特集

自由な発想で既存店と差別化を図る
渋谷「新感覚バー」事情

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■チョコレートショップとバーのコラボレーション

青山・骨董通りに面するビルの2階に今年6月25日、オープンしたのは「XOCOLATL(ショコラトル)」(TEL 03-5778-2827)。同店はチョコレート専門店とバーで構成されるハイブリッド店舗で、昭和41年設立のチョコレート製造販売会社「クラウン製菓」が初の直営路面店として出店した店だ。同店で販売されるチョコレート製品はすべて、クラウン製菓の社長でもあるチョコレートのブレンダー、中西さんがカカオ豆の選定を経てブレンドした9種類のベースショコラが使われているのが特徴で、ほとんどの製品は同店パティシエを務める竹内さんによって店内の工房で作られている。

同店の主力商品は1粒180~250円の「プラリネショコラ」で、常時30種類以上が販売されていて、それぞれ「重み」と「甘み・苦み」が3段階で表示されている。中でも、ホワイトガナッシュにフランボワーズピュレを合わせたフルーティな「フランボワーズ」(200円)は、女性を中心に人気が高い商品だ。また同店では、チョコレート会社直営の強みを生かして、手作りチョコレートのベースとなる「ベースショコラ」(800~1,000円)も販売している。

ショップの営業は午後8時までだが、併設されたバーは深夜2時まで営業しており、もちろんバー利用者はすべてのチョコレートがオーダーできる。カマンベールチーズを使った「カマンベール」や、独自の風味のロックフォールチーズを使った「ロックフォール」(各230円)などが「アルコールと相性のいいチョコレート」(竹内さん)だという。さらにもうひとつ、お酒との相性がよくバーでも注文が多いのは、いんげん、アップル、キウイ、アスパラといったドライフルーツをチョコレートで包んだ「コーティングチョコレート」(各500円)。チョコレートのビター感やスイート感と、素材によって異なるドライフルーツの歯ごたえの組み合わせが新しい食感を生み出している。チーズフォンデュのように、溶かしたチョコレートにフルーツやバケットを付けて食べる「ショコラ・フォンデュ」(2,400円、1,800円、1,200円)も同店ならではのメニューだ。

ここ数年来、海外高級チョコレートの攻勢が続き、青山周辺でもヨーロッパ老舗ブランドの直営店が目立つ中、国内のメーカーが新たなブランド確立を目指して挑む同店店頭には、ブレンダーとパティシエが二人三脚で取り組んだ新しい発想の商品が並ぶ。竹内さんは「今後も、手づくりならではのものを作っていきたい」と、独自の商品開発に意欲を見せている。さらに、併設されたバーをひとりで訪れる女性も少なくなく、会社帰りなどに「シャンパンとチョコレートやケーキをオーダーする」女性の姿もあるそうで、先行している海外ブランドの専門店との差別化に大きく貢献していると言えそうだ。チョコレートは、そもそもワインやカクテルとの相性は悪くないが、同店のような本格的な「ショコラ・バー」の出現により、新たな楽しさが加わりそうだ。

ショコラトル
XOCOLATL(ショコラトル) XOCOLATL(ショコラトル) XOCOLATL(ショコラトル) XOCOLATL(ショコラトル)

■30歳オーナーが挑戦する新コンセプト「スイーツバー」

11月7日、恵比寿にバー「BON sweets & smile」(TEL 03-3447-1063)がオープンした。店舗は、元々民家だった建物を改装し、以前もバーであった物件を改装した地下1階から2階までの3フロアで、2階はテーブル席、1階がバー&キッチン、地階は靴を脱いで座る客席となっており、総席数30席の空間だ。営業時間は17時から翌2時まで。

同店の特徴は「スイーツ」と「アルコール」の組み合わせを提案する新感覚の業態「スイーツバー」をコンセプトに掲げている点。今年30歳を迎えた若きオーナー兼店長の永田さんは、今春まで会社勤めをしていた「脱サラ」組のひとり。学生時代を過ごした京都では、とある一軒のバーを任され取り仕切っていたが、父親の都合で一旦渡仏し帰国、その後ベンチャー企業に就職し、約5年間の月日が流れた頃、独立開業の思いが再燃した。思い立って当時の社長に退職の話を切り出したところ、逆に独立に際して一部の協力を受ける結果となった。

出店に際し、学生時代の経験を踏まえてアルコールを出す店という点は決まっていたが、コンセプトは固まっていなかった。永田さんは夫妻でいろいろアイデアを出すうちに「真夜中、無性に甘いものを食べたくなる時ってない?」との言葉に反応し、「スイーツ&バー」というテーマが浮上した。早速、回りの友人らにこのアイデアを投げかけてみたところ、思いの外、反応がよかったことから、このコンセプトを元にした店づくりを決意したという。その後、物件探しやスタッフ探しを経て、予定より約1~2ヵ月遅れでオープンにこぎ着けた。ちなみに店名は仏語で「おいしい」、サンスクリット語では「清める(浄化)」を意味する単語=「BON」から名付けられたという。

メニューは和・洋・アジアのスイーツの他、ワイン、カクテルを始めコーヒー、ティーなどのドリンク類と、「京都茎屋のお漬物」(500円)、「フレンチフライ」(600円)、「たっぷりわけぎとなすの醤油あえ」(550円)など、深夜に小腹を満たすサイドメニューが用意されている。中でもスイーツは約20種類以上と充実しており、スイーツとスイーツに合わせたワインやオリジナルカクテルを組み合わせた「マリアージュ(=セット)」メニューが目を引く。「タタン夫人のタルトとバニラアイス(温)」と「ハウスワイン」(1,000円)、「オレンジスポンジプディング(温)」と「ボンベイサファイヤ」(1,300円)など。「ばななとあんこの揚げ春巻き(温)」(550円)は「何故か男性に人気」(永田さん)のメニューだという。

永田さんは、父親の関係で幼い頃、フランスで7年間暮らした経験がある。当時見た光景が記憶に残る永田さんは「フランスやイタリアでは家族で食事をする時、年齢・性別を問わず、最後のデザートまできれいに残さず食べているのに、日本ではまだまだデザートの習慣が根付いておらず、まだ大人の文化として仲間入りしていない」「この店を通じてスイーツを大人のものしにしたい」と、店の抱負を話してくれた。永田さんがネットなどで調べたところによると、スイーツは「40歳」がひとつの分岐点だと言う。40歳以下は夜中でも、アルコール類などと一緒に平気でスイーツを受け容れられるが、40歳前後を境にこうした受容性が落ちるそうだ。永田さんは「海外では、夜中にスイーツを食べる中年男性も『絵になっていて』格好いい」と言い、日本でもこうした男性の出現に期待を寄せる。ちなみに同店のWEBサイトにはこう記されている。「酒飲みに甘党はいないなんて、昔の話」。

同店は、最近イタリアンの出店が著しい明治通りや恵比寿、広尾といった人気レストランの激戦区から程近い場所にあり、永田さんによると「西麻布や広尾のレストランなどで食事を済ませた帰りにもう1軒、立ち寄りたくなる店」を目指しているという。「スイーツバー」という新しいテーマで新業態に挑む若きオーナーの挑戦は始まったばかりだ。

BON sweets & smile
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■「犬連れOK」で一躍話題のバーに変身

恵比寿1丁目にあるバー「kuu」(TEL 03-3449-2517)は、今年11月でオープン3年目を迎える店だが、今夏以降、ちょっとしたことで注目を集めるバーに変貌した。それは同店が「犬連れOK」のバーであることが、愛犬家の専門誌などで採り上げられたためだ。

同店は2001年11月、アパレル会社を脱サラした野村さんがひとりで始めたバー。野村さんは全くの独学で店を始めたため、オープン当初は苦労を重ねたと話す。「あれもしなければいけない、これもしなければ・・・」と、あらゆる角度からのニーズに対応しようとした結果、個性を打ち出せずにいたが、2年目に入った頃「どうせひとりでやっている店なんだから、手間をかけたカクテルを出そう」と思い「生フルーツカクテル」を始めた。常時7~8種類のフルーツを用意し、季節に応じて変化させる。注文を聞いてから絞るため、手間はかかるが、他店との差別化が生まれる契機となった。

さらに今年の5月頃、常連のひとりが散歩がてら犬を連れて来店した。気が付けば、犬は店の中に・・・野村さんは、とっさに他の客の反応が気になって店内の光景を観察していると、他の客も犬を触ったり、会話が生まれたりと、以外にも和やかな雰囲気が生まれていた。同店の周辺には住宅が多く、近隣には動物病院があることもあり、店の前を通る愛犬家は多い。いつのまにかこれが先例となって、犬の入店が許される店となっていた。今年8月には、常連客の勧めで、店のドアに「犬連れOK」をアイコン的に示す「肉球」をデザインした小さなステッカーを貼った。

そうすると、さらにこのステッカーが気になる愛犬家が店の中をのぞき込み、野村さんに事前に「犬連れOK」を確認した後、散歩の途中で立ち寄るようになった近所の常連も多いという。同店に「立ち寄る」犬は、椅子に座ったり、床に寝そべったりと自由なポーズで、ご主人の飲酒を見守っている。深夜の犬の散歩の途中でちょっとバーに立ち寄る・・・考えようによっては贅沢な時間なのかもしれない。当の野村さんは犬好きでも犬嫌いでもなく「ただ、お客さんの過ごしやすい空間を目指していたら、自然にこうなっていた」と、あくまでも自然体だったと振り返る。犬を介在して図らずしも地域とバーの距離が近付いた。こうした小さな出来事を通じて、同店は「ありそうでなかった」バーへと変身を遂げた。

Kuu(クー)
kuu kuu kuu kuu

■恵比寿に登場する新たなアプローチ「駄菓子バー」

広域渋谷圏の中でもバー激戦区のひとつ、恵比寿に11月26日、駄菓子バー「ダディーズ・テーブル恵比寿店」(TEL 03-5458-5150)がオープンを迎える。場所は、飲食店が集積する繁華街と恵比寿公園に挟まれた一角で、「昭和レトロ」風に装飾を施した外観が目を引く。約20坪の店内も外観同様、「1960年代」をテーマにデザインされ、随所に昭和をイメージさせる小物やポスターが散りばめられいる。席数は38席。同店は、複数の飲食店業態を手掛けるサービスマート(中央区)が経営を手掛け、八丁堀、人形町、戸越に次いで、初の広域渋谷圏への出店となる。

同店の業態を正確に表現すると「駄菓子食べ放題ショットバー」だが、「これでは長すぎるので」(同社店舗開発部マネージャー、岡さん)、縮めて「駄菓子バー」と呼んでいる。店の基本形は500円のチャージ料金が付くショットバーだが、いわゆる「お通し」的なものは無い。その代わりに、客席の近くに置かれた「おつまみ」代わりの駄菓子は「食べ放題」というユニークなシステム。「あくまでも主役はお酒。決して500円で駄菓子食べ放題の店ではない」(岡さん)と、笑いながら言葉を添える。

店内の駄菓子は、ラムネ、するめ類、ミルクボーロ、うまい棒、ごえんチョコ、きなこ棒など常時40~50種類が用意されている。中でも「うまい棒」「いか類」の人気が高く、さらに通称「20円ヨーグルト」なども、狭い層ながら支持が高いという。駄菓子以外にも、「トリス」「ホッピー」「ラムネ」「コークハイ」などのドリンク類や、「ハムカツ」「フランクフライ」「カレーライス」とったフードメニューでも、昭和を感じさせる工夫を凝らしている。恵比寿出店の背景について岡さんは「どちらかと言うとハイソなイメージのある恵比寿で、回りの店とはちょっと違ったアプローチの店でチャレンジしてみたかった」と話し、料飲店激戦区における差別化を目指す。

ダディーズ・テーブル

年末を控えて、恵比寿界隈では新店の動きが活発だ。12月9日には、恵比寿4丁目にバー&ダイニング「NOSTALGIE(ノスタルジー)」がオープンを予定している。同店は、80年代のAORやソウルなどの音楽を楽しみながら、大人の隠れ家として30~40代が寛げる空間を目指す店だが、当初はクチコミで利用客を広げていきたいという意向から住所・連絡先等はオープンにしない方針だという。

広域渋谷圏には数多くのオーセンティックバーが集積する中で、20~30代をターゲットにする新興のバーは、自由な発想で新しい魅力を加え、既存店との差別化を図っている。一方、カフェが飽和状態を迎えている今、バー業態で勝負を挑む若手オーナーも増えている。カフェ文化から生まれた夜メニューの「多様化」と、バーが守り続ける「ダンディズム」が融合し、新世代のバーから新たなシーンが生まれそうだ。

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