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隈研吾さんデザインの公衆トイレ、鍋島松濤公園に 小屋と小道で「トイレの村」

「トイレの機能だけでなく、小道を散策するなどトータルの体験を味わってほしい」と話す隈研吾さん

「トイレの機能だけでなく、小道を散策するなどトータルの体験を味わってほしい」と話す隈研吾さん

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 建築家・隈研吾さんがデザインした渋谷・松濤の「鍋島松濤公園」(渋谷区松濤2)内の公衆トイレが6月24日、供用を開始した。

5つの小屋と小道を作り集落のような「トイレの村」に仕上げた

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 日本財団(港区)が展開する、建築家らが区内の公衆トイレ17カ所をリデザインする「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環。「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「危険」などのイメージから入りづらい状況がある公衆トイレを、デザイン・クリエーティブの力を活用し「誰もが快適に使用できる」ようにすることを目指し昨年8月から取り組んでおり、同所で9カ所目となる。

 隈さんが公衆トイレのデザインを手掛けるのは2カ所目。最初に手掛けたのはバブル経済が弾け1990(平成2)年に東京での仕事が全て無くなったなか、依頼を受けた高知・梼原(ゆすはら)町でのこと。同町は「林業の町」であることから木を使ったという。現在では木を使った建築を多く手掛ける隈さんだが、同所が「木を使った建築の設計が始まった、僕の人生にとっても大きな転機だった」こともあり、今回のプロジェクトにも参画を決めた。

 同プロジェクトで改修している公衆トイレの中でも、池や水車があることや最も「緑が深かった」ことから同所を選んだという隈さん。「公衆トイレは地域・日常に近い建築であるものの、デザインの力が関与してこなかった」なか、木を使い「(公園の)緑に溶け込むようなトイレを作ったら公衆トイレのイメージを一新できるのでは」と考えたという。「トイレを通して日本の木の文化を世界に発信したい。森や自然、環境を大事にしようという日本文化、今で言うSDGsの要素を発信できたら」

 タイトルは「森のコミチ」。低層の山になっている地形に、5つの小屋(個室)とそれらをつなぐ動線となる小道(=森のコミチ)を作り、集落のような「トイレの村」に仕上げた。小屋の外壁には吉野杉のルーバーを鉄骨で付けるほか、各小屋内にはメタセコイア、ケヤキ、桜などの丸太を装飾し、天井は異なる濃淡の緑をあしらう。小道はウッドチップとコンクリートを混ぜて仕上げた。外壁のルーバーは、密度や鉄骨が目立たないようにルーバーの角度を調整するなどこだわったという。夜間には小道に設置したスポットライトが点灯する。

 各小屋は、小便器=「しかく小屋」(1.84平方メートル)、手すり付き小便器=「さんかく小屋」(2.14平方メートル)、ベビーベッドやオストメイト用設備、誰でもトイレなども備えるユニバーサルトイレ=「まんまる小屋」(6.12平方メートル)、幼児用トイレ=「のびのび小屋」(3.24平方メートル)など名称と特徴を持たせている。一般トイレ=「すっきり小屋」(3.61平方メートル)は、渋谷の街を意識しフィッティングボードも備えるほか、鏡の大きさ、照明にもこだわったという。

 各小屋に特徴を持たせたのは、「多様性の時代というのも象徴している」という隈さん。「いろいろな人がいて、いろいろな使い方ができる。そのうち、好みの個室『私のトイレ』のようなものができるのでは」と期待を込め、「トイレの機能だけでなく、小道を散策し自然を感じるなどトータルの体験を味わってほしい」と話す。

 同プロジェクトのトイレでは、日本財団と区、一般財団法人渋谷区観光協会が協定を結び維持・管理を行っている(2023年まで)。清掃は民間企業に委託し、従来の1日1回(場所によっては2回)だったのを2~3回に増やすなどしている。ファッションデザイナーのNIGOさんが監修したジャンプスーツを清掃員のユニホームに採用している。

 今後は、7月15日=恵比寿駅西口公衆トイレ(恵比寿南1、佐藤可士和さん)、同16日=代々木八幡公衆トイレ(代々木5、伊藤豊雄さん)、同21日=七号通り公園トイレ(幡ヶ谷2、佐藤カズーさん)、8月見込み=笹塚緑道公衆トイレ(笹塚1、小林純子さん)。残る4カ所は今冬(12月~2022年2月ごろ)完成する予定。

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