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佐藤カズーさんデザイン「手を使わない」公衆トイレ 渋谷・幡ヶ谷に完成

「街のランドマークになれば」と期待を込めた佐藤カズーさん

「街のランドマークになれば」と期待を込めた佐藤カズーさん

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 クリエーティブディレクター・佐藤カズーさんがデザインした公衆トイレが8月12日、七号通り公園(渋谷区幡ヶ谷2)に完成した。

個室内には音声認識用のマイクを設置している

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 日本財団(港区)が展開する、建築家らが区内の公衆トイレ17カ所をリデザインする「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環。「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「危険」などのイメージから入りづらい状況がある公衆トイレを、デザイン・クリエーティブの力を活用し「誰もが快適に使用できる」ようにすることを目指し昨年8月から取り組んでおり、同所で12 カ所目となる。

 TBWA HAKUHODO(港区)のチーフクリエイティブオフィサーである佐藤さんと同社の「Disruption Lab」チームがデザイン。佐藤さんが公衆トイレを手掛けるのは初めてで、同プロジェクトに参画するクリエーターは建築家が多いことから、「マーケティングからクリエーティブを生かしたやり方をしたい」と考えたという。当初、同プロジェクトは東京オリンピック・パラリンピックで海外からの観光客が多く来日することも視野に入れていたことから「世界の方たちが感じる公衆トイレのインサイトやストレスになっている部分からデザインのヒントを得たい」と、欧米のトイレに関してのデータを集めた。その中で目にした「50%がトイレットペーパーでドアを開く」「30%が可能な限りひじを使い手の接触を避ける」などの調査結果から案を練った。

 たどり着いたのは、トイレを利用する際の全ての行動を音声で行えるボイスコマンド式のトイレで、タイトルは「Hi Toilet-手をつかわないトイレ」。個室の前にモニターを設置し、表示されるQRコードを自身のスマートフォンで読み取ると専用のページを開くことができ、用意しているコマンドなどを見ることができる。「Hi Toilet(はい、トイレ)」と呼び掛け、通知音が鳴った後に「扉を開けて」「トイレの水を流して」「音楽を流して」など要望を伝えると、その動作が行われる。

 トイレの外装は球体をベースにした形で、最大天井高4メートル。角張った建物が多いなか「象徴的に浮かび上がらせる」ことや清潔さを象徴する意味を込めた「水(しずく)」、公園との調和に加え、においを滞留させないため球体を選んだ。周囲の地面なども含め清潔感を感じられるよう白色にした。トイレの下側にはライトも付け、夕方以降にはライトアップする。

 トイレは、車椅子でも入れる広さでオストメイト用設備も備える男女兼用のユニバーサルトイレ(24.09平方メートル)と、小便器2台を備える男性トイレ(21.89平方メートル)で構成する。音声操作に対応するのはユニバーサルトイレのみで、扉の外側・内側、便器の近く、手洗い場の近くにマイクを設置し、その場所に応じた動作に対応する。通常通り手で操作するボタンなどもそれぞれ用意している。

 完成までに3年かかった同トイレ。「大変だったがようやく(完成した)」と感慨深げな様子を見せた佐藤さん。新型コロナウイルス感染症が流行する前から企画していたが、「コロナ禍の今、世の中が求めているものかもしれないと感じている。トイレで体験したことがない感覚を得られると思うので、公共トイレそのものの価値や見方、捉え方のレイヤーを一段上に上げられたのでは」と手応えをうかがわせる。「トイレの進化がここまで来たというのを楽しんでほしい。SDGsの(一つの)ゴールでもある公衆衛生を皆で共有しながら、公衆トイレは日本の文化だという風に思ってもらえたら」と話す。

 同プロジェクトのトイレでは、日本財団と区、一般財団法人渋谷区観光協会が協定を結び維持・管理を行っている(2023年まで)。清掃は民間企業に委託し、従来の1日1回(場所によっては2回)だったのを2~3回に増やすなどしている。ファッションデザイナーのNIGOさんが監修したジャンプスーツを清掃員のユニホームに採用している。

 今後は、10月(見込み)には笹塚緑道公衆トイレ(笹塚1、小林純子さん)、今冬(12月~2022年2月ごろ)に残り4カ所がそれぞれ完成する予定。

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