特集

"脱コドモ化" を目指す高感度商圏
渋谷の"オトナ化" はどこまで進んだ?

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■デパート、ファッションビルの "オトナ化" リニューアル・ラッシュ

「シブヤがオトナになる日」のメッセージとともに2000年4月に開業した「渋谷マークシティ」。オフィスや都市ホテルと一体化した空間は、それまで渋谷になかった "アダルト" なイメージを持ち込んだ。さらに、渋谷駅からオトナに人気の出始めた "隠れ家" 的エリア=円山町方面に抜けることのできる新しい導線を生み出した。コドモが多いとされたハチ公前交差点を通らずに済む―という新たな選択肢を提供した点も、オトナの渋谷回帰に大きく貢献した。同社営業部の久保井さんは「2年前、若者の街と呼ばれ、大人が遊びに来づらかった渋谷に安心して来街できる一つの街、渋谷マークシティが誕生した。メインターゲットである"オトナ" とは具体的には、高感度・高品位な20~30代のOL層を指す。マークシティは、彼女たちにとって上質で安心できる空間を提供し続けてきた」と話す。

渋谷マークシティでは3月21日(木・祝)~4月7日(日)、2周年キャンペーン「2nd mark anniversary」を開催。期間中、レストラン、カフェ全店で特別限定メニューが登場するほか、マレーシア旅行などの賞品が当たるキャンペーンが行われる。中でも注目は「MARK MOBILE」。これはユーザーが「渋谷マークシティ」に関わるキーワードを携帯電話のメールを使用して指定のアドレスまで送信すると、すぐに「渋谷マークシティ」からアニバーサリー期間の特典が掲載されたサイトのURLが返信されるという渋谷らしいもの。サイト情報は1時間ごとに更新されるので、その都度、内容が変化するもので、新しい試みである。

渋谷マークシティ

渋谷マークシティ開業と同時に、東急東横店のデパ地下が30年ぶりの大規模リニューアルを行い、「東急フードショー」が誕生した。リニューアルに伴う投資額は12億円、売り場面積も約40%増床した。今の"デパ地下" ブームの先駆けともなった「東急フードショー」の集客効果は凄まじく、それまで銀座や新宿のデパートに足を運んでいたOLや主婦層の目を、再び渋谷に向けさせた。

東急フードショー

続く1年後の2001年5月、渋谷・桜丘の東急電鉄旧本社跡地に渋谷の新しいランドマークとして「セルリアンタワー」が誕生した。地上41階、オフィスとホテルで構成される渋谷一ノッポの超高層複合ビル。まとまったスペースの確保が難しい渋谷での大型オフィス物件には外資系やIT企業が入居したほか、東急ホテルチェーンのフラッグシップともなる「セルアリアンタワー東急ホテル」も渋谷で初の本格的な都市ホテルとして、"オトナの居場所" として定着してきた。

セルリアンタワー東急ホテル

同じ2001年9月、リニューアルにより "デパ地下" を一新し、キーテナントを入れ替えた「シブヤ西武」。B館地下1階に「食のスぺシャリティストア」をテーマに掲げた高級食品ストア「ザ・ガーデン シブヤ西武」が誕生した。デパ地下と人気を高める高級食品スーパーのコラボレーションに注目が集まった。また、一足先にA館地下1階全フロアを使って婦人靴を展開する「SHOES+(シューズプラス)」に改装し、専門のシューフィッターも配備してスぺシャリティ度を高め、OL層へのアピールを強化した。

シブヤ西武 シブヤシューズプラス
シブヤがオトナになる日

昨年11月末、「渋谷パルコPART1」7、8階にオープンした「ダイニング&ガーデン」は、 "大人のナイトライフスタイル空間" 。パルコは銀座、青山、西麻布など人気エリアからスタイリッシュなダイニングを集めて、大人がくつろげる、時代性のある夜型ダイニング・レストランゾーンを構築した。下層階からの直通エスカレーターを設けなかったのは、デパートの上層階にあるレストランフロアとの差別化のためであり、独立した食空間を印象づける意図があったから。特に8階には、渋谷では前例のない "空中庭園" を実現。各ダイニング・レストランは、時流ともいえる「和+洋」「和+エスニック」などフュージョンスタイルのオリジナルメニューを提案し、大人に利用してもらうことを前提としているため営業時間は深夜12時までと、営業時間も"オトナの時間" にこだわった。

現在、スペイン坂の入口に建設中の「パルコ」の新ビルについて、同社広報担当者によると4月末オープンの予定とのこと。開業直前まで詳細の公表を控える戦略的を取っているためコンセプトは明らかにされていないが、地元商店街の情報によれば、こちらも大人をターゲットに据えた複合施設を目指している模様。

パルコ
ダイニング&ガーデン ダイニング&ガーデン

さらに、昨年9月に1階と5階の一部をリニューアルした東急本店が残りのフロアをリニューアルし、今年3月1日(金)にグランドオープンした。各フロアコンセプトと新ショップの商品構成は、第一期リニューアルをさらに推し進めるもので「山の手の洗練されたライフスタイル」を具現化するファッションやインテリアがメイン。注目のデパ地下には、高級スーパー「紀ノ国屋」(売場面積約250坪)がデパ地下"初" 登場。他にも初登場の和風オーガニックレストラン「泥武士」や渋谷エリア初登場のティールーム「ラ・メゾン・マリナ・ド・ブルボン」など、大人にシフトした店が出揃った。

同社広報室によると、本店のリニューアルコンセプトは「東急百貨店のフラッグシップストア」。戦略的なポジショニングとして、上顧客に特化した "ハイエンド"な「ライフスタイル特化百貨店」を掲げている。ストアコンセプトに「近隣地区に居住する裕福な "ハイエンドカスタマー" の教養ある消費に応えるべく、単なる高級・高質にとどまらない"ハイエンド" を追求する」と謳っているように、ターゲットイメージは、「洗練された山の手ライフスタイル」を継承する成熟した大人。東急本店は肥前藩主・鍋島家が有した松濤公園や観世能楽堂など、渋谷区の中でも日本の伝統文化を色濃く残す高級住宅街"松濤" を後背地として抱える立地環境にあるため、リニューアル前から大人をターゲットにした百貨店として認知されていたが、この方向性がグランドオープンでさらに強化された。

リニューアルに際してはサービス面での強化も見逃せない。1階カウンターに "コンシェルジュ" を配備。同店では衣・食・住など多岐に渡るスペシャリストが顧客に対応するほか、1階に設けた"クローク" で荷物を預かるサービスも開始。5階「お得意様サロン」では上顧客に特化した "ワンランク上のサービス" を提供。また、食料品売場で購入した商品を夕食の支度までに、有料(配送料500円)で自宅に届けるサービス「即配くん」もスタートしている。配達エリアは、渋谷区全域。

東急本店
紀ノ国屋 ラ・メゾン・マリナ・ド・ブルボン

■地元商店街も実感する渋谷の "オトナ化"

大型の先行投資により、イメージを一気に変えるデパートやファッションビルなどの大型商業施設に対して、地元商店街は渋谷の "オトナ化" をどのように見ているのだろうか。

渋谷公園通り商店街振興組合・広報委員長の松田さんは「渋谷はオトナ化している部分もあるが、エリアによって異なる。公園通りはオトナ向けファッション店の進出などがあり、オトナ化は成功しつつあると言える」と切り出す。渋谷駅前から広がる道玄坂、文化村通り、センター街、公園通りなど、メインストリートで年齢的な棲み分けが進んでいるのと同時に、消費者は目的に応じてストリートも使い分けしていると言えそうだ。

さらに最近の特徴として、松田さんは渋谷の "回遊コース" に微妙な変化が生まれてきたことを指摘する。「かつて10代は渋谷駅~109~センター街という回遊性を描いていたが、これは渋谷駅が起点となっていたから。最近では明治通りから神南に入る、原宿方向からの回遊が増えている。原宿方向からの回遊は年齢層がやや高く、その入口である公園通りもオトナ化指数が高くなっている」。オトナ化を目指しながらも、10代のニーズに合わせた商品構成を進めざるを得ないショップもあるが、渋谷の中でも比較的落ち着いた佇まいを持つ公園通りでは「パルコ」のオトナ化路線との相乗効果で、着々と"オトナ化"が進んでいる。

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一方、渋谷道玄坂商店街振興組合事業部門統括副理事長の大西さんは、自身が管理する「道玄坂センタービル」の例を挙げ、「現在のテナントの売上から推移すると、道玄坂の店は総じて好調。しかも25~27歳という女性層が多く、バランスシートが良くなっている」と話す。「道玄坂センタービル」では10年前の約10倍もの入館数があるという。当地で30年間、渋谷の変遷を見守ってきた大西さんは、自身で6代目に当たる生粋の渋谷人。「15、6年前、一度、地盤沈下があり、道玄坂が弱体化したことがあった。当時、道玄坂は男性が飲む・食う専門のエリアで、感度のいい若者は公園通りに集まっていった」と振り返る。一時期ブームを牽引した、渋谷を徘徊するコギャル、ガングロ、チーマーについても「マスコミが派手な部分だけを取り上げ、全国に情報発信されたが、現象としてはセンター街などで見られる側面に過ぎなかった。客層の棲み分けはあってもいいと考える」と冷静に受け止めていた。

その後、複合商業施設の進出やテナントの入れ替えが行われ、道玄坂に女性客が戻ってくる。「店づくりに凝り、しかも料金はリーズナブルという付加価値の高い女性向けの飲食店が増え、女性グループに引っ張られるようにサラリーマンも増加した。そうして流れがよくなり、渋谷マークシティ、セルリアンタワーなどの大型商業施設の開業で大人が戻ってくる下地ができた」と、大西さんは説明する。「本来、渋谷は大人の街であった。だから、それが復活し、大人が戻ってきたと表現できる。大人を集客できて目立つ店が少なかっただけで、実は水面下にあったものが、やっと目に触れるようになってきた」と、 "オトナ化" を "オトナ回帰" と位置付ける大西さんの見解は、街の歴史をつぶさに見てきた渋谷人として説得力がある。

「かつて渋谷はすり鉢状という物理的な要因から商圏が狭く、渋谷は単なる通過駅になるのではないか」(大西さん)という商店街の危機感もあったが、現在では原宿、代官山、恵比寿という周囲の街とも連動する形で面としての広がりを見せ、商店街が本来持っているパワーを再確認しているという。その顕著な例として商店街の広告フラッグの需要が挙げられる。大西さんの情報では、最近、道玄坂の広告フラッグ(ストリートを網羅した場合、約1,000万円)を希望する企業が多く、ブランド力が上がっている証明とも言える。最後に大西さんは「街にはある意味で芸能人的なミーハーな人気も必要。渋谷には109もQ-FRONTもセンター街も必要で、そういった多くのヒダがいっぱいあることで、大人も若者も楽しめる渋谷になる。商店街が変われば、不景気の最中でも伸びていくことは可能だ」と付け加える。

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■渋谷の "オトナ化" をリードするBunkamuraの新たな戦略

東急本店に隣接してBunkamuraがオープンしたのは、今から13年前の1989年(平成元年)9 月3日。渋谷の "オトナ化" の原点とも言える複合文化施設は、今やすっかり渋谷の街に定着した。「オーチャードホール」「シアターコクーン」の開業で、それまで本格的な大型ホールが少なかった渋谷のインフラ度が一気に上がったほか、独自のセレクト感で話題を集める「ル・シネマ」の開業も渋谷ならではのミニ・シアター文化に大きく貢献、さらに東京国際映画祭の拠点としても活用され、渋谷の文化的なイメージ形成を牽引してきた。Bunkamura広報事務局の諸星さんによると「演目にもよるが、確かにBunkamuraで行う公演やイベントで、集客の核となっている層は30~40代。さらにその上の50~60代という成熟世代も相当多い。渋谷といっても東急本店との連動効果もあり、この界隈はぐんと年齢層が高い。成熟世代はゆっくり楽しめる空間を求めて東急本店、Bunkamuraに集まる」と話す。

そのBunkamuraが今春、大人のための会員組織「倶楽部B」を立ち上げ、4月から会員サービスを開始する。「Bunkamuraは13年目を迎え、東急本店のリニューアルと併せ、独自のサービスをを企画した」と諸星さんが説明する「倶楽部B」は、会員ひとり一人とパートナーシップを結び、独自のサービスを提供するもので、チケットの最優先予約からプレ&アフターコンサート、特別イベントの提案を軸に、1,500人の限定会員が"大人の倶楽部活動" を共有できるよう推進していくもの。入会金は50,000円、月会費は5,000円(いずれも税別)で、プラチナ製のオリジナル会員バッヂが発行される。「倶楽部B」の発足に先駆けた試みのひとつが、2月にオープンした「ワインサロン ドゥ マゴ パリ」。Bunkamura1階と地下1階に店を構えるカフェ&レストランの1階部分が夜の展開として、17 時から24時までワインサロンに変身。アフターシアターの余韻に酔える、大人のための空間が用意された。

Bunkamura
Bunkamura 文化村通り

■先取りする新興勢力の渋谷 "オトナ化" 路線

こうした渋谷の "オトナ化" を見越して渋谷に本拠を移した専門店もある。高級腕時計ロレックスの並行輸入販売店を展開する「エバンス」(本社=宇田川町)は2001年4月、公園通り交差点の銀行跡地に「エバンス渋谷店」を出店、同時に本社も青山から同地へ移転してきた。かつて同社は並行輸入の激安店を営み、行列のできる店として知名度は浸透していた。激安店から高級店へと転換したのは「並行輸入店が増えたことで他店との差別化をする必要が生まれた。ロレックスの並行輸入販売では日本で1番だが、さらに2番との差を大きくつけるために高級化路線を敷いた」(企画宣伝部・沢村さん)という理由から。入口に警備員が立つ「渋谷店」は、天然石を敷いた床にスーツ着用の販売員の接客する高級化路線を貫いている。同社はテレビCMや雑誌広告にはブラッド・ピットを起用し、以前の並行輸入販売店のイメージは全くない。

渋谷への出店にあたり、やはり同社内にも「渋谷=若年層」というイメージが根強くあった。しかし、同じ並びにある「シブヤ西武」の大人化リニューアルをはじめ、東急本店、パルコ、渋谷マークシティなど大型商業施設のシフトチェンジを見て、渋谷の "オトナ化" を確信したそうだ。沢村さんは「渋谷店には確かに若い人も多く来店するが、実年齢以上の選択眼を持っているという点から言えば、若くして消費について成熟した大人の目を持っている。渋谷に集まる若者は情報量が豊富でセンスがよく、実際の熟年世代より消費者として鍛錬されている面もあり、中途半端なものは受け付けない。それを含めてオトナ化しているのでは」と分析する。同店の主力客層は20代後半~30代の男女。長引く不景気の渦中にあっても、同社では売上が落ち込むことはなく、「店にいると不景気を感じない」という声もあるという。消費者としての "オトナ" を取り込みたい同社の戦略が、 "オトナ化" を推進する公園通り入り口への出店というロケーションとリンクして、成功に結びついたケースでもある。

エバンス
エバンス エバンス

エンタテインメント・ソフトのレンタル(ビデオ、DVD、CD)とCD販売で業界トップの「TSUTAYA」を全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブの子会社で、直営店を運営するのが渋谷ツタヤ(本社=神南)。同社が運営する日本最大級のエンタテインメント・パッケージ・ショップが1999年12月、「QFRONT」ビル地下2階から4階にオープンした「SHIBUYA TSUTAYA」である。渋谷駅前に全国でも前例のない規模の旗艦店を進出するにあたり、同社では開業の約3年前から渋谷プロジェクトチームを発足し、旗艦店のターゲットを明確にするための綿密な調査を行った。当時、渋谷プロジェクトチームのメンバーの一員として情報収集にあたった現商品販売企画室室長の菅沼さんによると、情報収集したデータを検証した結果「従来の渋谷が持っていた "学生マーケット" というイメージとは異なる "大人マーケット" があることを発見した」という。「商業施設の建設計画からオフィスビルが増えていくと見据え、渋谷は大人の街へ移行していくと判断。さらに実際にセンター街などで定点観測を行い、女性の通勤者が増えていることがわかった」と、菅沼さんは説明する。

プロジェクトチームが街頭で行ったのは、時間帯別世代通行調査である。インタビュー調査と並行して行った毎時間数分ごとに撮影した約1,800人の写真を分析し「大人に向けた店づくり」と判断したという。具体的には、センター街では「男子学生」が最も多かったが、シブヤ西武側では「1位=25~30代女性、2位=女子学生、3位=男子学生、4位=サラリーマン」という結果であった。つまり、平日は都内から通勤・通学で渋谷に通っている人口が圧倒的に多いということになる。こうした調査結果から「SHIBUYA TSUTAYA」では、大人をターゲットとした店づくりを推進した。

同店の会員数は153,000人(2002年1月末現在)。会員のボリュームゾーンは20歳~25歳代がピーク。平日最も混み合う時間帯が午後6時~7時というデータも、会社帰りのOLやビジネスマンが立ち寄る時間と合致している。「SHIBUYA TSUTAYA」はいくつかの点で特徴が表れている。

  1. メジャー大作を大量に入れない
  2. 1階DVDフロアでハードを購入する女性が多い (DVDはセルもレンタルも増えている)
  3. 渋谷ミニシアター系映画館と連動している。

ここから推測できるのが、渋谷では映画好きの女性がひとつの大人のマーケットをリードしている点。これは単館系シアターが多い渋谷ならではの傾向でもある。エンタテインメント分野で俯瞰するなら、渋谷には映画館だけでなく、レコード店、楽器店、コンサート専門ホールや数多くのライブハウスで開かれるライブまで含めた巨大な音楽マーケットが広がっているし、パルコ劇場やシアターコクーンなどで上演される "小劇場以上の人気舞台" など、豊富なエンタテインメント・コンテンツも溢れている。こういったカルチャー度の高さが渋谷の "オトナ化" の素地になっている。

渋谷ツタヤ カルチュア・コンビニエンス・クラブ

90年代後半、「渋谷は若者の通行量は多いが、実際の売上に結びつかない」「子供ばかり増えても客単価は上がらない」「イメージが悪くなり、銀座や新宿などとの都市間競争に負け、このまま地盤沈下するのでないかという危機感を覚える」とも指摘された。しかし、かつてのコギャルやチーマーもすでに社会人となり、ヤング・ミセスになりつつある。彼女たちが渋谷に愛着を感じ、選ぶファッションや好むカルチャーが変化したとしても、それはごく自然のこと。さらに翻ってみれば、渋谷生まれのムーブメントとして全国に発信された "渋カジ" も "ガングロ" も "コギャル文化"、当時のマーケット・リーダーたちのライフスタイルへの特別なこだわりが生んだものであった。渋谷にはもともと新たなカルチャーを生み出すパワーがあり、こだわりを持った若者が集まり、成熟してゆく街であったと言える。彼らがいま、仕掛ける側にまわったことで、渋谷は多層的なカルチャーが発信される都市として進化を遂げている。

スピード感にあふれる渋谷は、ファッション、映画、音楽など、エンタインメント・コンテンツを豊富に提供する街。数年前の "ビット・バレー" に象徴されるように、渋谷にはIT関連ベンチャー企業も多く集まり、そこで成功をおさめて次にインテリジェントビルに移転していくという図式ができあがっている。デジタル・カルチャーの集積は、起業家マインドに溢れた、若くして自立した社会人が多く集まる街・渋谷を浮き彫りにした。このような多面性を持つ渋谷の "オトナ化" とは、実は渋谷という街が若者も成熟世代も取り込み、"広い世代を満足させる街" としてのキャパシティが広がったとも解釈できる。大人市場にシフトするショップ、子供市場にシフトするショップのセグメント化が進む一方、年代や性別に関係なく、ライフスタイルで絞り込み、付加価値の高いサービスを提供するショップが登場したことによって、複合的に街のキャパシティが広がっている。かつて渋谷のマーケットで「お客さん」であった若者がベンチャー経営者となり、同世代を吸収する店舗を開発している例も少なくない。さらに彼らを仰ぎ見る下の世代がいま、若くして消費に長け、オトナの選択眼を持った消費者になりつつある。渋谷の "オトナ化" は、年齢や性別だけに囚われない部分にその独自性があり、高い選択眼を持った "違いのわかる" 高感度な消費者としての "オトナ化" と密接にリンクしながら、新たな進化を遂げようとしている。

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