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渋谷の一室から発信 「OLDNEWS/13F」最新号、世界で暮らす人々が寄稿

「OLDNEWS /13F」の編集部がある渋谷キャスト13階の部屋。「左右の腕を大きく広げ、身体を伴うものにしたかった」という同紙サイズは、通常の新聞と同じ「ブランケット版(406×545ミリメートル)」。

「OLDNEWS /13F」の編集部がある渋谷キャスト13階の部屋。「左右の腕を大きく広げ、身体を伴うものにしたかった」という同紙サイズは、通常の新聞と同じ「ブランケット版(406×545ミリメートル)」。

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 渋谷から世界で暮らす人々の「心の機微」を伝えるフリーペーパー「OLDNEWS/13F」春号が現在、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)や渋谷キャスト(渋谷1)など渋谷駅周辺の大型商業施設で無料配布されている。

同紙を手掛ける発行人・伊勢華子さん

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 「世界の生活者が記者となって『私的エポックメーキング』を伝える」というキャッチコピーを掲げる同紙は、世界で暮らす人々から寄稿されたエッセーを集めた季刊紙。昨年10月、渋谷在住の装幀(そうてい)家・緒方修一さんと作家・伊勢華子さんの2人で創刊し、今回の春号は2号目となる。創刊のきっかけについて、発行人である伊勢さんは「新型コロナ感染拡大など、外に出られない環境が続くなかで、友人や知人をはじめ世の中の人々が今、何をして何を思っているのだろう」と考える機会が増えたことが大きな理由だったという。

 「OLDNEWS」の紙名について、伊勢さんは「オールドは過去のものと捉えがちだが、記憶に近いもの。言葉を選んで話したり、何か手に取ったり選択したりすることも、全て過去の記憶と連動して新しいことが起きている。何をもって『新しい』というかは難しい」とし、「ニュースや情報ではないが、世界で暮らす一人一人が今気になっていること、SNSでは投稿できないような心の機微や小さな葛藤を、『私』を主語に語ってもらっている」という。さらに「13F」は、渋谷キャスト13階を拠点とする緒方さんと伊勢さんの仕事場兼編集部があるフロア階数で、渋谷にある同所を起点に世界とつながっていることを示す。600部を刷った創刊号は配布と同時にすぐに無くなり、「その反響の大きさに驚いた。追加で増刷したほど」と手応えを感じたという。

 今回の春号では、ニュージーランド・ワイヘケ島在住のワイングロワー、プラハ在住の画家、ベルリン在住のコンテンツ・プロデューサー、米レッドウッドシティ在住のメーカー勤務の人など、7人の書き手がエッセーを寄稿。ロックダウンで仕事がままならない中、家庭菜園に目覚めた話や、父との不仲がコロナをきっかけに少し変わった話、旅の仕方や楽しみ方の変化など、書き手それぞれのプライべートな話がつづられている。「毎日同じ時間にバス停に並んでいる人がいても、その人と話す機会はないと思う。まさに13Fはそんなメディアで、その人が家族にも話していないようなことを、ふと広げてあげるような。その記事を読む誰かの心を一瞬でも揺らしたり、触れて動いたりするものがあれば。今、飛行機や船には乗りにくいが、飛行機に乗らなくても分かち合えるものがある」(伊勢さん)と、一人一人のたわいのない話に価値を見いだす。

 書き手は、緒方さん、伊勢さんの人脈や交流の中から、さまざまな都市に暮らし、なるべく文章を書くことが仕事ではない人たちに依頼している。誤字脱字などの校正は行うが、なるべく文章には手を加えず、その書き手の人柄などが出るように意識して編集を進めているという。「創刊号を見て、私にも書かせてほしい」という声も意外に多く、「なるべく多くの人たちに言葉を発する機会を持ってもらいたい。席は空けて待っている」と呼び掛ける。

 主な配布場所は、渋谷キャスト(GFエントランス、co-lab、オーレ)や渋谷ヒカリエ8階、渋谷スクランブルスクエア東棟15階(SHIBUYA QWS)など。配布は無くなり次第、終了。

 好評だった創刊号(増刷版)は、特設サイトで1部1,000円(送料別)で販売中。次号の配布は4月中旬ごろを予定する。

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