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岡本太郎記念館でChim↑Pom展-太郎の遺骨を「月の石」に見立て公開へ

大阪万博「月の石」に見立てて展示している岡本太郎の遺骨Chim↑Pom「PAVILION」2013©Chim↑Pom 写真提供:岡本太郎記念館 協力:Courtesy of MUJIN-TO Production, Tokyo 撮影:日比野武男

大阪万博「月の石」に見立てて展示している岡本太郎の遺骨Chim↑Pom「PAVILION」2013©Chim↑Pom 写真提供:岡本太郎記念館 協力:Courtesy of MUJIN-TO Production, Tokyo 撮影:日比野武男

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 南青山の岡本太郎記念館(港区南青山6、TEL 03-3406-0801)で3月30日から、6人組アート集団Chim↑Pom(チンポム)とのコラボレーション展「PAVILION(パビリオン)」が開催される。

2011年5月1日、巨大壁画「明日の神話」に付け足されて物議を醸したChim↑Pomの作品

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 東日本大震災後から間もない2011年5月1日、チンポムは渋谷マークシティの連絡通路内で一般公開されている岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」に、不吉な煙を上げる福島第一原発事故をイメージさせる絵を付け足し一躍世間の注目を集めた。それまで「全くと言っていいほどチンポムのことを知らなかった」という同館館長の平野暁臣さんも多くの取材を受けたという。その後チンポム側から「話をしたい」という申し出を受け、同館でメンバー6人全員と初対面。平野さんは「彼らのことを謀反者と聞いていたが、会ってみたら全く異なり、誠実で純粋な彼らの態度にほれた」と、その印象を大きく変えたという。

 若手アーティストとのコラボも積極的に取り組む同館。「当館側からコラボ展の話を持ち掛けたのは、昨年9月にワタリウム美術館(渋谷区神宮前3)で開かれた、チンポムが初キュレーションした展覧会開催中のことだった」と経緯を明かす平野さん。「ゲリラから正規の舞台に立たせたら、どういう戦い方をするのだろう」と期待感を抱いたという。

 そもそも、チンポムと太郎との「出会い」は、2008年に発表した、カラスを群れを呼び寄せ都内を巡るという映像作品「BACK OF DEATH」の制作で、カラス好きで知られる太郎の墓がある多磨霊園でもパフォーマンスを敢行したのが始まり。

 今回の展示では、チンポムと太郎を結びつけた「カラス」の「黒」と、太郎が提唱した「『対極主義』に真っ向勝負でいこう」という思いから「白」をイメージ。チンポムリーダーの卯城竜太さんは「死が頭を巡り、僕らが生きていて、太郎さんが死んでいるというどうしても乗り越えられない溝があった。しかし、太郎さんは死んでいても本人も作品もとても愛されている。それは生きていることに近い」といい、「黒=現代を生きる自分たちの生」と「白=亡くなった岡本太郎の死」を意味づけたという。

 同館2階では、万博記念公園(大阪府吹田市)にある「太陽の塔」にカラスの大群を呼び寄せた映像作品を発表。同作品では、あまり知られていない「太陽の塔」背面の「黒い太陽」にスポットを当て、「カラス」の「黒」とイメージを重ね合わせる。さらに太郎が1950年代~1960年代に東北や沖縄で撮影した写真を燃やしたベニヤ板に手焼きした「どの世」、御影石で作った黒いゴミ袋「ゴミの墓」など「黒」をモチーフにした作品も並ぶ。

 一方、暗い空間と対峙(たいじ)させた「真っ白な空間」の「PAVILION(パビリオン)」では、太郎の妻・敏子が巾着袋に隠し持っていたという「太郎の遺骨」を、大阪万博をほうふつとさせる「月の石」に見立てて中央のショーケースに置く。「(遺骨のみではなく)空間や見に来る人、シチュエーション、太郎が死んでいる、芸術家として生きているということ含め作品だと思っていただければ」と卯城さん。

 1階アトリエでは、物議を醸した巨大壁画「明日の神話」に付け足した作品「LEVEL7 feat.『明日の神話』」を展示するほか、庭にはキノコ雲をオブジェ化した作品を置く。さらに同館を囲む石壁には、日本の「ベトナムに平和を!市民連合」が米「ワシントンポスト」紙上にベトナム反戦広告を掲載した際に太郎が書いた「殺すな」の書を模した作品を掲出するなど全15点を展示する。

 遺骨展示の申し出を受けた際、平野さんは「そんなアート作品も見たことないし、身内でもあるので『えっ』と思った」と正直な気持ちを明かす。「太郎の存在自体が芸術の価値なのでは。彼が残した骨だって芸術であるはずだと考えた」。遺骨の作品を見て「美しいと思った。太郎は『きれいと美しいは正反対だ』と言っていた。これこそ太郎の芸術観そのものなのではと感じた」といい、「賛否両論あるだろうが、太郎はそうやって世間にいろいろなものを投げ込んでいた。これはやっぱり岡本芸術になりうる。当館でやることは意義も価値もあるのでは。批判も出てくるだろうが、彼らと一緒に責任を負っていこうと思う」と語る。

 物議を醸した作品「LEVEL7 feat.『明日の神話』」は同展修了後、同館に収蔵されることが決まっている。同館が太郎以外の作品寄贈を受けるのは今回が初めて。「渋谷警察署に押収され、そこも収まりどころだったが、次に展示されるべきは記念館しかないと思っていたので、収まるところに収まったという感じで、うれしい」と卯城さん。「(明日の神話には)今は展示していないが、通る人たちがその空白の部分を見て福島のことも想像していると思う。その現象はずっと続いていくと思うので、『レベル7』もずっと共にいると思っている」

 開館時間は10時~18時(入館は30分前まで)。火曜休館(祝日の場合は開館)。入館料は、一般=600円、小学生=300円ほか。7月28日まで。

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