特集

「ケータイがないと生きていけないっ!」
10代が生み出す新・携帯カルチャー事情

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■話題の「ギャル文字」が、ついにカラオケにまで進出

つい最近まで大人が知らなかったケータイカルチャーと言えば「ギャル文字(へた文字)」。2~3年前に渋谷の女子中高生達が生み出したと言われ、昨年9月にギャル文字の使用例をまとめた「渋谷発!! へた文字BOOK」が刊行されて以来、多くのメディアに取り上げられ、その実態が明らかになった。あれから約半年、その第2弾である「ギャル文字へた文字公式BOOK」が4月8日、実業之日本社から発売された。

この本をまとめたオフィスDEMの藤井さんによると、「前回のへた文字BOOKを出版した直後、ギリシャ文字やロシア文字の表示の仕方がわからないという意見が多く寄せられた。なかには『私のケータイにはその文字が入っていない』などという読者もいたため、今回はそうした意見を反映し、50音図をわかりやすく表示し、句点コードも掲載した」と話す。2~3年前のギャル文字発生直後は、女子中高生の間だけで、ある意味節度を持って使われていたが、マスコミが採り上げた昨年以降は、ギャル文字の存在が一般にも認知され始めた。とあるラジオ局のパーソナリティは「番組のリクエストメールにギャル文字が使われていて、読めなくて困っていた。これがあれば解読できる」と喜んでいるとも言う。

今回出版されたギャル文字本は、子供を知りたい大人や、高校生と比較するとまだケータイ所持率の低い中学生の女の子がターゲットになっている。また、ギャル文字は、もともと少数のグループ間において潜在的にやり取りされていたため、グループによっては表記の仕方が異なったり、地方へ行けば方言なども関係してローカルルールが存在したりする。そのため、第2弾本ではメジャーなギャル文字をピックアップし、それを「公式」として標準化を目指すのだと藤井さんは言う。よって、現状のターゲットには、渋谷のコギャル文化に憧れている地方のティーンズが多く含まれると推察される。

ギャル文字へた文字公式BOOK

同書の発売に伴い、渋谷センター街の入口にある「TOKYO文庫TOWER」では4月11日、セールイベントが実施された。購入客のなかには、白髪の年配者や40代、50代の大人達が購入する姿が多く見られた。キャンペーン担当者の吉田さんも、「高校生はすでに知っているため本を手に取る人も少ないが、子供や孫とメールをやり取りしているような大人が購入していくケースが多い。当店はセンター街の入口という立地からも、この本を大々的に取り上げることは面白いのではないかと考えた。ほぼ狙い通り、まずまずの売り上げで推移している」と話していた。

加えて、店頭には「ギャル文字Tシャツ」までが登場。「書道のように、文字をビジュアルとして評価するのは世界の中でも日本だけ。そうした日本人特有の文化として受け入れられつつあるギャル文字は、見た目の面白さ、ビジュアル的楽しさがポイントであり、そこにグッズ展開というビジネスの可能性を感じている」と、藤井さんは語る。今後、「ギャル文字」ブランドとしてライセンシーの募集を呼びかけ、様々な商品展開をしていく予定だと言う。

また、ギャル文字文化を早くから取り入れたのがカラオケの第一興商。昨年12月末からギャル文字を使用した歌詞表示バージョンの配信を始めた。利用状況を同社のコンテンツ開発課長である前原さんは「これまでにも複数バージョンのアレンジカラオケや特殊映像カラオケなど、オリジナル以外の企画物を提供してきたが、それらと比較してもギャル文字カラオケの利用実績はかなり高く、人気がある」と話す。同社の展開するカラオケボックス「ビックエコー」にも、一般客からの問い合わせが多くあったそうだ。ギャル文字を使っている現役世代と、全くわからないであろう親の世代が、この企画を通じてコミュニケーションを持てれば・・・という狙いで導入されたギャル文字カラオケ。3月には新しい曲が13曲配信され、現時点では合計33曲になった。今後の配信曲数は、ギャル文字の拡大状況を踏まえつつ検討していくと前原さんは話している。

では、現役世代の女子中高生は、実際にギャル文字を使っているのだろうか。渋谷のセンター街入り口で10代の女の子にヒアリングしたところ、「以前は使っていたけど、今はもう面倒だからやっていない」(13歳)、「周りでは使っている子もいるけど、今はもうダサイと思う」(13歳)、「男子に送るメールにへた文字を使って怒られてからやめた」(15歳)、「ギャル同士のメールには今も使っているけど、男子や普通の女の子に送るメールには使わないようにしている」(17歳)といった声が集まった。一時は世間を席捲したギャル文字も、勢いは早くも渋谷の圏外に向かっているのだろうか。

オフィスDEM 実業之日本社 TOKYO文庫TOWER 第一興商
TOKYO文庫TOWER:セールイベント TOKYO文庫TOWER:セールイベント TOKYO文庫TOWER:セールイベント ギャル文字Tシャツ

■渋谷の女子高生がブームの火付け役?「デコ電」花盛り

10代の女の子たちの間では、ケータイ電話にラインストーンやラミネートシールを貼ってデザインする「デコ電」が流行っている。渋谷109の5階にあるアクセサリーショップ「CHIARA(キアラ)」(TEL 03-3477-5153)は、デコ電商品販売の元祖だと言われる店。マネージャーの太田さんに話を聞いた。

「『デコ電』はデコレーション電話の略で、当店では4年ほど前からラインストーンなどのパーツを販売している。当時は『クリスタル・デコレーション・ケータイ・アート』という名称で呼んでいたが、ちょうど1年程前から、この商品に一番に飛び付いたギャルの間で『デコ電』とネーミングされたようだ」と太田さん。ブームとなった背景には、手頃な値段でネイルアートのできるサロンが増え、サロンでケータイにペインティングをするサービスを始めたことが起因しているのではないかと言う。しかし、「デコ電」商品のなかでは、ペイントアートやラミネートシールを大きく引き離し、ラインストーンが一番人気だそうだ。同店はヘアアクセサリーショップを展開する会社が運営しており、最初はカチューシャやバレッタに付けていたラインストーンが余ってしまうため、在庫処分としてケータイデコレーション用に販売することを考えついたという。

同店の売れ筋は、ラインストーンがあらかじめハートや花の形にデザインされている「ワンタッチアート」で、初心者でも簡単にデコレーションすることができるのが人気の理由。10代に人気のあるデザインは赤やピンクのハート型で、その他の商品の3倍は売れている。「ワンタッチアート」のデザインはすべて太田さんが手掛けており、この商品は現在、特許申請中だという。単価は600~2,500円だが、1日平均1,000枚は売れる大ヒット商品だ。「当店のラインストーンは、オーストラリアのカットクリスタルの老舗メーカー、『スワロフスキー』を扱っているため、決して安くはない商品です。ですから客単価が高いのは、OLさんや主婦の方。親子で来店され、最初はお子さんが始めたのに今ではお母さんのほうがハマっている、というお客様も多いようだ」と太田さんは言う。女子高生が火付け役となった「デコ電」ブームも、今ではさらに上の世代にまで飛び火している様子が伺える。

ファッションでもメイクでも、今はラメやラインストーンなどの「キラキラ」系が10代の女の子に人気を得ている。ギャルの間で「デコ電」が流行ったのは、彼女達にとってケータイがファッションの一部となっているからにほかならない。大人は「ケータイがないと仕事にならない」と言うが、10代の若者は「ケータイがないと生きていけない」と言う。そんな自分達を「ケー中(ケータイ中毒)」と呼ぶ彼女たちに、さらに独自の使い方を聞いた。

CHIARA(キアラ) デコ電 デコ電

■柔軟な発想力でケータイに息吹を吹き込む10代

今や「写メール」は大人でも使う人が多い。子供の写真を撮って親に送る30代が多いのは当然だ。一方、10代は「写真を(送った相手に)見せる」ためではなく、自分自身のための記録や婉曲に気持ちを伝えるために「写メール」を使うケースが多い。ケータイ関連の専門誌を扱う「ケータイBEST編集部」の羽田さんに聞いたところ、「授業中、ノートを取るのが面倒なので黒板を撮って記録したり、洋服のコーディネートが気に入ったときに自分撮りして記録したりといった使い方をする10代が多い」と教えてくれた。また、友人と喧嘩したときにエレベーターの5階(=「誤解」の意味)のフロア表示を撮って友人に送ったり、自分で書いた手紙を写メールで撮って送るなどといった10代もいる。直接「ごめんなさい」と謝ることに抵抗があるのだろうか、あるいはストレートな表現はダサイという10代なりのセンスが見え隠れする。 また、10代と言えば、まだ親のすねをかじっている状態のため、メールなどのパケット料金節約には最も敏感な世代だと言える。例えば、「カタカナは半角で入力して2文字で1文字分にする」「句読点は使わない」「返信するときは履歴をきれいに消す」「件名にすべての本文を入れる」「自分撮りの写メールを送るときは背景のシンプルなところで撮影」・・・など、数々のテクニックを複合的に駆使していると羽田さんは言う。ただ、こうした地道な節約は、ほんの数円しか節約できないのが実情らしい。その割には、社会人に比べて電話番号が変わってもさほど痛手を感じない学生を中心とした10代は、ケータイのメーカーを気軽に変え、新しい機種に乗り換える傾向が強いそうだ。

ケータイBEST編集部

中には、自分のお気に入りの「着うた」だけをダウンロードしてマイベストテンを作り、曲のサビだけをつなげてラジカセ代わりに聞いている、という10代の女の子もいた。様々な機能を柔軟な発想力で使いこなす10代にとって、ケータイはただの電話ではない。「ケータイは命」と言う彼らだが、その使い方を探っていくと、彼らのほうが逆にケータイに息吹を吹き込んでいるような気がしてくる。

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