特集

もはやITワーカーの必須アイテム?
渋谷サプリメント・マーケット事情

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■「健康食品」から「サプリメント」へ市場拡大

カジュアル衣料専門店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが有機野菜販売の新事業を発表するなど、異業種からの参入も目立ってきた健康食品業界。今日では玄米、無農薬野菜から無添加ラーメンまで、“健康食ブーム”の裾野は広い。

“健康食ブーム”のもうひとつの顔として、日本では1960年代から「健康食品」という名で、主に専門店と通信販売で供給されている商品群がある。「健康食品」は「栄養成分を補給し、または特別の保険の用途に適するものとして販売の用に供する食品」と定義されている。通常の食品の形態や摂取方法ではないもので、栄養成分の補給に適する食品である。高度経済成長期、氾濫する「健康食品」に対して、1971年に当時の厚生省(現厚生労働省)から「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の通知が出された。それによって医薬品との区別が明確にされ、効能効果を謳うことは禁じられ、厳しく規制されることになった。用法用量についての記載も当初は禁じていたが、1988年に「健康食品の摂取量及び摂取方法に関する指針」が出され、摂取量と摂取方法を表示するよう義務づけられた。

1990年代に入ると、「サプリメント(栄養補助食品、健康補助食品)」という“輸入”の呼び名が浸透し、市民権を得始める。「サプリメント」発祥の地アメリカでは、ドラッグストアや専門店で1,000種類以上ものサプリメントが販売され、日頃不足がちな栄養素を補うために、ごく当たり前に家庭や職場で盛んに飲まれていた。日本でも1990年代初めに大手の製薬、食品、酒造メーカーが参入、広く出回り始めた。「健康食品」は主に“自然食品”と工場加工による“加工健康栄養補助食品”に大別される。サプリメントは“加工健康栄養補助食品”の中に含まれ、通常の食事だけでは不足しがちなビタミンやミネラルなどの栄養素を錠剤や顆粒にしたもので、手軽にできる健康管理と求めやすい価格をキーワードに“サプリメント先進国”アメリカで大きな成長を遂げ、明るくおしゃれなイメージから日本でも輸入商品がドラッグストアの店頭に並ぶようになった。

アメリカでは1994年、「栄養補助食品・教育法」が制定。これにより、米国ではサプリメントは「医薬品」と「食品」との中間に位置付けられ、その効果が表示できるようになった。その背景には、米国内にはびこる心臓病や肥満など生活習慣病の増加や、高い医療費などによる国民の健康意識の高まりなど、実際的な問題があった。アメリカでサプリメントを利用している人は、大人に限ると全人口の60%以上にもなり、売上規模は2兆円を超えている。米国マーケットを横目で眺めてきた“サプリメント後進国”の日本だが、サプリメントを中心とした健康食品市場は年率8%の成長を続けている。国内の市場規模は推定で、4,000億円とも、6,000億円とも見られており、マーケットは一段と拡大している。

現在、スーパーやコンビニで手軽に買えるサプリメントとしては、主にビタミン類やミネラル類がある。種類としては、特定の栄養素を補給する単一タイプと、何種類かの栄養素をまとめた複合タイプに分かれ、形状も錠剤タイプだけでなく、ゼリーやビスケットなど菓子のようなものから飲料タイプなど様々。国内のマーケットが今日のように大きく変化したのは、1997年に“ビタミンが食品扱い”になったことが挙げられる。日本ではもともと錠剤タイプのビタミンやミネラルは医薬品として指定され、厚生労働省の承認を得なければ販売することができなかった。同じ成分でも食品として販売する場合には、薬事法にふれないように、三角形や六角形などの医薬品にない形や大きさにして製造されてきた。その後、規制緩和推進計画の中で検討された結果、ビタミンの取扱いについて厚生労働省の通知が発表され、1997年4月からビタミンは形状の規制が緩和され、食品扱いとなったのである。これによってスーパーやコンビニで「食品としてのビタミン」が堂々と販売されるようになり、サプリメント分野へ参入する企業のビジネスチャンスも一気に向上した。さらに2001年には、ビタミンとミネラル類の計14種類が「栄養機能食品」と定められ、効果の表示が認められた(ただし、認証されたビタミンとミネラル類以外の成分は、効果や効能を謳うことは薬事法で禁止されたまま)。健康、美容、ダイエットなど、消費者の健康志向がますます高まる中で、特に女性は、体の中から健康と美容を整えることへの関心が高く、サプリメント市場はここ数年急激に拡大。さらに長引く不況、医療費の自己負担のアップ、ストレスが蔓延する現代社会では、サプリメントは必須アイテムになりつつある。

■マン・ツー・マンでリピート化を高める専門店

1999年6月、日本で最初の本格的サプリメント専門店「ヘルシーワン中野サンモール店」が中野に開店した。同年10月には、渋谷パルコパート2に「渋谷パルコ店」がオープン、渋谷におけるサプリメント・ショップの先駆けとなった。同店では管理栄養士、栄養士の国家資格を持つ専門家が店舗に常駐することで、以降にオープンするサプリメント・ショップの見本となる。

栄養士の資格を持つ店長の菊山さんによれば、日によって異なるが2割~5割近くが男性客だという。女性客は一般のOLと、時間が不規則で身体を酷使する看護婦や美容師などが多い。20代は金銭的な余裕がある時に、30~40代になると、自身の目的に応じて定期的に購入していくそうだ。「医薬品ではないので症状が治るということは言えないが、客は効果を求めて購入する」と菊山さん。さらに、「サプリメントを継続して摂取することで体質を変えていくことが可能になる。また、飲むことで安心感も生まれる。いつも栄養のバランスが取れた状態にしておくことで、身体が疲れにくくなる。常にベストの状態で仕事に臨みたいと願っている多くの人に利用してもらいたい」と話す。

同店が開発した対面販売の基本は、栄養士、管理栄養士が客のライフスタイルを聞きながら最適なサプリメントをアドバイスしていくというもの。同店では「マイビタミン」と謳って、カウンセリングからスタートして、1日分毎にサプリメントをパックしている。「酒・タバコをたしなむ」「ストレスが多い」「疲れが取れない」「ダイエット中」など、各自のライフスタイルと症状、目的に合ったサプリメントを店頭で分包する。1日分100~300円、1ヶ月3,000円~。同店では女性には、ダイエット系より肌に効果の表れるサプリメントがよく売れ、男性には「マイビタミン」が好評とのこと。ちなみに1月の単品売上ベスト3は、1位「ビタミンC1000」、2位「ガーリック」、3位「ビルベリー」。

ヘルシーワン渋谷パルコ店
ヘルシーワン中野サンモール店 ヘルシーワン中野サンモール店

2000年4月にオープンした「ロザ・ヴィータ渋谷マークシティ店」。運営は自然派コスメのハウスオブローゼ。同店ではサプリメントの販売に加え、お茶の量り売りも行っている。併設する喫茶コーナーでは、店頭で販売しているハーブティー(350円~)やフレイバーティー(400円~)、中国茶(500円~)などが飲める。同店スタッフで管理栄養士の奥村さんは「常にイライラするとか、精神的な要因で生まれる皮膚炎など、自律神経の障害から発生する現代病が増えてきた。サプリメント・ショップは時代に合わせて登場した」と、マーケットの拡大を説明する。「女性の場合は、春先はイライラ、夏はダイエット、冬は冷え性など、年じゅう何らかの悩みを抱えている。しかし、薬を常用したり、医者にかかるほどではない彼女たちは、そんな悩みを専門家に聞いて欲しいと思っている。カウセリングという形で話を聞き、その人に足りない栄養素を提示してあげると、納得してもらえる」と奥村さん。喫茶コーナーで常連客とおしゃべりするのも、カジュアルなカウンセリング。店に30分~1時間いて奥村さんと話をして帰る常連客も少なくない。

「かかりつけの栄養士みたいなもの」と奥村さんが表現するように、栄養のプロである栄養士が店に常駐し、アドバイスをしてくれるという付加価値は高い。喫茶コーナーに椅子を設け、リラックスして話ができる点も見逃せない。また、シートを記入するだけで不足しがちな栄養素やビタミン、ミネラルなどを自覚症状から明らかにするシステム「シグナルチェックテスト」も好評だそうだ。同店ではオリジナル商品のほか、花粉症に応じたサプリメントやダイエット商品がよく売れている。

ロザ・ヴィータ渋谷マークシティ店 ロザ・ヴィータ渋谷マークシティ店

■異業種&ベンチャーが手掛けるサプリメント業態の進化形

2001年11月、JR渋谷駅新南口に直結した「ホテルメッツ渋谷」が開業した。その2~4階にホテルの施設としては異例ともいうべき、ヘルス&ビューテイの総合サロン「ヘルス・アンド・ビューティ キングダム」が同時オープンした。同施設は、病院でしか受けられなかったCTやMRによる検査専門センターの「メディカルスキャニング渋谷」(2階)、ヘアサロンのほかフットケアやフェイシャルなど様々なメニューを揃えた「UNIX hair &parts beauty(ユニックスヘアー・アンド・パーツビューティー)」(2階)、サプリメント・ショップ「Mrs.Gene(ミセス・ジーン)」(3階)、カウンセリングサロン「Peacemind(ピースマインド)」(4階)など、業態の異なる5つのサロンから成る。「ヘルス・アンド・ビューティ キングダム」を開発したのは、2001年11月設立のディーエヌエー。デベロッパーとして「キングダム」ブランドを立ち上げ、そのコンセプトに賛同したテナントを誘致するだけでなく、自らも直営店「Mrs.Gene」を出店した。

ディーエヌエーは、JR東日本のシティホテル事業部として「ホテルメッツ」を運営する池袋ターミナルビルの関連会社で、「ヘルス・アンド・ビューティ キングダム」の開設にあたり、2001年11月に設立されたベンチャー企業。JR東日本グループとしては例のない、健康産業への進出である。「ヘルス・アンド・ビューティ キングダム」統括マネージャーの小川さんは「この施設はホテルの差別化として設けたのでなく、渋谷エリアのユーザーに利用してもらうことを考えた」と話す。直営店のサプリメント・ショップ「Mrs.Gene」については「女性の場合、ダイエット、美肌、美容へのアプローチが多く、マーケットは広がっている。かつてサプリメントは通販商品だったが、通販業界の健康食品の扱いは減り、リアル店舗での購入が増えている」と、マーケットを分析し、将来性を見据えた出店となった。

高齢化社会の到来、慢性のストレスなど現代人が抱える問題は多く、体質や生活習慣の改善とともに不足しがちな栄養分を補う必要に迫られる。「体質がすぐに改善されるわけではないが、ライフスタイルとして継続してサプリメントを飲むという意識改革が促されると、効果は表れる。リピーターをつかむためには、やはり満足度の高い商品を提供していくしかない」と小川さん。同店では燕龍茶(=ヤンロンちゃ、5g×30包)3,500円や甜茶(=てんちゃ、5g×30包)700円が人気で、「お茶は日本の食文化の中に入り込んでいるので、違和感がない」と分析する。

一方、「ヘルス・アンド・ビューティ キングダム」(4階)で注目を集めているのが、オンラインカウセリング、対面カウンセリングを実施する「Peacemind」。出店にあたってデーエヌエーをはじめ、JR東日本と協議を重ねてきたという。運営するビースマインドは、あらゆる悩みに対してその分野のカウンセラーと1対1で相談できるサービスを提供するサイトを開設し、実際のカウンセリングルームを展開するベンチャー企業。ますます拡大するストレス解消マーケットを見据えて、同社のようなベンチャー企業が新たな視点でビジネスモデルを模索し始めている。

ディーエヌエー株式会社 ピースマインド
ヘルス・アンド・ビューティ キングダム ヘルス・アンド・ビューティ キングダム

カジュアルなサプリメント・ショップ「Supplement-Ya」は、渋谷エリアでは明治通り沿いの渋谷新南口店、恵比寿三越店があり、直営で13店舗を展開している。運営は、情報通信事業、省エネ関連事業を営むアイティック。1992年創設の同社は、ベンチャー企業として3本目の柱に健康関連事業を据え、2000年3月、新宿アルタに 「Supplement-Ya」1号店をオープンした。直営店の経営とともにオリジナル商品を開発し、他の店舗への卸も行っている。

2001年9月に開店した渋谷新南口店の特徴は、自社ブランド「Sup.」の積極的な展開と、スムージーと呼ばれるフレッシュジュース(各280円)や食べるスープ(各380円)をスタンド形式で提供する「Supplement-Bar」を設けている点にある。「Supplement-Bar」はサプリメントに抵抗のある人でもカフェ感覚で気軽に利用できるコーナーとして人気が高い。自社ブランド「Sup.」は目的に応じてカラーリングで識別できるよう配慮した、3ジャンルから成るサプリメント。同店では、平日はOL、サラリーマンが多いが、意外に女子高生も気軽に足を運んでいるという。アイティックのサプリメント事業部の松本さんは「女子高生はダイエット目的でサプリメントを購入するケースが多い。渋谷にはファッションに敏感な10代が多いから、女子高生がサプリメントを購入してもおかしくない」と説明する。さらに松本さんはサプリメント・マーケットの拡大の要因を次のように分析する。「コンビニで自由に購入できるようになったことがマーケット拡大につながった。ファンケルやDHCなどの先行メーカーの戦略も的確だった。食べ物に過敏になっている今日、サプリメントは安全性においては抜群の安心感がある。薬なら副作用が気になるが、サプリメントにはそれがない。ストレスが蔓延する社会で、今日の市場が求めているものがサプリメントだと言える」。

Supplement-Ya アイディック
Supplement-Ya Supplement-Ya

■様々な要因が絡み、膨張するマーケット

ストレス解消ビジネスの領域は幅広い。対面販売でカウンセリングを重視するサプリメント・ショップの進出は、まさに現代社会を反映したビジネスとなっている。病院へ行くのは症状が悪化してから。その前にヘルスケアに関する相談窓口として、サプリメント・ショップがその受け皿になっていると言えそうだ。対面販売が重視される最近のサプリメント専門店では、スタッフのほとんどが栄養士の資格を持っている。薬局の薬剤師や、化粧品業界の「ボーテ・コンシェルジュ」(取り扱うすべての化粧品メーカーの中から、客に適した商品を無料で選び出すサービス)同様、サプリメント・マーケットにも専門知識を備えた“ナビゲーター”が求められている。

現代人はビジネス社会で戦うために、日頃からコンディションを整えておくことが不可欠になっている。特に、ITベンチャーが集積する渋谷周辺では24時間型の労働環境の中で、長時間モニターを相手にするITワーカーが、サプリメント片手に仕事をしているシーンも珍しくない。「時間も大事」、でも「体も大事」といったわがままなニーズを、サプリメントで一挙に解決しようとしているようにも映る。さらに、“ボディもファッションの一部”という見方を背景に、ダイエット志向や美肌志向と結びついて、OL層のサプリメント利用者も急増している。

こうして見ると、サプリメントと結びつくキーワードは“自己投資”かもしれない。「食事は不規則でも仕事を休まないで年収アップ」「ダイエットを実現して着てみたい服を買う」・・・普通の食事をするよりは多くのコストのかかるサプリメント利用者急増の根底には、将来的あるいは短期間に「何らかのメリットを得る」ための“プチ”自己投資という側面も垣間見える。国民皆保険という制度がないアメリカで「予防医療」への関心の高まりを背景に2兆円の市場規模に達したサプリメント市場、日本ではどのような形で市場が拡大していくのだろうか。

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