特集

109-2に本格的ジュニア向け化粧品店が登場
低年齢化するローティーンの「コスメ感覚」事情

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■109-2に、本格的なジュニア向けコスメショップ

3月20日、渋谷109-2の7階に、本格的なジュニア向け化粧品専門店「Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー)」がオープンした。初日から、雑誌などでオープンを知ったジュニア世代が広さ3坪の同店に駆け付けた。この店は、バンダイが、ローティーン世代の絶大な支持を集めるナルミヤ・インターナショナルの人気アパレルブランド「MEZZO PIANO(メゾピアノ)」とコラボレーションした化粧品「MEZZO PIANO COSME(メゾピアノコスメ)」シリーズの直営第1号店だ。渋谷店に続き翌3月21日には鶴屋百貨店(熊本市)に2号店がオープン、さらに4月3日は丸井今井札幌本店(札幌市)をオープンさせる予定で、春休み期間を利用した攻勢を図る。バンダイでは、2005年3月末までに直営店での売り上げ5億円を見込んでいる。

同ブランドのコア・ターゲットは小学校高学年~中学生の女子を中心とする層だ。最近では、小学生を中心とする女の子の嗜好は分散化し、早い時期から洋服、アクセサリー、コスメに興味をもつなどおしゃれやファッションに対する関心が高くなっており、中には「化粧しないと、学校に行けない」という女の子もいるという。バンダイ広報の中西さんは「今、おもちゃ離れの低年齢化が進んでいる」と話す。つまり、早めにおもちゃを「卒業する」ジュニアを攻略するための商材のひとつがコスメでもあるのだ。さらに、同コスメシリーズは、これまでバンダイがあまり強くなかった小学校中学年~中学生のターゲットとの接点をも生み出す戦略商品でもある。

Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー) Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー)

ショップでは、「MEZZO PIANO COSME」全9種60アイテムを取り揃え、商品を自由に試用できるほか、メイクスタッフによる本格的なメイクアドバイスを受けることもできるのが特徴。商品は、「MEZZO PIANO」ブランドのイメージを踏襲したデザインで、お菓子をモチーフに細部までこだわった仕様になっている。中西さんによれば、開店後の売れ筋は「オードトワレ」(メーカー希望小売価格5,250円)やアイブロウ(2色/メーカー希望小売価格1,050円)で、平均客単価は約5,000円という。人気のカラーはオーソドックスなピンク系。リップカラー、チーク、アイブロウ、アイカラー、パウダーなどは、すべて石鹸で落とせる仕様になっており、ジュニア世代に合った処方が工夫されている。中西さんによると「オトナは隠す化粧なので油分が強いため石鹸では落ちないが、ジュニア世代は、いわゆる薄化粧のため、石鹸で十分に落ちる」という。ちなみに、同シリーズにはクレンジングが存在しない。

今、オトナのコスメでは「目力」がテーマで、目元関連商品の売り上げの伸びが大きいが、同シリーズでは、彼女たちの年齢と安全性を考えてビューラーやつけまつげをシリーズに含んでいない。オトナ仕様といいながらも、化粧に対する十分な知識を持たない世代を対象とするだけにメーカー側にも微細な配慮が求められる。バンダイでは今後、ナルミヤ・インターナショナルが展開する他のブランドとのコラボレーションも図る予定で、ファッションを入り口にしたローティーン世代のコスメ市場開拓に向けて、先陣を切る。

バンダイ
Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー) Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー) Cosmetic Parlor(コスメティックパーラー)

■ローティーンのコスメ意識はもはやオトナ感覚?

バンダイは昨年9月、ティーン誌が主催するイベント会場で10~15歳の女子(286人)を対象に独自の調査を行った。「どんな時にメイクをするか?」という問いに対して、「休日」が最も多く61%、以下「たまに」(31%)、「放課後」(26%)、「学校にもしていく」(16%)と87%がメイクをしている結果となった。ローティーン世代のコスメ意識が非常に高いことが伺える。

それでは、彼女たちはどんなアイテムを使っているのだろうか?新潮社が発行するローティーン向け誌「nicola(ニコラ)」が主催する「ニコラネット」のモニターユーザーを対象に各種マーケティング事業を手掛ける「GIRLS・Lab(ガールズ・ラボ)」では、昨年「自分専用に持っているメイクグッズ」についてのアンケート調査を行った。それによると「リップクリーム、リップグロス」(93.9%)、「マニキュア」(83.4%)が非常に高い所有率を示した。次いで多いのが「化粧水・乳液」(55.6%)で、早くも普段の肌の手入れについても意識していることが伺える。さらに「コロン・香水」(49.3%)、「マスカラ」(49.2%)などが上位を占める。担当の新井さんは「ほとんどがコロンを使っているが、大人の感じが漂う香水を使ってみたいと思っている女の子は多いはず」と話す。

さらに、「自由回答」の欄にも、「ビューラー」「コンシーラー」などの文字が躍り、例えば「コンシーラー、オイルコントロールパウダー、フェイスパウダー」(13歳、神奈川県)を挙げる女の子もいるなど、ビギナーとは思えない関心の高さを示している。「GIRLS・Lab」では、「お母さんの持っているメイクグッズをそっと拝借するのではなく、自分のメイクグッズをずらっと並べ、置き鏡の前に向かう図をイメージさせる」と、分析を加えている。

GIRLS・Lab

こうした背景には、ローティーン以下のキッズ・コスメ市場(3~9歳)の盛り上がりも反映している。ある調査によると、年齢別の「化粧経験」は4歳で7割を超え、5歳以上では8割を占めているという。つまり、現在のローティーン向けのコスメ市場は、その前段階となるキッズ・コスメ市場と密接に連動していると言えそうだ。先のバンダイでも1998年から3~6歳向けの化粧品シリーズ「ジュエルドロップ」を展開しており、「MEZZO PIANO COSME」ブランドの投入は、その先の受け皿づくりとしての一面も垣間見える。バンダイ広報の中西さんは「ナルミヤさんとのコラボブランドの直営店舗を通じて、これまで接点少なかったローティーン層とコミュニケーションを図り、この世代のニーズを探るという、アンテナショップの役割も担っている」と話しており、メーカーとしても新たな展開に期待を寄せている。

GIRLS・Lab(ガールズ・ラボ)

■母親の価値観が影響するローティーン市場の今後

小学校高学年~中学生にあたる今のローティーン世代が生まれたのは1988年~1994年。つまり、彼女たちの両親は今40歳前後のバブル世代が中心であることから、彼女たちは「バブルジュニア」とも呼ばれている。母親であるバブル世代の女性は好景気を背景にモノにあふれた青春次代を過ごし、ファッションにも相応のこだわりを持っている。バブルジュニアのファッション市場には、こうした母親層の価値観が大きく影響しているのだ。

全体的にはコンサバでありながら、さりげない部分で差別化を図るファッションセンスは、その子供達にも受け継がれている。ジュニア・ファッションであっても、他とどこかが違う「こだわり」を求めるのは母親と変わらない。少し以前まで、ヤングとキッズに二分されていたファッション売り場は、ナルミヤ・インターナショナルの出現により、その中間に「ローティーン(=ジュニア)」という新たなジャンルを出現させた。中でも「渋谷109-2はジュニア・ファッションのメッカと言われ、ここに来るときはとびきりのおしゃれをして来る女の子が多い」(バンダイ広報の中西さん)という。

109-2
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ナルミヤの主要ブランドが集積する「ナルミヤ・ジュニアシティ」も今や全国で展開するなど、この2~3年でティーンズ・ファッション市場は着実にその裾野を広げてきた。そして今年、ファッションと呼応しながら、ティーンズ・コスメ市場が本格的に稼働し始める。これまでは、このカテゴリーの商品の領域が曖昧で、コンビニコスメやドラッグ商品などが入り乱れており、正確な市場規模は把握できていない状態だが、「今後のマーケット規模は確実に拡大基調」と関係者は口を揃える。2003年7月、資生堂が「自己演出願望の強い10代後半~20代前半の女性」をターゲットに発売した「マジョリカ・マジョルカ」も、呪文のようなネーミングと、一瞬にして変身出来る演出効果を持ったなアイテムが揃っており、ローティーンの利用者も多い。 「GIRLS・Lab」では、「ローティーンは、その人口だけを見るとそれほど大きな市場とは言えないが、比較的好みの傾向がはっきりと現れやすい世代。一方、好みにバラツキがあり、ニッチが多い現在のF1層(20~34歳女性)と比較すると、むしろ「マス」として捉えやすいのは現在のローティーン世代」と、世代の特徴を分析している。大手各社が、ファッションを突破口に彼女たちを狙い始めた背景には、F1予備軍に対する早めのアプローチにより優位性を確保したいという事情がありそうだ。こう考えると、海外有名ブランドの中にも、この世代をはっきりと意識した商品が生まれても不思議ではない。彼女たちの動向は、次代のマーケットをどのように動かしていくのだろうか?

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