多く、男子の場合は「国民年金を払いたくない」(ユウタくん・16歳)、「20代は忙しそう。働きたくない」(ユウスケくん・16歳)など、社会人になることへの不安が目立った。男子は8人中過半数以上の5人が「早く20代になりたい」と答えているのに対し、女子は12人中3人で、男子の方が早く20代になりたいと思う傾向にあると言える。

国民年金の義務や選挙権などについては、女子の場合「よくわかんないけど、気にしてない」(マリコちゃん・18歳)、「面倒臭い」(アイちゃん・19歳)、「考えたことない」(ユミちゃん・17歳)という回答が多かった。反面、男子の中には「税金とか年金とか払うのは嫌だけど、選挙は行きたい。楽しそうだから」(リョウくん・16歳)という子もいた。16歳のタクヤくんは「酒やタバコは今でもやろうと思えばできるし、高校生活に比べて20代の環境は彼女作るのとかキビシそうだから、20歳にはなりたくない。でも、選挙は行ってみたいと思う」と言う。

20歳に早くなりたいという子よりも、なりたくないという子の方が圧倒的に多く、特に女子の場合は「10代の今が楽しい」という思いが強いようだ。背景には、20歳になったら10代の時のような馬鹿はできない、という自覚を持っているからなのだろうか。しかし10代男子の場合は「早く一人前に見られたい」という思いから、10代のうちに20代になることを具体的にイメージしている。いずれにしても、20歳になったら今とは違って現実的にならなければいけない、という認識が強いために、限られた10代の時期を謳歌している様子が伺える。

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