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野村恭彦さんが新会社「Slow Innovation」 各地で「つなげる30人」推進

「市民協働イノベーションエコシステム」の創出に意欲を見せる野村恭彦さん(左は亀をモチーフにした新会社のロゴ)

「市民協働イノベーションエコシステム」の創出に意欲を見せる野村恭彦さん(左は亀をモチーフにした新会社のロゴ)

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 「渋谷をつなげる30人」などを手掛けてきたフューチャーセッションズ(渋谷区渋谷3)の野村恭彦さんが10月1日、自ら事業分割するかたちで、「市民協働イノベーションエコシステム」の創出を事業領域とする新会社「Slow Innovation(スローイノベーション)」(宇田川町)を設立した。

 企業・行政・NGOの3つのセクターの対話と協力を引き出すファシリテーションにより、社会課題解決型のイノベーションを起こす支援、組織づくりの支援を手掛けてきたフューチャーセッションズ。2016(平成28)年、渋谷区に関係する3つのセクター(企業=20人、NPOや商店街の人など=8人、行政=2人)から成るまちづくりプログラム「渋谷をつなげる30人(以下、渋30)」が始まった。

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 今年度で4期目を迎えた「渋30」。当初は「東北の復興で起きていたような、クロスセクターが協働して一緒にまちをつくる関係が渋谷のような街でもつくれないだろうかと思って始めた」ことが背景にあったという野村さん。「最初はクロスセクターならではのアイデアから生まれるアウトプットに注目していたが、今では、セクターを超えて、どうやって助け合えるか、相手の目的をどう理解して、どうお互いを生かし合うのかを気付かせるのが僕らの仕事だと感じている」という。

 「つなげる30人」のプロジェクトが渋谷以外にも広がりを見せる中、野村さんは「地域にもっと深く入っていくことで、今までに起こせなかったブレークスルーが起こせるのでは」と事業分割を決めた。「ファストイノベーションという素早くもうかるイノベーションに対し、スローイノベーションで、関係をじっくりつくっていき、その地域でしか起きないようなイノベーションを起こしていく」のが新会社の基本方針。当初は野村さんを含め5人のメンバーがコミットする。

 フューチャーセッションズでは、企業に対するサポートも行っているが、「それだけでは最終的に社会を変えられない。企業を変えるには市民や消費者や地域が変わらなければ」という思いから、イノベーションエコシステムに代わる「市民協働のイノベーションエコシステム」の創出に意欲を見せる。「地域の中で、何に困っていて、これからの可能性についてみんなで合意して、自分たちのまちのプライオリティーを変えていくことを市民サイドができるようになり、そこで企業が入ると、全くユニークなイノベーションを起こす可能性がある」と確信する。

 さらに、これまでのマスや多数決が「勝つ」社会のあり方に限界を感じる野村さんは「地域を限定して、その中だけで成功して、その成功モデルを全国へ地域単位で広げていく。社会起業家のスケールアウトのメカニズムを取り入れることで、行政と企業がWin-Winの関係をローカルの中でつくることでマスを越える」と話す。

 「メーカーは街で一つの課題を見つけると、すぐに解きにいく。それはファストイノベーション。(スローイノベーションでは)地域の人と一緒に、ゼロから、『ここでこんなことができたらいい』など、一つの課題だけではなく、例えばITの課題と交通の問題、観光の問題、シニアの問題をつなげていきながら、そのまちならではの解決策をつくっていければ」とも。新会社では今後、持続可能な観光(Slow Tourism)、モビリティー(Slow Mobility)、エネルギー(Slow Energy)などのアジェンダも立てていく。

 「気仙沼をつなげる30人」(9月1日~)、「ナゴヤをつなげる30人」(9月10日~)がすでに立ち上がっているほか、10月29日には「京都をつなげる30人」もスタート。キックオフイベントして「Slow Innovation Day」を京都(11月16日)、渋谷(12月1日)で予定する。

 「市民がイノベーションの主体になることが大事。市民が力を持ち、行政が市民の力を引き出せるようになり、企業の力も引き出せるようになると、コラボレーションで価値を創り出し、そこにマーケットも生まれ、仕事も生まれて、本当の意味で地方創生になるのでは」

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