神山町に新型書店「シブヤパブリッシング」-出版と小売り一体化

縦長の形状を生かした抜け感のある空間が特徴の店内。クラシカルな「書斎」風スペースも

縦長の形状を生かした抜け感のある空間が特徴の店内。クラシカルな「書斎」風スペースも

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 渋谷・神山町に1月26日、出版と書籍小売り機能が一体化した新形態の書店「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(シブヤパブリッシング&ブックセラーズ=SPBS)」(渋谷区神山町)がオープンした。

 東急本店の脇を抜け、昔ながらの街並みも残る商店街の一角に姿を現したのは、奥に伸びる縦長の空間がユニークな現代風の書店。白を基調にした抜けのいい空間には、写真集やコミック、雑誌など国やカテゴリーを問わずさまざまな「本」が並び、ガラス越しにはデスクやパソコンが置かれた編集作業用のスペースが見える。従来の書店と異なる点は、この「一体感」にある。

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 オーナー兼社長の福井盛太さんは、ビジネス誌「プレジデント」の編集を経て独立、現在はスポーツマネジメント総合誌「Sport Management Review(SMR)」の編集人を務める生粋の編集者。これまでの著書に現サッカー日本代表の岡田武史監督や古田敦也さんらとの共著「勝利のチームメイク」(日本経済新聞社刊)、「SWITCH ON BUSINESS」(スイッチ・パブリッシング刊)などがある。15年以上の編集者人生でかたちにしたかった自身の「出版社」を、この店で実現させた。

 「当初は代官山や原宿など若者文化の中心に店を出す計画」(福井さん)が、渋谷でも若者にはあまりなじみのない「神山町」に出店することに。「(代官山や原宿は)探し始めてみると坪単価がものすごく高い。エリアを変えて探していたとき、(著書などでも親交のある)岡田監督と見に行ったコクーン歌舞伎の帰り道でたまたまこの物件を見つけた」(同)という。

 物件の決定から開業までわずか半年。書店ディレクターや建築家など短期間でスタッフをまとめ上げ、構想を実現できたのは「やりたいことにブレがなかった。『もの作り』の仲間にも共感してもらえた」(同)ことが大きいという。設計を任せたのは、建築家・隈研吾さんに師事した後2002年に独立、「NAP建築設計事務所」代表として高級ブランド店の設計も手がける気鋭の若手、中村拓志さん。

 物件を見てすぐに「(縦長の形状を生かし)シースルーで奥まで見える抜けのいい空間が浮かんだ」という福井さんの要望に沿い、真っすぐに伸びる30メートルほどのロングテーブルと鏡の反射を生かしたユニークな空間を作り上げた。テーブルは奥の鏡に映ると、入り口から見て約60メートルもの長さに見える仕掛け。書店と編集スペースを透明のガラスで仕切ったため、書店を訪れた客はガラス越しに本の作り手や打ち合わせ現場など、編集部の「生」の姿が見られるのも大きな特徴。

 書店ディレクターには、国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」をはじめ、「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」、セレクトショップ「ラブレス」などでブックディレクションを担当するBACH代表の幅(はば)允孝さんを起用した。

 「スノッブな空間にはしたくなかった。本好きと本を読まない層の中間も取り込みたかった」と福井さん。こうした層や地元客にもなじみやすい独自の見せ方として、幅さんから提示された当初のアイデアに「年代別」カテゴリーを加えた。「年代別と言っても正確な(初版)年にはこだわらない。その年代『っぽさ』がビジュアルで見えたら面白いと思った」(同)。書店に並ぶのは約3,000タイトル。1940~2000年代まで10年ごとに年代で分けられた棚は、その時代を代表する名作家具をすべて白ペンキで塗ったオリジナルという。

 実際に並んだ本を見て「お笑い芸人の本やノルウェイの森、コミック本までジャンルもばらばら。物欲を喚起するライブ感のあるセレクトになった」(同)とも。店頭では、自社が手がけた第1弾写真集で、写真家・若木信吾さんが俳優の浅野忠信さんを撮り下ろした「ASANO TADANOBU─OFF SCREEN」(初版限定2,000部)も販売。写真集は今後も、日本人若手男優シリーズとして第5弾まで発行を予定しているという。

 福井さんは、店名(社名)に「SHIBUYA」を付けた理由ついて「マスではなく『ローカル』に根ざしたかった」と話す。オープン後「店に入ってくるのはほとんどが地元客。外国人客も多く、作品の持ち込みもある」と手応えを感じている。店は「街の書店」にしては珍しく、12時から翌2時までの営業。「深夜帯の売り上げも予想以上にいい」(同)という。

 今後は、オリジナルマガジンや単行本の発行をはじめ、店舗でのイベント開催なども計画。自社の書籍で海外にもアピールしていきたいという。書籍は公式サイトでも販売。

SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS渋谷・紀伊國屋書店がリニューアル-什器など内装を刷新(シブヤ経済新聞)大型書店「ブックファースト渋谷店」が閉店-旗艦店は新宿へ(シブヤ経済新聞)恵比寿のカフェに「小さな」書店-希少本販売やオークションも(シブヤ経済新聞)

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