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元任天堂社員・ちょーかんが営む「84」、カフェ業態で再始動  場所は「渋谷区内」

再始動した「84(はし)」店内で笑顔を見せる「ちょーかん」こと橋本徹さん

再始動した「84(はし)」店内で笑顔を見せる「ちょーかん」こと橋本徹さん

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 元任天堂社員が営む会員制の「任天堂食堂」として知られ、昨年いったん閉店した「84(はし)」が6月6日、完全予約制のカフェに業態を改め渋谷区某所で再オープンした。

壁面には名だたるゲームクリエーターらのサイン

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 店を営むのは、兵庫県出身で1984(昭和59)年に任天堂に入社し、その後約20年にわたり、同社とリクルートの合弁会社「猿楽庁」を率いゲームのチューニングなどを手掛けた橋本徹さん。その手腕や人柄から「長官(ちょーかん)」として親しまれ、猿楽庁の社長を務める傍ら、2015(平成27)年2月に飲食店「84」をオープンした。

 自身が「人見知り」という理由から、オープン当初から住所は、友人にも謎解きのような限られたヒントしか明かさないなどして非公開を貫いた。それでも口コミで話題となり、店内の至る所に飾られたゲームファン垂ぜんの貴重な品々や名だたるゲームクリエーターのサインなどをはじめ、曜日限定で提供していた京都の人気店公認のラーメンなどの料理も支持される「伝説の店」に。2020年1月末でいったん閉店するまでの約5年間で来店客は延べ約1万5000人に上り、複数の条件と「長官面接」をパスしないと得られない正会員のカードは600枚を発行したという。

 今回、会員制をやめ、予約があれば「いちげん」も入店できる店へと業態転換した理由は明確だ。「インバウンドに向けたビジネスに転向しようと。海外からの観光客のみに90分間で店を見てもらおうというアイデアが降ってきた」と橋本さん。3代目として厨房(ちゅうぼう)に立っていた料理人の卒業に伴い閉店を考えていたなか、外国人観光客に向けて、店内で橋本さんによる「84ツアー」をする新たな業態を思いついたという。

 「日本人は、スーパーマリオは知っているがマリオを作った人(ゲームプロデューサーの宮本茂さん)のことはあまり知らない。でも海外の方はまず『宮本さんの作品が好き』とおっしゃるし、とてもピュア。店を訪れて感動して泣く方もたくさんいらっしゃった」と、反応の違いを肌で感じ取っていた。2019年11月、渋谷パルコ(渋谷区宇田川町)に任天堂国内初のオフィシャルショップ「Nintendo TOKYO」がオープンしたこともあり、「新業態として出店する際には外国人に向け『84は渋谷区にある』と言おうと決めていた」という。

 昨年いったん店を閉めてから準備を始めたが、コロナ禍にも見舞われた。「コロナは言い訳にしない」と、飲食店としての営業は休みつつ貸しスペースとして動画撮影・配信やイベント開催などで店を生かし、このほど週末限定の予約制カフェとして再始動した。今年のエイプリルフールには84の広告が渋谷をジャックしたかのような精巧なパロディー画像を自身のSNSに投稿し、店の場所を初めて匂わせた。

 かつて社長を務めた猿楽庁のオフィスも渋谷区内にあり(現在は移転)、「渋谷が大好き。好きすぎる。猿楽庁時代も少しでも時間が空けば『渋谷パトロール』をしていた。歩くだけで『今』の情報が入ってくる」と、深すぎる渋谷愛も明かし、週末カフェをオープンする際にこれまでの住所完全非公開から「渋谷区内」まで非公開の範囲を狭めたことで「やっとたくさん語れる」と笑顔を見せる。

 テーブルの上に並ぶのは、「外国の方にとにかく喜ばれる」という駄菓子。土曜・日曜限定で予約を受け、各日90分・完全入れ替え制で4ステージ(1部=12時~13時30分、2部=14時~15時30分、3部=16時~17時30分、4部=18時~19時30分)を設定。予約は1テーブル(最大4人まで)単位で、料金は1テーブル8,400円。駄菓子とパスポート(スタンプ帳)が付き、1ドリンクオーダー制(ソフトドリンク各540円)だ。

 各ステージとも、最大5テーブルまでに人数を絞り、入れ替え時の30分間で換気やアルコール消毒などを徹底。東京都の感染防止徹底宣言ステッカーには、コロナ対策リーダー研修を修了すると付けられる金の王冠も添えられ、感染防止対策にも力を入れる。カウンターのそばに置かれた電話ボックスは喫煙室となっており、衛生管理にも余念が無い。

 壁面や棚など店内いっぱいに並ぶ「お宝」の数々には、それぞれに橋本さんの思い入れがあり、棚の中の1コーナーだけでも「全て語ったら朝になってしまう(笑)」ほど。数々の著名ゲームクリエーターらのサインの中でも、「84」と書かれた茶わんと箸を持った貴重な「ピカチュウ」を囲むのは、ポケットモンスターのキャラクターデザインを担当する杉森建さんや、ポケモンのプログラミングを担当し、ミュウなど一部キャラクターのデザインも手掛けた森本茂樹さんらのサイン。再開発による建物の取り壊しで、わずか10カ月で退去することになった「初代」84の壁紙に直接描いてもらったものを丁寧に剥がし、額装し直したものだ。

 マリオシリーズ、ゼルダの伝説シリーズなどの生みの親として知られる宮本さん直筆のマリオのイラストが添えられたサインなど、店内の壁面を飾るそうそうたる顔ぶれのサインをはじめ、トイレにはお笑い芸人など著名人のサインもズラリ。84のオリジナルキャラクター「は~しゃ」は、ピカチュウをデザインしたにしだあつこさんに手掛けてもらい、ピカチュウとは「きょうだい」の間柄。ソファに仲良く並ぶぬいぐるみは「汚れたらぬいぐるみ専門のクリーニングに出す」など、メンテナンスにも抜かりなく、全てに橋本さんの愛や遊び心が込められている。

 インバウンド向けというコンセプトは今もぶれないが、飲食店営業休止中に企画されたイベントで店内を初めて一般客向けに公開した際に新たなニーズにも気付いた。「従来のお酒を飲みに来る方とは全然違う客層で、店に入った瞬間からずっとシャッター音しかしなくて震えている方もいた。すごく愛してもらえているなと感じてうれしかった」と言い、今回「一度日本人向けにも実験的に試してみよう」とオープンに踏み切ったこともあり、現時点では「まだぼんやりとはしているが、(来店客は)外国人と日本人のハイブリッドもいいかなと思っている」と先を見据える。

 店内では、は~しゃや店のロゴをデザインしたオリジナルグッズも販売。ゲーム機がちょうど入るサイズのトートバッグ(1,500円)や、ゲームプレー中やパソコン作業中などに指を汚さずスナック菓子などをつかめるトング(840円)、マスク(1,500円)、は~しゃのラバーキーホルダー(924円)などをそろえる。一部を除きオンラインでも販売する。

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