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渋谷駅・岡本太郎「明日の神話」で1年分のすす払い コロナ禍もボランティア継続

足場を組み、ボランティアスタッフが清掃活動を行う様子

足場を組み、ボランティアスタッフが清掃活動を行う様子

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 渋谷マークシティ連絡通路内で公開する岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」の「すす払い」が10月30日未明に終わった。今年は22日・23日・29日・30日の週末4日間にわたり、延べ80人のボランティアが参加し清掃活動を行った。

刷毛(はけ)と掃除機で綿ぼこりを清掃する様子

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 米・水爆実験で被爆したマグロ漁船「第五福竜丸」をテーマとした「明日の神話」は、「日本版ゲルニカ」とも評される岡本太郎の大作。60年代後半にメキシコの新築ホテルのロビーに飾るために制作されたが、経営状態の悪化に伴い工事未完のまま人手に渡り、作品の所在も不明となっていた。2003(平成15)年9月にメキシコ郊外の資材置き場で発見され、「明日の神話」再生プロジェクトが発足。1年間にわたる修復作業の後、東京都現代美術館の特別公開などを経て、2008(平成20)年に恒久設置先として「渋谷区」が選ばれ、同年11月17日に渋谷マークシティの連絡通路で一般公開が始まった。

 作品表面に付着した綿ぼこりや汚れを取り除く「すす払い(清掃活動)」は、一般公開の翌年(2009)年、年一回の恒例行事として開始。今年で13回目を迎え、公開日の11月17日に間に合わせる日程で、NPO法人「明日の神話保全継承機構」を中心としたボランティアで作品表面の清掃や、専門家による修復・補強作業を行った。

 通勤や通学など人の往来の多い同通路での清掃作業は、歩行者の通行を妨げたり、危険が及んだりすることを避けるため、京王・井の頭線の終電後から始発前までの約3時間で行う必要がある。終電後、迅速に作品に足場を組み、幅30メートルを全14ブロック、高さ5.5メートルを上中下3ブロックの計42ブロックに区分けし、1日約10ブロックずつのペースで作業を実施。背中に掃除機を背負い、右手に刷毛(はけ)、左手に掃除機のノズルを持ったボランティアスタッフが足場に上り、作品を傷つけないよう配慮しながら、払った「綿ぼこり」を掃除機で丁寧に吸い込んでいく。ほこりや汚れを掃除機で全て回収するのは、清掃時に絵の具の一部が万が一剥がれ落ちた場合に備えるため。ブロックごとにごみ袋を分け、ブロック番号を記し、回収したごみをしばらく保管するなど、修復に向けても細心の注意を払う。 

 区民や地元企業で働く人々、岡本太郎ファンらで構成するボランティアスタッフに支えられて保存・維持される同作品。新型コロナウイルス感染が拡大する2020年、2021年も、検温やうがい、マスクなどの感染症対策を行いながら、例年通りの清掃活動を継続してきたという。

 修復プロジェクトに携わり、渋谷に設置後も修復・補強を行う絵画修復家・吉村絵美留さんは「(今年の)ほこりの量は例年と変わらない。ただ、要因は分からないが刷毛で落ちない汚れが増えている。迂回(うかい)路側は歩行者の通行量が増えたで汚れの付着が増えている傾向がうかがえる」とコメントする。

 全4日間にわたる清掃活動を終え、1年分の「あか」を落とした同作品は11月17日で14回目の秋を迎える。「(渋谷設置から15年を迎える来年は)保全活動をはじめとする『明日の神話』の魅力を伝える企画を検討していきたい」(事務局)という。

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