特集

もはやインテリアショップの定番商品?
おしゃれ系「海外家電」、再浮上の兆し

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■インテリアショップにおける海外家電の取り扱い動向

日本電機工業会によると、2001年度の「家電」製品の輸出額は約2兆3,000億円で前年度比88.6%に減少。これに対し輸入額は約2兆8,000億円と前年度比138.7%と、年々その増加率を更新している。量販店やディスカウントストアなどでは低価格のアジア製品が幅を利かせるが、インテリア志向の高い消費者の支持を集める欧米製の家電は、インテリアショップ、セレクトショップなど、従来とは異なる販路で支持層を拡大している。

インテリア用品をはじめ、キッチン家電、ファブリック、バスグッズ、ステーショナリー、アクセサリー類を揃え、店内にカフェも併設するのは代官山駅近くの「アッサンブラージュ」。店名はフランス語で「集める」「組み立てる」などの意味で、世界各国からシンプル・モダン・機能的で、遊び心のあるアイテムなどをセレクトしている。オープンの1994年以来、同店でも海外家電を一貫して取り扱っており、広い店内の一角にエスプレッソメーカーやフードプロセッサー、トースターなどをラインナップしている。

中でも人気はトースター。同店で取り扱うトースターは「パン専用」の機能を持つ「ポップアップ型トースター」。同店MDプランナーの世木さんによると「今では主流となったオーブントースターでは、パンの表面から水分が逃げるため、パンがやや固くなったりパサッとなる傾向にあるが、ポップアップ式のトースターは、パンを挟んで焼くため表面から水分が逃げず、表面をサクッと、中をふんわりと焼くことができる」と、パンの美味しさに差のある点を話してくれた。

ちなみに同店のトースターの売れ筋は以下の通り。

  1. 「デュアリット」2スロットトースター ホワイト(英) 33,000円
    ※1945年創業の業務・ホテル用電気調理器メーカーで、トースターは発売から45年を経過した名品。
  2. 「ラッセルホブス」クラシックトースター(英) 12,800円
    ※クラシックスタイルでありながら多機能なポップアップ式トースター。4枚切りやイギリスパンにも対応。
  3. 「サンビーム」トーストロジック・トースター(米) 12,800円
    ※1897年にシカゴで設立されたメーカーで、デザインの原型は1930年代に誕生した人気の定番。

開店以来取り扱うトースターはじわじわと売れ続け、シングル女性や夫婦に加え、最近ではひとりで来店した男性が求めるケースが少なくないという。さらに、購入客の中には「本体のデザインが気に入って、購入される方も多い」と世木さんは付け加える。同店では平日の雨天時に限って「10%セール」を行っているが、海外家電については天候に関係なくいつでも同率の割り引きが受けられることもあり、トースターは、その値頃感からも手の出しやすい海外家電のひとつと言えそうだ。

アッサンブラージュ
アッサンブラージュ 「デュアリット」2スロットトースター ホワイト(英)

1. デュアリット

「ラッセルホブス」クラシックトースター(英)

2. ラッセルホブス

「サンビーム」トーストロジック・トースター(米)

3. サンビーム

渋谷マークシティ・ウエスト1階にある「T.C/タイムレスコンフォート渋谷店」では「デロンギ(伊)」社製のコンベクションオーブン(29,800円)、「クイジナート(米)」社製の据え置き型フードプロセッサー(8,000~38,000円)、「ネスレ(スイス)」社製のエスプレッソマシーン(29,800~49,800円)など、ショップで扱うアイテムの2 割を海外製の調理家電が占めている。同店で扱う調理家電はコンパクトなサイズで、機能もデザインもシンプルなものが中心。「最近は家具に合わせて家電を購入する顧客が多い。そこでインテリアショップでもバリエーション豊かに家電を取り扱えば、家具選びと同時にセレクトできる」と店長の武安さんはインテリアショップに家電を置くメリットを強調する。

同店店長の武安さんによると「元々、渋谷店は宙中心となる客層が20代後半から40代の女性であるため、キッチン用品に対する需要も高かったため、調理家電に力を入れている」と、顧客ニーズへの対応の延長線上に海外家電の充実があると話す。また、仕入れに際しては「まず機能性を重視し、その他にデザイン性、価格で判断」すると言う。同店ではインテリアや家具と一緒に海外家電を買い求めるケースが多く、インテリアとして家電を見る消費者が少なくないことを裏付けている。

T.C/タイムレスコンフォート
T.C/タイムレスコンフォート渋谷店 「ネスレ(スイス)」社製のエスプレッソマシーン

「和洋折衷」をコンセプトにしたデザインのソファやファブリック、雑貨、食器類などを提案する人気インテリアショップ「プールアニック原宿店」(神宮前2丁目)では、唯一取り扱う家電製品として「GE冷蔵庫」を販売している。多角的な事業を展開する「ジェネラル・エレクトリック社」がインテリアショップとのコラボレーションで開発する製品は他に例がないという。店内に唐突な印象で置かれるボディは、否応なく重厚な存在感を打ち放っている。「冷蔵庫は何故シルバーと白だけなのか?」という、同店オーナーの田中氏のふとした疑問から、コラボレーションが実現した。標準色はレッド、ピンク、イエロー、グリーン、ブルーの5色だが、キッチンのインテリアに合わせて350色の中から選んでカラーオーダーにも対応する。プレス担当の篠崎さんは「海外家電は単純な形が多いが、逆にそれがシンプルでいさぎよくて魅力的なのでは」と話す。さらにカラー対応製品への取り組みについて「製品が『インテリアの一部としての家電』という高い美意識で見られているようだ」と、その手応えを打ち明ける。

サイズは417L、440L、560Lの3種で、417Lタイプの価格は標準の5色から選ぶタイプで40万円、その他の特殊色のタイプで43万円。国産の同サイズの製品に比べても価格は約2.5~4倍に及ぶが、購入者については「内装やインテリアに出費を惜しまない30~40代の経営者、20代の事業家が目立つ」(篠崎さん)という。高額な買い物も「一点豪華主義」としてではなく、あくまで「自分仕様の空間づくり」への飽くなきこだわりが、その動機となっている。

プールアニック
プールアニック原宿店

アメリカンテイストの家具を取り扱う「パシフィックファニチャーサービス」(恵比寿南)では、全商品のうち随時製作するオリジナルが6割、残り4割の海外製品は吟味したアイテムごとに仕入れを行っている。輸入家電で力を入れる「ジェルデ(仏)」社製のフロアランプ(78,000円)は、仏・ポンピドゥーセンターの展覧会などにも出品される50年以上のロングセラー商品。同店に訪れる客層は「30代の男性が仕事の合い間に品定めに来て、週末に実際に購入しに来るケースが多い」(店長の深海さん)という。彼らは製品の「寿命」や「強度」を気にする傾向があるようで、同店はその点に配慮した製品をラインナップする。

同店の今夏に向けた注目アイテムはアメリカ製の扇風機。ブランドは「Lakewood」で、「一般家庭用」と工場や倉庫で使用する「業務用」の計5アイテムをリリースする。Lakewood社は1946年、米・シカゴで創設された扇風機と電気ストーブの製造販売会社。価格は6,800~22,000円で、業務用の製品は「羽根」の直径が55センチもある大型タイプだが、タフで長持ちする「業務用」製品群には、やはり多くの男性が魅力を感じるそうだ。少し無骨だけど飽きのこないデザイン、そして「業務用」に裏打ちされた説得力の高い丈夫さの組み合わせが、この夏も多くの男性のハートを捉えそうだ。

パシフィックファニチャーサービス
パシフィックファニチャーサービス 「Lakewood」扇風機

■30年前の機種でも今の部品が使える海外家電の安心感

代官山にあるチェリーテラスは、スイスで生まれたハンディフードプロセッサー「バーミックス(bamix)」の販売を手掛けるために設立された。同商品は「つぶす」「混ぜる」「泡立てる」「擂る」「砕く」など調理に役立つ機能を1台でこなせる万能アイテムで、手で握って使うタイプのフードプロセッサーでは国内では先駆け的存在の商品。価格はベーシックセットが25,000円、デラックスセットが30,000円。1983年の同社設立以来、「バーミックス」は主婦からプロまで幅広く愛用され、これまでの販売台数は累計70万台を数える。同社企画・PR室マネージャーの古賀さんは「バーミックス」の人気について「発売以来、基本構造が変わらないため、30年前の機種でも現在の部品が使え、故障や修理にもいつでも対応できる」点を挙げる。

「バーミックス」は、本社に併設するギャラリーと百貨店で販売しており、本社内のギャラリーでは同品の活用方法を提案する料理教室を週に2~3回開催している。参加者はベテランの主婦から若い夫婦にまでと幅広く、毎回の講座はすぐに定員になる盛況ぶり。同社では、フランス製のステンレス鍋「クリステル」のほかイタリア製のオリーブオイルなど、ヨーロッパを中心に機能、品質、デザイン、耐久性に優れた商品をセレクトして紹介している。

チェリーテラス
ハンディフードプロセッサー「バーミックス(bamix)」 「バーミックス」料理教室

■ドイツの家電メーカーが渋谷に本格的ショールームを開設

海外の家電メーカーも、こうした人気を踏まえ、日本向けのプロモーションに力を入れている。

日本に上陸して10年目を迎えるドイツの家電メーカー「ミーレ」の日本法人「ミーレ・ジャパン」は5月31日、昨秋竣工した道玄坂上の「E・スペースタワー」1Fに国内初となる自社ブランドのショールームを開設した。耐用年数20年を想定した堅牢な設計が特徴の洗濯乾燥機(468,000円)や洗濯機(290,000円~)、乾燥機(253,000円~)、スプーンや箸を横に並べて洗う独自のカトラリートレイ(小物用トレイ)が特徴の食器洗い機(228,000円~)、地球環境にやさしい100%ノンフロンの冷凍冷蔵庫(268,000~348,000円)など15カテゴリーの商品が約440平米の空間に展示されている。開場時間は年末年始・夏期休暇を除き11~20時。

「ミーレ」はドイツ・ヘルツェブロックで創業した老舗メーカーで、世界初のマイコン制御の洗濯機・衣類乾燥機・食器洗い機を開発したことで知られる。製品は耐用年数と高性能が重視され、エコロジカルな設計にも配慮されているのが同社製品の特徴。昨年は「リーダースダイジェスト」による欧州18カ国、30分野の査定ランキングにおいて、「家電・キッチン機器」部門で2年連続1位を獲得するなど、同社の掲げる「品質主義」は世界的にも高く評価されている。

このショールームは「Oasis(オアシス)」と名付けられ、資源の再活用とマイナスイオンを意識した空間展開を図っている。ショールーム中央には、「空気の浄化」と「癒し」両面からの効果を狙い、噴水と観葉植物が配されているほか、床面は健康素材として注目される竹材を用い、空間の隅々に置かれたインフォメ-ションポ-ル〈イオンタワ-〉と中央のベンチの中には、除湿・加湿機能を持つ「備長炭」が詰められている。これらの試みは、同社が製品開発段階で積極的に取り組んでいるテーマ「資源の保存」と「有害物質・廃棄物の抑制」を、具体的にショールームにも反映させている。ショールームでは「将来のリフォームを視野に入れ、ゆっくりと観賞のできること」をポリシーに、一アイテムごとに広々としたスペースを設ける展示方法を採用する。商品展示スペースの他にも、実際のキッチンを想定した「アクティブキッチン」、打ち合わせや商談のできる「プロジェクトルーム」、また「プロフェッショナルルーム」「キッズコーナー」も完備している。近く、同ショールームに併設する形で「コールセンター」の開設も予定するなど、国内マーケット攻略の布石を打つ。

ショールーム開設に際しては「全機種が揃っていて、週末にも覗けるショールームを」との要望が国内のファンから多く寄せられたのが決め手となったという。ショールームの開設場所を道玄坂上に選定した理由について、同社宣伝広報課の井口さんは以下のように話す。

  1. 東京の中心であり、JR・私鉄・地下鉄各線・国道246号線が走るなど、アクセスの面で非常に利便性が高い
  2. おしゃれなブティックやインテリアショップの集積エリアである青山・代官山に近い
  3. 松濤や代官山など、周辺に暮らす人々の購入スタイルは「高級志向」「本物志向」にある

2000年の「渋谷マークシティ」の誕生により、渋谷駅方面とのショートカット導線が生まれ、道玄坂上から円山町にかけての変貌ぶりが目立っている。円山町方面へのゲートウェイとなる「E・スペースタワー」最上階では、フードベンチャーのグローバル・ダイニングがレストラン「Legato」や「権八」を手掛け話題を集めた。「情報発信基地」である渋谷への出店を通じて知名度の向上を図る一方で、松濤・代官山など周辺に暮らすアッパーグレード層への訴求効果を狙うなど、このエリアへのショールーム開設の背景には、巧みな立地戦略が浮かび上がる。

ミーレ・ジャパン
ミーレ・ジャパン ミーレ・ジャパン 洗濯乾燥機 洗濯機ドラム 冷蔵庫 掃除機

ここ数年続く海外家電の人気を背景に、国内の家電メーカーも相次いでデザイン重視の製品を送り出している。ただ、国内家電メーカーの弱点は、より高機能化を目指す余り、その製品サイクルが短い点にある。結果として製品体系は複雑さを極め、定番となりえる製品が育ちにくいのが現状。一方、海外家電製品は確固たるポリシーの上に製造され、シンプル性とデザイン性を重視し、多機能を追い求めない。故に、マイナーなバージョンアップを繰り返しながらも、見た目のデザインポリシーは長年に渡って変わらないのが特徴だ。そのプロセスを通じ、海外の家電メーカーは、時間をかけて消費者との信頼関係を構築しているようにも映る。

激しいモデルチェンジにさらされる日本の消費者にとっては、この「変わらない」デザインがむしろ新鮮に映るようだ。「変わらない」ことが消費者に与えるメリットを整理すると、(1)デザインに飽きがこない上、新製品が出ることによる後悔が少ない (2)基本構造が変わらないため部品が欠品とならず、長期間に渡って修理ができる安心感がある-などの点が挙げられる。メーカー側にとっても「変わらない」デザインポリシーを貫くためには、相応の企業努力が求められる。不況が長引く日本でも「使い捨て」文化が見直される中、「海外家電」人気を別の角度で捉えると、こうしたデザインポリシーに共感する消費者が潜在的少なくないことを物語る側面でもある。

一昨年から昨年にかけて渋谷を中心に吹き荒れた「カフェ」ブーム、そしてカフェ空間の刺激を受けた昨年来の「インテリア」ブーム、そしてインテリアの延長線上にありながら、むしろ「周回遅れ」気味に「海外家電」が再び動き始めている。一部セレクトショップの関係者も「今春あたりから店頭での動きが少し活発になってきた」と証言する。「こだわりを持ちながら、お気に入りの家具やソファを一通り揃えたところで、手を付けなかった『家電』のセレクトを始めたのではと」見る関係者もいる。「海外家電」は機能性と低価格を追求する家電マーケットより、付加価値とデザイン性が問われる「インテリア」マーケットとの親和性をますます高めていきそうだ。

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