特集

古さと新しさがクロスするXゾーン
中目黒、高感度系ショップ出店事情

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■中目黒の老舗バーが共同でおばんざいの店を出店

中目黒の駅前を通る山手通りから1本ウラに入った通り沿いにある、オールジャンルの音楽をリクエスト中心でかける店、「BOYS TOWN CAFE」という中目黒では老舗のバーができたのが約10年前。当時、中目黒には3軒ほどしかバーはなかったという。そのバーのオーナー廣島さんと、同じ通り沿いにあった、とある店のオーナー山下さんが7月1日、炭火焼と京都のおばんざいの店「鈴音」(TEL 03-3715-3315)をオープンさせた。同店を取り仕切るのは、タイガースファン暦30年という山下さんの方だ。宮崎産の地鶏をメインに、沼津綾市商店の干物を炭火で焼いて食べる。同店の人気メニューは、「もも肉炭火焼」(1,000円)、「チキン南蛮」(800円)、「京都のおばんざい」(各500円)といったところだ。おばんざいは、一部現地から食材を仕入れるなど、東京でもしっかりとした京の味を楽しむことができる。夕方6時から朝の5時まで営業しており、夜中でも胃袋を満たしてくれる希少店でもある。

二人のオーナーは「ウラ通りでお店をやっていますが、やはりオモテ通りで挑戦してみたいという気持ちはあった。たまたまいい物件にも恵まれたので、開店に至った」と話す。一方で「中目黒はウラとオモテの違いがはっきり出る街」ともいう。「オモテ通りの客層は、料理・酒などのおいしさありき、ウラ通りの客層は、音楽やスタッフなど人ありきの店が多い」(廣島さん)。ここ5年で中目黒はマンション建設が進み、多くの会社が移転してきた。店舗にしても10年前には考えられないくらい増えた。今まさに、中目黒は「ナカメバブル」を迎えている時かもしれない。だからこそ、「儲けることは難しいかもしれないけれど、反対につぶれることも少ないのでは」と廣島さんは続ける。新旧を知ったオーナー二人による同店の動向に注目が集まる。

鈴音 鈴音

■目黒川沿いの新ランドマークにニューショップ登場

中目黒駅から徒歩7分の目黒川の桜並木沿いに、2003年4月にオープンした「上目六(かめろく)さくらショッピングセンター」(TEL 03-3792-5223)は、貸間式のアパートと、民家、町工場という古い3つの空間を再利用してオープンした複合店舗。現在ショッピングセンターのなかには、フランス料理をベースにしたレストラン「omamori pasta kitchen」、昼は喫茶、夜はバーになるコーナーとブティックで構成された「continental overseas」が入っている。たまたま知り合いの不動産業者から物件を紹介されたという経緯で始まった計画だが、中目黒の街並みを活かし、築50年近い古い建物を何とか残したい-”残すことの成功例”を作りたいと意欲を燃やすのは、同店の設計・運営を手掛けるマン・フュージョン・システム(本社:中目黒)。だからこそ、自分たちの手で素人的に作り込むのではなく、大工の手をいれることによりソリッドに作ることにもこだわった。同社代表の関野さんによると「自分も含め、40代後半の人がくつろげる『街』のような空間を作りたい。その上で『記憶の共有』を狙い、青春時代を過ごしたような空間で、例えばユーミンではなく荒井由美のCDをかけるとか-そうした遊びを大事にしたいですね」。ターゲットはすばり「1975年から1985年に青春期を迎えたオジサン」だ。でも実際は、20代の若い層の客が紛れ込み、悩みなどを打ち明けた若者に説教をする40代の姿もちらほらみられるそうだ。

この「上目六さくらショッピングセンター」に9月6日、新たにパンとケーキの店「OPATOCA(オパトカ)」が誕生する。この店は、4月のオープンを予定していたが約半年遅れての開店となった。「アトピーの人でも食べられる酵母の選定、パンを焼く技術、提供するスタイルなどを研究した結果、少し遅くなりました」と、遅れた理由について関野さんは話す。さらに「パンに関しても、原点はフランスです。日本ではあまり知られていないけど、パリのパン屋さんに行くと、同じ時間、同じ釜で焼いても、白っぽい焼き加減のパンだったり、きつね色だったりいろいろなものがあります。それは、たとえば白いものならオリーブオイルにつけて食べるとか、きつね色ならおこげを利用してオニオングラタンスープに入れるとか-料理の用途により選びます。そうした一番おいしい食べ方を提供できるパン屋にしたいと、試行錯誤を重ねた結果が『今』になりました」(関野さん)と加える。パンの名前はそれぞれ、キリン組とか、ゾウ組など、幼稚園にありそうな名前にあえてすることで、遊び心も忘れてはいない。店内は7坪ほどだが、テイクアウトだけでなく、外の「踊り場」で食べることもできるほか、既存のレストランでも食べることができる。ちなみに、店名の「OPATOCA」は、「おいしいパンとケーキの店」を略したものだ。

上目六(かめろく)さくらショッピングセンター omamori pasta kitchen continental overseas OPATOCA(オパトカ)

同社ではさらに今月、新たな試みに取り組む。同センター近くに、昼は喫茶、夜はお茶漬けを中心としたワインバーとなる空間に、昼夜問わず「卓球」ができるラウンジを組み合わせた業態を出現させる。その名も「上目一中目(かめいちなかめ)卓球ラウンジ」(仮称)。お茶漬けは、同社系列でラ・フェンテ代官山にある「omamori」のレシピを使い、600円程度から提供を予定している。当初は、近くのショップや街の人から、ゆったりできるカフェをやってほしいという要望で計画されたが、半年前、関野さんがスポーツジムに行ってたまたま卓球をする機会を得た。回りを見渡すと、同世代に「元卓球部」が意外に多い。ならば「元卓球部」を集めて純粋にスポーツを楽しむことと、喫茶やお酒を融合させてしまおうという計画が持ち上がった。とはいうものの、卓球台はドイツ製のJOOLA(ヨーラ)を使用するなどの本格派。間もなく「試打会」を絡めたレセプションを行い、床の滑り具合などを調整した後、一般への開放を予定している。ちなみに関野さんも「元卓球部」である。

上目六さくらショッピングセンター
上目一中目(かめいちなかめ)卓球ラウンジ(仮称)

■高感度な雑貨・アート系ショップが続々登場

今春、目黒川から近い青葉台にオープンし、早くも全国マニアから高い注目を集めている専門店がある。「Kitsch-n(キッチュイン)」(TEL 03-3464-2757)は、1930年代から1970年代半ばのアメリカ製ヴィンテージ・キッチンウェアの専門店で、わずか13平米の店内に約80アイテムが並んでいる。商品はアメリカの「アンカーホッキング」社が1940年代から1960年代まで製造していたガラス製食器「ファイヤーキング」をはじめ、「Mackee」「Jeannette」「Old Pyrex」などの人気アイテムを揃えている。同店の商品は、オーナーである金沢アリアードナさんが約20年かけて集めてきたコレクションが基本となっており、「ファイヤーキング社の製品を実際に手にとって買える店は稀少」(同店パートナー、マイクさん)なこともあり、遠くは沖縄から駆け付ける客もいるという。アメリカなどの企業でノベルティとして使われていたファイヤーキングのマグカップなどの人気が高く、、客層は20代から50代で平均客単価は約1万円という。同店オーナーの金沢さんが監修を手掛け、コレクションのアメリカ製のガラス製食器を撮影した写真集「BREATH TALKING」(新時代社/3,800円)も9月下旬に刊行され、同店ほか全国の主要書店で発売される。小粒ながらも、感度の高い絶好のロケーションに位置する同店には、マニアならずとも雑貨好きの客が足を止めている。

キッチュイン
Kitsch-n(キッチュイン) 写真集「BREATH TALKING」

2002年9月、中目黒の高架下にオープンして人気を集めたインテリアショップ「buro-stil(ビューロスタイル)」(TEL 03-3793-6017)が、約1年ぶりに引っ越しを行った。同店は「work & study」をテーマに、本のある空間をインテリアとして提案するショップで、50年代~70年代の家具や本を扱っている。 今回の移転により、わずか9坪だった店内は約1.5倍の14坪になり、これまであった家具や本などの基本的なアイテム数を変えずに、それぞれの数を増やし、より快適な空間へと生まれ変わった。商品は、国内・海外といった国にこだわるのではなく、年代にこだわりを見せているのが同店の特徴。マネージャーの淡野さんによると「家庭用でもプロ仕様のものでも、ロングセラーといわれているものは、丈夫で使いやすく、シンプルで洗練されたものが多い。長く愛されるものは、それなりに理由があるんですね」と話す。同店を訪れる客層は20代後半から40代前半と幅広いが、仕事場などで実際に使ってみて、良さがわかっている年代の購入が多いという。また「これまでデスクといえば、学校やオフィスのみで使用するイメージが強かったが、パソコンの普及により、プライベートのデスク回りを充実させたい人も増えてきた。お店が広くなったことで、そうした点でも幅広く提案ができると思う」(淡野さん)。夜22時までオープンしており、突然のプレゼントなどへの対応もできる。中目黒周辺は、仕事とプライベートの時間が交錯する場所でもあり、こだわりを見せる生活者は、こうした店にふらりと立ち寄り、思いがけないモノとの出会いを楽しんでいる。

buro-stil(ビューロスタイル) buro-stil(ビューロスタイル)

ニューヨーク1号店に次ぎ8月26日、「中目黒銀座」商店街の中程に2号店としてオープンしたのは「トキオンショップ」(TEL 03-5773-8330)。同ショップは、ユニークな雑誌として世界中のファンを魅了してきた「TOKION(トキオン)が今年9月5日に約2年ぶりに復刊するのに伴い出店した。これまで、ニューヨークにある店舗かウエブ上でしか購入できなかった商品を、実際に手にとって買うことができる日本で唯一のショップで、雑誌で紹介したアーティストや、様々なブランドとのコラボレーションアイテムが中心となる。商品構成は、洋服・靴・雑貨などメンズアイテムが中心だが、雑誌「TOKION」のアートディレクターでもあるディオンヌ・シェウクのTシャツ(5,500円)や、ヒステリックグラマーのぬいぐるみ等で有名な山本ヨーコさんの、ビンテージの浴衣の生地を使用したコットンコケシ人形(10,000円)など、レディーライクなアイテムも取り揃える。

プレス担当の粂谷さんによると「雑誌の復刊がオープンの最も大きなきっかけだが、雑誌で目にしたものを実際手にとって、試して欲しいと思っていた。読者と接点の持てるショップが欲しかった」と話す。また「この場所は、商店街特有の暖かさとのどかさがあり、肩肘張らない雰囲気は『TOKION』らしい」(粂谷さん)と、駅前の開発された地域とはまた異なる空間への出店を楽しんでいるようだ。今後は、ニューヨークから輸入した商品だけでなく、日本で企画した商品を逆輸入したり、ライブイベントを企画したりと、情報発信型のショップとして注目が集まりそうだ。「TOKION」では9月15日に、代々木公園でライブイベントを予定しているほか、9月5日からはオープンを間近に控えた目黒通り沿いの「ホテルクラスカ」内の「Gallery CLASKA」で、オープニング・エキシビジョンとなる「NYD -New York Dirty -」を開催するなど、東京の街に様々な企画を仕掛けている。

トキオン

昨春の駅前再開発エリア「中目黒ゲートタウン」の出現で、界隈の家賃が高騰したこともあって、現在、人気の中目黒で店舗の空き物件を探すのは至難の技と言われている。こうした状況の中で、古さと新しさが絶妙に交錯する中目黒界隈には、個性的で感度の高い業態の出店が続く。こうした中目黒の影響力はその範囲をじわじわと広げ、間もなくオープンを予定している「ホテルクラスカ」などがある目黒通り沿いエリアとのリンクも始まっている。

トキオンショップ トキオンショップ
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