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笹塚駅前に新公共トイレ 設計250カ所超の小林純子さんが手がける

「街の人に愛されるトイレになれば」と期待を込めた小林淳子さん

「街の人に愛されるトイレになれば」と期待を込めた小林淳子さん

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 設計事務所ゴンドラ所長で一般社団法人トイレ協会会長・小林純子さんが手がけた公衆トイレが3月10日、笹塚駅前(渋谷区笹塚1)に完成した。

別立てでつくった子どもトイレ

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 日本財団(港区)が展開する、建築家ら16人が参画し区内の公衆トイレ17カ所をリデザインする「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環。「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「危険」などのイメージから入りづらい状況にある公衆トイレを、デザイン・クリエーティブの力を活用し「誰もが快適に使える」ようにすることを目指し2020年8月から取り組んでいる。同所で16カ所目。

 小林さんは1989年香川に完成した公衆トイレ「チャームステーション」の設計に携わったことをきっかけに、公共トイレの設計を手がけるようになり、空港や商業施設、学校など250カ所以上の公共トイレ設計に携わってきた。

 「まちあかりのトイレ」をコンセプトに掲げた今回。駅の高架下に位置し、地面には橋脚の基礎や水道管がある敷地の事情から軽量化が求められた。以前はブロックを使っていたが、助言を求めた構造家・梅沢良三さんからの提案で鉄版をいったんさびさせた耐候性鋼板パネルを、外壁など壁面に採用。「さびて安定」するのが特徴で、経年に合わせて表情が変化し溶接した場所も含めて濃い色になっていくという。高架下の閉鎖感を軽減するため楕円形の黄色い大庇を設置し、高さの異なる円筒形の構造物を設計した。メンテナンス面を考慮して、床面に近い壁面は塗装を施している。

 面積は97.92平方メートル。中央に、オストメイト用設備やベビーベッドなどを設置するユニバーサルブース(6.6平方メートル)を備え、その左右に、小便器3台、ベビーチェアとフィッティングボードを備える個室1室を用意する男子トイレ(18.86平方メートル)、個室2室を用意する女子トイレ(18.17平方メートル)を配置。子どもトイレ(大1.13平方メートル、小1.48平方メートル)は、小林さんの設計の経験から「自分の場所ができたと思うのか」我慢してでも並ぶことがあることから、別に作った。同所は「笹塚緑道公衆トイレ」という名称であり「緑道の始まりになってほしい」という思いなどから、外壁の丸窓や子どもトイレの扉にはウサギのシルエットをあしらっている。

 開口部は広く取るほか、「明るさが安心感につながる」と壁には透過性の無いガラスを備え光を採り入れる。個室内は印象を変えるために壁面にタイルを使うほか、個室の扉などには緩やかなラインを入れて柔らかな雰囲気を演出した。一目見て「安心できる」よう、女子トイレエリアは出入り口から個室内なども見えるようにした。

 東村山市の公園にあるトイレを手がけた際に、学生に破壊行為をされた経験を「立脚点」と挙げた小林さん。「どんなことをしても、思った通りにはいかない。愛してくれる人が多ければ元に戻っていくと思っているので、共感してくださる人を一人でも多くしていくことが大事」という思いなどからプロジェクトに参加。その一つとして設計前に同所で100人にアンケートを取った。女性の利用が多かったほか散歩がてら立ち寄る年配の人もいたと言い、「街の人に愛されるトイレになれば」と期待を込める。

 「今プロジェクトは、『公衆トイレは市民皆の財産であること』をもう一度考え直すきっかけをつくろうとしている。これを機にさまざまな公衆トイレの議論ができることを期待する」

 同プロジェクトの最後1カ所も今月完成する。

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