特集

高感度な情報発信エリアに続々オープン
渋谷・青山フラッグシップショップ事情

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■人気の自然派コスメブランドの旗艦店が初上陸

9月12日、天然成分をベースとするアメリカの化粧品メーカー、アヴェダ・コーポレーションは南青山に日本初となる旗艦店「アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ」をオープンさせた。これまでは人気を集めながらも、海外の店舗に行って購入するか並行輸入に頼るしかなかった商品を実際に手にとって買うことができる日本で唯一のショップとして、業界からも注目を集めている。

同ショップは地上2階建て、地下1階の同店の総面積は546平方メートルで、1階はアヴェダ製品を総合的に取り扱う「アヴェダ ライフスタイル ショップ」と、可能な限りオーガニック食材を使用したメニューとリラックスした空間を提案するカフェスペース「ピュアカフェ」がある。2階には松浦美穂氏をアーティスティック・ディレクターに迎えたヘアサロン「アヴェダ ライフスタイル サロン」で、地下1階には自然界や身の回りに存在する5つの要素「空・風・火・水・地」をベースとするトリートメント法を取り入れたスパを併設している。アヴェダは「地球環境」もテーマに掲げていることから、全館「リデュース(消費資源の削減)」「リユース(再使用)」「リサイクル(再生素材の使用)」を意識した内装に仕上がっており、アンティークの家具や小物を多く取り入れたり、床や廊下、階段に飛騨高山の解体された民家の古材や、沖縄のリサイクルガラスを使うなど、新しい素材と古い素材の調和がデザインの基本になっている。

広報担当の黒岩さんによると「既に世界25カ国以上で店舗展開をしているが、消費者レベルの高い日本市場に進出することで、真に強いグローバルな企業になる。マーケット規模を考えると、化粧品メーカーとして日本進出は自然の流れ」と話す。「もともとアヴェダはヘアからスタートした企業であるため、ヘアサロン激戦区=青山・表参道でのビジネスに意味を感じ青山への出店を果たした。当然のことながら、このエリアはファッションをはじめ高感度な地域だからということも含まれる」と出店の背景を明かす。

同店スパの人気コースは、ボディトリートメントの一種である「ハイドロマット トリートメント」(60分=14,000円、90分=21,000円)。また、1Fカフェメニューでは「ホームメイドのグラノーラ(豆乳とシリアル)」(500円)、「日替わりマフィン」(350円~)、「ランチプレート(サンドイッチ・スープ、サラダ、ドリンクのセット)」(1,000円~)などが味わえる。ちなみにカフェの運営は、ベジタリアンカフェとしても有名な「cafe 8(カフェ・エイト)」(南青山)が協力している。

アヴェダ
アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ

■アウトドアメーカーがクライミングウォール併設店

宇田川町の東急ハンズ前に10月17日、アウトドア用品メーカーのモンベル(本社:大阪市)が東京での旗艦店「モンベルクラブ渋谷店」(TEL 03-5784-4005)をオープンさせた。同店は、地下1階から地上6階建ての建物で東京都心部では190坪と一番広い売り場面積をもつ直営店となる。店内は1階から4階までが売り場となり、5階は写真展や講習会、講演会などを行うイベントスペースとしてとして活用を図る。地下1階にはエスニック・ファストフードレストラン「スパイスマジック」を併設する。同店の目玉は、1階から3階の吹き抜け部分を利用した高さ12メートルのクライミングウォール。通行人からもガラス越しに目を引くが、当分はオブジェ的要素とデモーストレーション用として使用するという。

広報担当の渡辺さんによると「日本は世界でも類をみないほど自然が豊かな国。しかしながら、なかなかそのことが知られていない。登山も国民の人気スポーツのベスト10に入る程メジャーなスポーツであるにもかかわらず、若い世代には馴染みが少ない。そこで、情報の発信地ともいえる渋谷にショップをオープンすることで『山の文化』を伝えたい。都会にいながらもアウトドアの魅力を感じることのできるショップを目指す」と話す。さらに「アウトドア好きの人には旅行好きな人が多い。それを意識して『スパイスマジック』では世界の味を手軽に楽しめる点を重視した。今後は、健康志向を反映してオーガニック食材の提供も考えている」(渡辺さん)と加える。同店の推奨メニューは、日本では初輸入となるコロラド産のコーヒー(250円)やインディアンチキンロール(340円)など。

全国に29店舗のショップを構える同社だが、イベントを催すサロンスペースを常設するのは初の試みで、オープニングイベントとして18日には、世界7大大陸の最高峰登頂、北磁極から南極点まで人力踏破など「世界を歩いてきた」旅人の石川直樹氏のスライドショー(無料)が開催されるほか、19日には「陰陽師」などの小説や多彩なアウトドア活動で知られる夢枕獏氏と同社辰野勇(たつのいさむ)社長のトークショー(無料)などが行われる。「アウトドアを楽しむための商品を提供する一方で、それらを使ったアウトドアイベントを開催するなど、ソフト面とハード面の両方からカバーしていきたい」(渡辺さん)と、複合型直営店における可能性を探る。

モンベル渋谷店
モンベルクラブ渋谷店 モンベルクラブ渋谷店 モンベルクラブ渋谷店 モンベルクラブ渋谷店

■伝統工芸を継承するメーカーが直営店で新たな挑戦

約200年の歴史をもつ書道筆の産地として有名な広島県熊野町から、世界に通じる化粧筆を製造している「白鳳堂」が10月16日、南青山に初の直営店「白鳳堂青山店」(TEL 03-5464-6737)をオープンさせた。同社は、主として国内外の大手化粧品メーカーやメイクアップアーティスト系ブランドの OEM(=相手先ブランドによる生産)による供給、「MISAKO」をはじめとするオリジナルブランドを通信販売などで市場を拡大してきた。

同社専務高本さんによると「自社ブランドを立ち上げた30年くらい前から直営店を出したいと思っていた。しかしその頃は化粧筆の市場があまり大きくなかったため、当初はOEMや卸という形を取ってきた。しかし、顧客の満足度が高まる『道具』を提供することに専念してきた結果、最近では筆という道具の大切さが認知されてきた。メーキャップアーティストの台頭など、時代のニーズも高まり今回のオープンを迎えることができた」と、出店のタイミングについて話す。さらに高本氏は続ける。「日本はいいモノを生産しても、それをアピールする文化的要素が欠けている。いいモノを作ったら、そのモノの正しい使い方やそれを使う場所も提案していくべき。それが直営店という形につながった」。

日本初の直営店のオープン日は、1974年に同社を創業させた高本社長夫妻の41回目の結婚記念日でもある。「直営店をオープンさせるまでに創業から30年の月日が経っている。スタッフ一同で、社長夫妻のお祝いと労いの気持ちからオープン日は10月16日にしようと話し合った」(高本さん)と開店日設定の秘密を明かす。初出店の場所に青山に選んだ背景については「青山という場所は、ファッションを中心とした情報の発信地となっており、関連店舗が集積している。店舗同士が競い合うことで、顧客の満足度の高いものを生むことができ提案していくことが可能な地域。相乗効果のようなものが起こる場所」と青山の持つポテンシャルへ期待を寄せる。

商品構成は、同社が取り扱う全600アイテムの中から約400アイテムが店内に整然と並ぶ。ラインナップは、アイライナー用ブラシ(600円)からチークブラシ(12,000円)までと幅広く、専属のメーキャップアーティストから各商品の取り扱い方について説明を受けることもできる。「今後は、『絵手紙』を描くための筆キットといった『描く筆』の提案も行うなど、メーキャップ以外の部分にも力を入れたい。実際、高品質の筆を使うことで思い通りの絵やメーキャップが可能になる」(高本さん)と筆の可能性を語ってくれた。

白鳳堂
白鳳堂青山店 白鳳堂青山店 白鳳堂青山店 白鳳堂青山店

アパレルメーカーの詩仙堂(本社:山口県)は8月5日、カフェや多目的スペースを併設したブティック「詩仙堂AOYAMA Do STUDIO(アオヤマ ドュウ スタジオ) 」(TEL 03-3498-4550)を南青山・根津美術館のそばにオープンさせた。同店は、同社代表でデザイナーのヒトシタムラさんがプロデュースを手掛け、敷地面積100坪、建物面積80坪の個人住宅を買い取り改装した。同店を経営する詩仙堂グループは、伝統素材の「ちりめん」を使った高級婦人服の製造・販売を行い、全国の百貨店を中心に店舗展開をしているが、青山ではブティックと飲食店舗などを複合させた店舗の出店に踏み切った。

同社代表のヒトシタムラさんは、「Do STUDIOは『潜在的なかく乱』をテーマににしており、今までの経験と固定観念を持つ自分をかく乱し、もうひとりの自分を発見する空間を提案している」と同店のコンセプトを話す。スタッフの河村さんは「『生きることすべてがファッション』というコンセプトを背景に、『衣』だけに限らず、『食』『住』の至るところまでトータルプロデュースできるショップにしたい」と加える。

1階はランチ(700円)、ハーブティとオリジナルの焼き菓子のセット(700円~)などを提供するカフェ、2階は自社製品を発表するほか若手デザイナーの作品展や演奏会、パーティーなどに貸し出す多目的スペースを設けている。現在2階のスペースでは、15日~21日まで「盃洗コレクション」(無料)を催しており、ヒトシタムラさんのコレクションを見ることができる。また、夜間は和食を中心としたコース(3,000円~:予約制)の提供も行っている。部屋の貸し切りも可能。駐車スペースも用意されている。

詩仙堂AOYAMA Do STUDIO(アオヤマ ドュウ スタジオ) 詩仙堂AOYAMA Do STUDIO(アオヤマ ドュウ スタジオ) 詩仙堂AOYAMA Do STUDIO(アオヤマ ドュウ スタジオ)

金沢箔総合メーカーの箔一(本社:金沢市)は8月29日、金沢箔専門の直営路面店「箔一南青山店」(TEL 03-5464-0891)を骨董通り近くにオープンさせた。同店は陶芸家であり空間プロデューサーの大樋年雄さんが内装デザインを手掛けており、店内は金・銀箔を施した金沢箔のアートギャラリーも併設する。

同社チーフの滝沢さんによると「もともとは百貨店にギフト向けの商品として卸していたが、加賀百万石の伝統から生まれた『金沢箔』のすばらしさをもっと一般の人にも知ってもらうためにオープンさせた。商品だけでなく店内の床や扉に箔を使い、インテリアの一部にも箔を活かす実例を提案するショップとしても存在したい」と、直営店出店の経緯を話す。

箔は400年もの歴史のあるもので今までの箔を取り扱うメーカーは、器の装飾品や屏風、仏壇など、伝統工芸に近いものが多いなか、同店は異業種企業や作家たちとのコラボレーションした商品も多く、業界からも注目を集めている。同店では、箔材料を1枚(220円~)から買えたり、アイロンプリントやシールになっていて簡単に取り扱える商品を取り揃えるなど、同店でしか手に入らないアイテムが多いのも特徴。滝沢さんのオススメは「中村勘九郎ブランド」の市松模様を模った手鏡(3,000円)、流水の模様を施した丸皿(3,500円)など。

「歌舞伎も箔も同じくらいの時代背景を持つもの。歌舞伎が生まれた頃には、衣装に金箔が使われることもあった。400年の時を経てそれぞれをまた融合させようということからこのブランドが立ち上がった。勘九郎さんの衣装に市松模様や流水模様が良く使われていることなどからヒントを得て、商品がラインナップされている」(滝沢さん)という。また、金箔をベースにした「モダン箔クラフト展」も月替わりで開催するなど、作家の創作意欲を喚起する場としても機能している。

箔一

昨夏の「ルイ・ヴィトン」、今春の「プラダ」、今秋の「ONE表参道」など、世界の表舞台となった表参道には外資のセレブ系ブランド旗艦店のオープンラッシュが続いている。一方、渋谷・青山の高感度エリアでは、一歩奥に入った裏道まで旗艦店や直営店がオープンしている。最近の特徴は、出店業種がファッションブランドだけではなく、ファッション周辺のライフスタイル全般に広がっていることだ。ブランドのイメージアップはもちろんだが、レベルの高い路面店が集積する青山界隈に敢えて出店し、その高い顧客欲求に応えることで、さらに商品開発に磨きをかけるケースも少なくない。さらに、高感度エリアならではの柔軟な発想で、周辺の異業種企業・店舗などのコラボレーションにも期待を寄せる。渋谷・青山のフラッグシップは、高感度な消費者と「直接」コミュニケーションを図れる点が、最大のメリットなのかもしれない。

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