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名和晃平さん、表参道で個展 コロナ禍で制作した新作も

「今の世の中のムードを含め表現した」と話す名和晃平さん。写真の作品は「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」(通称・雲鹿)

「今の世の中のムードを含め表現した」と話す名和晃平さん。写真の作品は「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」(通称・雲鹿)

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 彫刻家・名和晃平さんの個展「Oracle」が現在、表参道「GYRE(ジャイル)」(渋谷区神宮前5)3階のギャラリー「GYRE GALLERY」(TEL 03-3498-6990)で開催されている。

「ウイルスに見える」とも言われる作品「Rhythm」

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 名和さんは1975(昭和50)年大阪生まれ。京都芸術大学准教授。京都を拠点に活動している。2019年秋ごろに同所での個展が決まり作品を制作してきた名和さん。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、スタジオで過ごす時間が増えたことから「実験的な試み」を継続的に行って来た中誕生した新作を多く展示している。複数のシリーズを一つの空間に展示することは「あまりしたことが無い」と言い、「空間に合わせて新作をどう見せるか」を考えたという。

 展覧会名の「Oracle」は、「神託・神意・助言を与えてくれるもの」などを意味。「これしか思い付かなかった」と言うが、コロナ禍という状況を見ても、医療や科学などが発達しながらも「答えが出せない状況。今のこの時代なのに神頼みのようになっているのは、ある意味皮肉、そういう所も揶揄(やゆ)する言葉なのでは」(名和さん)。

 場内には新作を中心に25点を展示。メインビジュアルにもなっている「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」(通称・雲鹿)は、近年取り組んでいる京都の伝統工芸復興プロジェクトから誕生した作品。春日大社本殿第一殿の祭神である武甕槌命(たけみかづちのみこと)が鹿に乗って鹿島から春日に影向した様子を表現しており、鎌倉時代の彫刻「春日神鹿舎利厨子」の神鹿をモチーフに、3Dシステム上でデータを制作した形を仏師が彫り、漆塗りや箔(はく)押しといった伝統的な技法で仕上げた。神鹿の体も雲のような形にし、「もやもやと見えない所をさまよっている人々を雲鹿が導くような存在になるようなイメージ」(名和さん)で制作したと言う。

 「Dune」は、他の作品を作る過程で出た廃液となった絵の具やメディウム、粒度の異なる絵の具、水などを配合し、床に置いたキャンバスに流し広げ制作。物性の違いで乾く速度が異なることから、乾く過程の中でしわが寄ったり引っ張られて破れたりして、さまざまな模様が自然と出てきた作品になっている。

 「空間にリズムを与える」というコンセプトで制作したのは「Rhythm」という作品。壁面に並ぶパネルの中には、大小の球体(セル)を配置しその表面にライトグレーのパイル(短繊維)を植毛技術で付けている。この作品は「ウイルスに見える」とも言われるといい、名和さんは「ウイルスではないが、皆がそういう精神状況に置かれているのはすごい面白い」と話す。

 映像のように常に変化している「Blue Seed」は、透明なアクリルの板にUVレーザーを照射している作品。板には紫外線が当たると青色に反応する顔料を塗り、コンピューターで制御するUVレーザーが当たった部分が植物の種子の輪郭が浮かび上がるようになっている。

 このほか、透明なグルーを溶かしながら「ゆっくり」手描きした「Catalyst」、名和さんが20年ほど制作を続けている、インターネットで見つけたオブジェクトに透明の球体(レンズ)で覆う彫刻シリーズ「PixCell」なども並ぶ。

 開催時間は11時~20時。入場無料。1月31日まで。

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