特集

大型店の登場でメジャー化の兆し?
渋谷「ダーツバー」ブームの行方

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■ダーツの歴史と「エレクトリックダーツ」ブームの背景

ダーツは6世紀頃、イギリスの兵士が切り株や酒樽に槍や矢を投げて遊んだことが起源とされている。それを見た酒場が客寄せのために店内で酒樽に向けて矢を投げさせ、次第に定着していく。現在のスタイルに近い形ができあがったのは、約600年前とされている。イギリスのパブを発祥の地とすることから、イギリスでは紳士のインドアスポーツとして流行した。

一般に使われる「ダーツ」という名称はスポーツ全般を表すと同時にプレイヤーが投げる矢そのものを意味する。英国式のダーツボードは麻の繊維を束ね、スチールバンドで強引に固定した「ブリッスルボード」や紙を巻き上げて作った「ペーパーボード」、その表面を布で化粧した「フロックボード」などを用いる。ダーツボードの表面には20本の放射線状に伸びた直線と2本ずつ3組6本の同心円によって区切られ、そのまわりに1~20までの数字が記されており、合計83ヶ所のスペースによって構成されている。〈点数の数え方〉は、ダーツの周りの数字がその列の得点となる。スペースにはアウトボード(ノースコア=0点)、シングル(20点)、ダブル(点数の倍)、トリプル(点数の3倍)、シングルブル(25点)、ダブルブル(50点)などがあり、プレイヤーは様々な点数にダーツを投げ入れる。また、ダーツボードの表面からの距離など特定の規定があるのが特徴。

一方、ダーツ発祥の国以上に発展したのがアメリカである。今日のダーツ人気は“第2の母国”とでも言うべきアメリカを起源としている。英国から米国に渡ったダーツは独自の進化を遂げる。コンピュータの導入によってダーツは革命的に変貌したのである。1985年頃、米国メダリスト社が開発した「エレクトリックダーツ」は、アメリカに渡った従来のダーツをより使いやすく改良したもので、危険のないようにソフトチップ(先が針でなく、プラスチックを使用)を用い、点数は自動計算して表示されるゲーム感覚あふれるマシーン。コインを入れてゲームを開始し、コンピュータが点数の計算や得点の判断を行い、点数はモニターに表示されところなどはアメリカらしく、ロディオマシーンやピンボールに近い感覚である。パブと密接につながり、また紳士のスポーツとして発展した英国式のスタンダードのダーツを「ハードダーツ」と呼び、対するアメリカ生まれの「エレクトリックダーツ」は「アメリカンダーツ」「ソフトダーツ」とも呼称されている。「エレクトリックダーツ」のプレイヤー人口は世界で2,300万人とされ、巨大なマーケットを築いている。

現在、世界のシェアを独占しているのは前述した米国メダリスト社のマシーンである。日本でも同社のマシーンのシェアが特化しており、“ハードの普及ありき”という文脈で進めるなら、米国「メダリスト・マーケティング・コーポレーション」日本総代理店「メダリスト・ジャパン」(目黒区)が日本における「エレクトリックダーツ」の影の“火付け役”と言えよう。特筆すべき点は、同社が輸入したメダリスト社の「ダートスター・スペクトラム(以下、ストクトラム)」の精度が前作から飛躍的にアップしたマシーンであったことが挙げられる。それが2000年に日本に上陸し、東京のバーやパブを中心に導入されていったのである。同社の前川さんは「ブームに映るかもしれないが、エレクトリックダーツの協会もまだ設立されていないし、誰もが知っているスタープレイヤーも登場していない。ソフトダーツは今後、さらに広まる可能性を秘めている」と前置きし、エレクトリックダーツの普及ポイントを挙げる。

〈エレクトリックダーツの普及ポイント〉
  1. 面倒くさい計算をコンピュータがかわりにやってくれることから初心者でも気軽に楽しめる。
  2. ソフトチップを使用したことで安全性が高まった。
  3. コインを入れてゲームを開始することから、バーだけでなく、ビリヤード場、ボーリング場、アミューズメント施設が設置するようになり、プレイヤーが上達を目指して練習を繰り返すことで収益がアップするのでさらに店舗が積極的に導入するようになった。
  4. 的を射る爽快感がストレス解消につながり、リピーターが増えている。
  5. 若者たちのコミュニケーションツールとして機能している。見知らぬ者同士が教えたり教えられたり、一緒にゲームをしたりするなど、ダーツがツールになっている。
メダリスト・ジャパン
ダーツ・イメージ

「エレクトリックダーツ(スペクトラム)」の〈基本操作〉は、(1)コイン投入 (2)メイン・メニュー・スクリーンで「GAME SELECT(ゲームセレクト)/PLAYER CHANGE(プレイヤー・チェンジ)」を押して、希望するゲームカテゴリーにカーソルを移動 (3)いずれかのプレイヤー・ボタン〔1 PLAYER~4 PLAYER〕を押すと、希望するゲームの載ったメニューが表示される (4)「GAME SELECT/PLAYER CHANGE」を押して、希望するゲームにカーソルを移動 (5)プレイする人数に相当するプレイヤー・ボタンを押し、ゲーム・スタート。

〈点数の数え方〉はハードダーツと基本的に変わりないが、一番外側の「ダブル・リング」といい各々の外側に表示されている数字の2倍の得点、そのさらに内側にある「トリプル・リング」は3倍の得点となる。真中の「Bull(ブル)」はインナーとアウターに分かれていて、インナー(内側)50点、アウター(外側)50点(ゲーム選択によって25点)となっている。〈基本ルール〉は(1)コイン・フリップで投げる順番を決定 (2)それぞれのプレイヤーは各ラウンドで3ダーツ投げる。刺さらない場合でも3ダーツ投げ終えたらプレイヤー・チェンジ (3)3ダーツ投げ終えたらダーツを抜く (4)すべてのプレイヤーが3ダーツ投げ終えたら、そのラウンドは終了。次のラウンドに移る (5)規定ラウンド内で競う。ゲームによってラウンドは異なる。代表的なゲームは「COUNT-UP(カウント・アップ)」「301」「CRICKET(クリケット)」などで、全部で23種類のゲームが用意されている。

ソフトチップダーツ総合検索サイト「ダーツなび」を運営する「光本」(本社:港区)の深谷さんは2000年にエレクトリックダーツが日本に上陸した背景を次のように語る。「独占シェアを誇るメダリスト社の日本総代理店メダリスト・ジャパンが敷いたディーラー制度が機能しはじめたのが2000年~2001年。ソフトチップはゲームとしてとっかかりやすいこと、また女性でもトライしやすいことから一気に普及していったようだ。さらに昨年、大手が大箱を出店したことで、一気に知名度がアップした。しかし、まだブーム直前、といった感じだろう」。

ダーツなび

ゲームやパーティ用品として小型のダーツを販売している「東急ハンズ渋谷店」では、スコアがデジタル表示されるダーツゲームと矢が売れているという。主力は「LEDダーツゲーム」(9,800円)。サイズは幅45.5cm、高さ52cm、厚さ3.5cm。同マシーンの特徴は、1~4人まで本格的なダーツゲームが楽しめること、初心者向けからプロ用競技まで9種・70通りのゲームが楽しめること、13種のサウンドが鳴ることなどがある。20~30代の若い女性に人気とのこと。東急ハンズの「通販くらぶ」ではすでに「LEDダーツゲーム」(9,8は売り切れ状態。さらに「エレクトリカルダーツ」(19,000円)、「キャビネット型エレクトロダーツセット」(26,000円)も販売中。パーティで活躍するほかホームバーのインテリアとしても利用できるところが人気のポイントだそうだ。

東急ハンズ 東急ハンズ「通販くらぶ」

■渋谷から広がったエレクトリック・ダーツ

現在、国内で最も普及している米国メダリスト社のエレクトリックダーツ・マシーン「スペクトラム」を渋谷はもとより都内で最初に設置したのが、アメリカンムードがあふれるレストラン・バー「アミューズメント」(桜丘)。1978年の開店以来、レストラン・バーの小道具のひとつとして様々なゲームを設置し、親しまれてきた。店長の寒河江さんによると、2台あるうちの1台で、2000年に導入したマシーンが“日本2号機”であったという。同店では、マシーンは1台のみ設置していたが、台待ち状態が続くようになったのでもう1台を追加したという。「2000年当時、そのマシーンを取り扱っていた人たちから『今度のマシーンは数段おもしろい』と聞き、導入に至った。実際にプレイしてみると、投げた瞬間に本物感があふれ、オモチャっぽさがなく、好感だった」という。かつて通ったバーでチェスやバックギャモン、ハードダーツなどのゲームで楽しんだ経験を持つ寒河江さんは「当店はダーツバーではないが、個人的にダーツが好きだったことと、友人グループや上司と部下など一緒に店に来られた方同士がコミュニケーションを取る際に、ダーツのような遊びがあると親密になりやすいと考えた」と、設置の意図を語る。

飲食業界の経験が長い寒河江さんは、ダーツが日本でもバーを中心に親しまれてきた遊びであることを示唆する。「現在の50~60代の方は、ビリヤードやハードダーツのあるバーでよく遊んでいた年代。当店にダーツがあることを知っている年配の方が若い人を連れて来ることが多い。また、年配の方が若い人の中に混じっても年代を越えて遊べる数少ないゲームでもある」。ダーツが再び脚光を浴びている要因を寒河江さんは次のようにまとめる。(1)目立ちはしないが、ダーツのおもしろさを伝えて来たコアなプレイヤーの存在が大きい。(2)勝負にこだわり、力が入りすぎる男性よりも、教えた通りに素直に投げる女性の方が上達しやすいいこともあり、また手軽にできることもあって女性ファンが増えた。(3)矢の羽根を好きなタイプのものに変えて楽めるなど、小道具の魅力がある。(4)他に100円で遊べるゲームはなく、料金の魅力は大きい。

寒河江さんは最後に「これ以上台数を増やすと、レストラン・バーでなくなるので当店ではマシーンの台数を増やす予定はない。ダーツ人気にあやかり、ダーツに頼って飲食がきちんとしない店が増えることは業界にとって決していいことではない」と戒める。

アミューズメント/TEL 03-3464-7971
アミューズメント アミューズメント

2台目のエレクトリックダーツ・マシーンを設置した2001年秋に、店名の前に“ダーツパブ”のショルダーをつけたのが「バックヤード」(東)。マンションの奥に佇む穴場的な存在である。店内には顧客の“マイ・ダーツ”を預かるコーナーが設けてあり、人気ぶりが伺える。同店を運営する「トフィーノ」代表の太田さんはマシーン導入のきっかけを「ダーツで売ろうという意図はなかったが、おもしろそうだったので設置した。その後、ダーツはじわじわと脚光を浴びるようになった」と語る。昨今のダーツブームについて「ブームの兆しはあるが、文化として定着するか否かは今年が正念場かもしれない。ひょっとしたら今年がピークかもしれない。だからこそ昨年相次いで誕生した大型の専門店の動向に注目している。当店はあくまでも“バー+ダーツ”のニーズを追及していく」と話す。レストランやバーなどの飲食店にとって、当たり前のことだがメインの売上はあくまでも食事とアルコール。ダーツがメインになれば売上の構造は大きく変化する。フロア面積にもよるが、ダーツの台数と飲食の売上の相関関係は複雑で、オーナーの手腕の見せ所とも言えそうだ。

バックヤード

渋谷エリアでは2000~2002年の3年間に約20店舗がエレクトリックダーツを導入している。その多くは1~2台という設置台数。ほとんどの業態がバーだが、「KITSUNE」(東)、「Xanadu(ザナドゥ)」(道玄坂)、「Fure」(渋谷)などクラブ系の店でも設置されるケースが増えてきた。中でも「Xanadu」は3台のマシーンを備え、木・金・土・祝前日の22時以降はクラブとなるためダーツの使用はできないが、それ以外はゆっくりダーツを楽しむことができる。

Xanadu

2002年末までにダーツを導入した店を俯瞰すると、(1)バー (2)レストラン (3)クラブ (4)クラブ+バー+レストランの融合飲食施設-という分類が浮かび上がってくる。共通点は深夜営業であること、密室度が高く、照明を落とした店舗が多いこと、アルコールを供する大人のトレンドスポットであることなどが挙げられる。こういった店にひと足先に最新のダーツが登場したのは、競合店との差別化と大人のコミュニケーションツールが求められていたことの証明。友達グループや上司部下、あるいは初対面の異性が気軽にダーツゲームに参加し、親しくなるチャンスが増えることは、各店舗にとってリピート率の向上にも貢献している。

バックヤード バックヤード

■大型専門店「ダーツバー」の登場

2002年には道玄坂、宇田川町を中心にエレクトリックダーツを擁した大型専門店が登場し、ダーツは一気に認知されるようになる。2002年にオープンした施設からは(1)スポーツバーやスポーツカフェの進化 (2)ダーツに絞ったアミューズメント施設の誕生-この二つの流れが見えてくる。大型専門店の特徴はスポーツテイストとアミューズメントテイストに特化していることにある。

2002年4月、道玄坂I'mビル5階にオープンしたエンターテイメント空間「Bee SHIBUYA」は、新しい形の“大人の遊び場”として、セガグループの「ヒットメーカー」と「セガアミューズメント」が共同事業として運営する施設。エレクトリックダーツ(11台)を中心に、酒や食事もとれるというアメリカンナイトクラブ風な作りとなっている。「セガ」AM事業本部施設開発事業部運営部プロモーション課広報担当の八山さんはオープンのきっかけを「セガ社内やグループ会社にもダーツ好きの社員が多くいて、ダーツバーでよく遊んでいた。そこで、現在のフロアのリニューアル計画があがった際にダーツをメインにした施設のプランが現実的になった」と説明する。従来、ダーツは深夜営業のバーを主体に展開されていたが、同店の営業時間は午後1時~午前5時。

同店スタッフの塩村さんは「通常のダーツバーは遊び慣れた方が多いが、当店は幅広い層に使ってもらえるよう務めている。また、渋谷に遊びに来る人もこうした空間を求めていたのでは」と話す。平日は20代後半~30代が中心で、仕事帰りのサラリーマンが仲間とともに訪れる光景がよく見られるという。土・日は20代前半の顧客が多く、台待ち状態になっている。塩村さんは「混み合う土・日にはスタッフが見知らぬグループ同士でゲームをするようセッティングするほか、常連グループと初心者グループでゲームをしてもらうよう勧めるなど、ダーツを通したコミュニケーションを活発に促している」と、ピーク時のポイントを語る。「特に女性の方にダーツを教える場合、投げ方が中心になるので、まさに手取り足取りといった状態で、自然に話しができるので、すぐに距離が縮まり、仲良くなれる」。

店には数多くのダーツが陳列されており、販売も行われている。ダーツはとにかくデザインが豊富で、見ているだけで楽しめるのも特徴。ダーツの種類は1,500円の初心者向けから12,000円の高級クラスまでと幅広くラインナップされており、自分の実力と見合わせて購入することができる。同店で最も売れているのは5,000円のダーツ。後部につける羽だけの販売も行っているので、カスタマイズも自由自在。「ダーツを始めると、マイ・ダーツに凝りたくなるのが心情。自分のダーツを持つと、またゲームをしたくなる」(塩村さん)と、プレイヤーの心理をつかんでいる。マイ・ダーツの購入者は初心者から常連まで。「男女問わず予想以上に多く、カッコよさの際立つフライト(羽根)を変えたり、カラーを変えるのが人気」とのこと。

Bee SHIBUYA
Bee SHIBUYA Bee SHIBUYA Bee SHIBUYA Bee SHIBUYA

2002年5月、道玄坂にオープンしたのが「アメリカンダーツカフェSoul(s)」(ソウルズ)。広い店内に7台のマシーンが設置。VIPルームを設けるなど設備面で工夫を凝らす一方、プレイヤーのランクを表す顔写真を店内に貼り出し、また規定の点数に達した利用者にダーツをプレゼントするなどソフト面でも意欲的に展開している。店長の国本さん自身、エレクトリックダーツが日本に上陸した直後、マシーンを導入した六本木のバーでよく遊んでいたという。渦中にいた国本さんはこの3年間を振り返り「2000~2001年にかけて、いち早くダーツマシーンを取り入れたショットバーやカフェから徐々に普及し、やがてダーツをメインにした飲食店が登場した」と業界の流れをまとめる。「当初は逆ピラミッド型、つまりダーツ人口の底辺は薄かった。要因としては、深夜営業のダーツバーは一般客にとって入りづらく、またほとんどが小さな店であったので、多くの客を集客できなかった。さらにそういった店には上手なプレイヤーが必ずいて、初心者にとってプレイをするには勇気が必要だった。しかし、店舗が増えたことで今は底辺が広がりつつある」。

国本さんはダーツをもとにしたテリトリーや“我が店意識”、プレイヤー同士の交流に着目する。それがダーツ人口の底辺を広げつつある要因でもあるという。国本さんが挙げるポイントは以下の通り。(1)ダーツは店ごとのつながりが深いのが特徴。六本木で遊んでいる人が交流のために渋谷に来ることもあれば、またその逆もある。理由は半年前にダーツを始めた人でもメキメキ上達し、やがて他店のプレイヤーともプレイしてみたいと願うから。テリトリーを広げていく際に顔見知りのプレイヤーや店が増え、交流が深まる。(2)ダーツ・トーナメントが開かれる際に店が大会の告知をし、まとめて大会に連れて行くなど全国的な交流が活発になってきた。店舗が吸引役を果たしている。(3)マイ・ダーツを3本持参していけば、どの店でもプレイできるという身軽さ、柔軟さがさらに交流を促す要因にもなっている。

同店でもダーツの販売を行っているほか、「マイ・ダーツ」を預けるコーナーがあり、受付で自分の番号を言えば「マイ・ダーツ」を手渡してもらえるシステムが浸透している。ダーツの売れ筋については「上手なプレイヤーが使っているものが流行る傾向にある」とのこと。国本さんは最後に「渋谷にも当店のようにダーツメインの店が何軒か登場したが、まだブームの手前だと思う」と発展途上であることを強調する。「今後は他店との交流ゲームで一堂に会する必要がなくなるかもしれない。それは中継システムの確立。離れた場所でディスプレイを見ながら一緒にゲームを楽しむことが可能になるかもしれない」と未来を予測する。

アメリカンダーツカフェSoul(s)
アメリカンダーツカフェSoul(s) アメリカンダーツカフェSoul(s)

2002年12月14日、宇田川町にグランドオープンしたダーツバーラウンジ「Bane BAGUS(バネ バグ-ス)」はレストラン・バーと最新鋭ダーツとが融合した都内最大級の店舗。エレクトリックダーツの台数は15台。収容人数は着席90名、立食200名まで。営業時間は15時~翌5時。フロアにはバーカウンターが設置され、ソファ席もしつらえてある。経営する「コスモ通商」(東京本部:渋谷)はインターネット未来マンガ喫茶「バグ-ス」やビリヤード「バグ-ス」を展開する企業。同店マネージャーの溝渕さんは「ダーツをバーに数台のマシーンを置いて盛り上がるだけの一過性のブームで終わらせてはいけない。手軽なアミューズメント・スポーツとして認知させていかなければならない」と意欲を語る。同店では初めてダーツを試みる利用者と女性客が多いという。また、バーラウンジとしてのみ利用する方も多く、大型施設でなりながら、新しい業態の空間とも言える。溝渕さんはダーツが普及しつつある大きなポイントとして「料金の安さと気軽さ」を挙げる。「これほど低価格で遊べるアミューズメントは他にはない。敷居の高い老舗のダーツバーもいいが、当社は安心感のあるアミューズメント施設を目指している。昨年、当店も含め大型店が相次いでオープンしたので、渋谷に集まる方に関してはすでにエレクトリックダーツにコンプレックスはないだろう」。最後に溝渕さんは「マスコミの露出も増えてきたし、今年、きっとダーツに火がつくだろう」と期待を込める。

バネ・バグ-ス

2000年から今日に至るまで、じわじわと広がっているダーツ人気は、ソフトチップを使った「エレクトリックダーツの日本上陸とその普及」と「深夜のバーに集う、遊び慣れた大人たちのカルチャーの広がり」と言い換えてもいいだろう。初心者でも手軽に参加できる、アメリカ生まれの「エレクトリックダーツ」は初めにバーやパブなど、アルコールを主体とした深夜営業の大人の空間に設置され、新しいカルチャーを素早く吸収するイノベーターが触手を伸ばし、音楽や映像以外の“古くて新しい”コミュニケーションツールとして機能し、次に大型専門店の登場によってポピュラーな存在になりつつある。ブームとして定着するためには、ターゲットとなる客層が自然に足を運ぶ、波及効果の高い「エリアに集中」して、特定のファンを持つ「個性的な店舗」と間口の広い「大型専門店」が「短期間」に次々に誕生することが必須となる。もともtpダーツバーが多く点在していた渋谷エリアに、ブームを牽引する「メガショップ」が加わることでエリア内のプレイヤー人口が増え、裾野が広がるという構造が見えてくる。

ハード的にも、カーソルを使ってゲームをスタートさせ、点数がデジタル表示される「エレクトリックダーツ」は、パソコンや携帯を必需品とする世代にとって、まさに親近感のあるマシーン。紳士のインドアスポーツであった「ハードダーツ」が持つストイックさをソフトに変換し、さらに「的を射る爽快感」をテクノロジーの威力で倍増させたことが、新たなユーザーの取り込みに大きく貢献した点も興味深い。一方で、ダーツがブレイクすることに危機感を覚える関係者も多い。「ブームになれば廃れるのも早い」「かつてのプールバー・ブームを思い返すと、ブレイクしてほしくない」「ブームになってレベルの低い店が乱立すると、ダーツのイメージが悪くなる」といった意見も聞かれる。一時的なブームに終わるのか否か。ブームを超えて「インドアスポーツ」として、ポピュラーな「アミューズメント・ゲーム」として、さらには深みのある「カルチャー」として定着するのか。そしてスタイリッシュなスタープレイヤーやカリスマ・プレイヤーが登場し、ダーツを一気にメジャーな存在に押し上げることができるのか。その答えが出るのは今年、2003年かもしれない。

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