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みなとみらい線開通で元町・中華街と直結
エリア間競争に新たなライバル出現!

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■みなとみらい線開通で渋谷~元町・中華街間が最短35分に

2月1日、横浜~元町・中華街間の臨海部4.1営業キロを7分(日中、特急利用)で結ぶ横浜の地下鉄新線「みたとみらい線」が開業する。同線は横浜駅で東急東横線と相互直通運転を行うため、渋谷~元町・中華街間が最短35分(特急)で結ばれる。一方、これに伴い東急東横線の横浜駅~桜木町駅間は廃線となるため、1928年(昭和3年)開業の高島町駅と1932年(昭和7年)開業の桜木町駅は廃止される。廃止を目前に控えた桜木町駅には、デジカメやカメラ付き携帯で電車やホームを記念撮影する利用客や鉄道ファンらが押し寄せ、廃止となる1月30日付けの入場券(110円)が売れている。桜木町発元住吉行き最終電車は31日午前0時44分に発車し、桜木町には同午前1時5分、元住吉発の最終電車が到着する。その後、始発前に線路の切り替えが行われ、31日の東横線は、地下化された横浜駅と渋谷間の運転となり、翌2月1日の始発からみなとみらい線との相互直通運転が始まる。

同線の歴史は1985年(昭和60年)に遡る。同年提出された運輸政策審議会答申に基づき、1989年(平成元年)横浜高速鉄道株式会社が設立され、1991年に着工した。同社は横浜市、神奈川県、東急電鉄、三菱地所などが出資する第3セクターで、総事業費2,600億円を投じた巨大プロジェクトとなった。答申から20年目、着工から13年目の開業となる。

横浜市都市計画局
発車式 桜木町駅

同線開通に向けて新設されたのは「横浜」「新高島」「みなとみらい」「馬車道」「日本大通り」「元町・中華街」の6駅。観光スポットを結ぶ同線は、駅のデザインにはこだわりを見せ、他の路線との差別化を図っている。各駅のデザインは、1992年(平成4年)に設けたデザイン委員会が各駅毎に選定した別々の建築設計事務所が手掛けたもので、構想から完成まで10年以上の歳月を費やした。各駅毎のデザインを個別の事務所が手掛けるのは極めて稀なケースだ。例えば、ランドマークタワーやパシフィコ横浜などが集積するみなとみらい21中央地区の中心にある「みなとみらい駅」は、日本建築学会作品賞などに輝く早川邦彦氏が手掛けた。プラットホームは地下4階=地下約23メートルの位置にありながら、地上部からのダイナミックな吹き抜け空間を通じて自然光を感じることができる構造。鮮やかな赤・青・黄の3色に塗り分けたダクトが構内を走り、大空間のアクセントになっている。

さらに同駅では、NTTとNTT東日本が協力して、地下コンコース地下コンコース半円筒型空間(みらいチューブ)のアーチ部壁面を利用したインタラクティブな情報発信メディア「パブリックメディア」の実用化実験も行われる。これは、人の動きや時間などの変化をセンサーが認識し、投影する映像を変化させるもの。例えば、人が近づくと上から下へ、左から右へ横切ると左から右へ映像が切り替わったり、立ち止まると表示されている店の詳細情報が表示されたりする。投影されるコンテンツは、アート作品や地域情報などで、実用化実験を通じて「パブリックメディア」の新しい可能性を探る。

NTT
みなとみらい駅 みなとみらい駅

「新高島駅」は山下昌彦氏(UG建築設計)がデザインを手掛けた。同駅のプラットホームは地下5階部分にあるが、地下4階を含めた2層吹き抜け構造になっており、地下駅でありながら広がりを感じさせるダイナミックな空間を生み出している。さらに、ガラスで覆われた地上部は、夜間の照明演出により光のオブジェとなるように設計されている。

内藤廣氏がデザインを担当したのは「馬車道駅」。同駅ではアルミの押し出し材を使った天井や強化ガラスによる手摺り、アクリル製の椅子などでモダンさを打ち出す一方、本物のレンガを職人が手作業で積み上げた壁面上部には、かつて同駅の地上部にあった横浜銀行本店のレリーフを再利用するなど、「過去と未来の対比」をテーマにした空間が広がる。

元町商店街、中華街、港の見える丘など、外国人居留地時代の歴史を今に伝える終点「元町・中華街駅」は、開港当時の歴史博物に関するガイドブック=「本の駅」をコンセプトにデザインされた。担当は伊藤豊雄氏。当時の風物を伝える絵葉書を真っ白な大型の陶板に写真製版により拡大され、デジタル処理によりすべてグレイトーンで焼き付けられている。この作業には編集者の鈴木明氏やグラフィックデザイナーの松田行正氏も加わった。

同線は臨海部を走り、帷子川(かたびらがわ)や大岡川などの下を通るため、プラットホームは地下3階から地下5階と、比較的深い部分に位置する。横浜高速鉄道建設部の大西課長は「一度掘り返した土で再び上部を埋めるのではなく、柱のいらないアーチ構造を採用し大空間をデザインに活かした」と話す。「この大空間を活かすダイナミックなデザインを求めて、気鋭の建築家に依頼した」(大西さん)。結果、駅上部を埋め直す場合とそれほど大差ないコストで、駅空間に開放感を生み出すことに成功している。さらに「駅の吹き抜けのある大空間を活かしたイベントも考えられる」(大西さん)と、将来的なメリットにも期待をかける。「駅」へのこだわりは、単なる乗降用の機能だけで捉えず、「駅」自体が観光の重要なスペックと捉えていることが背景に感じられる。

横浜高速鉄道みなとみらい線
新高島駅 馬車道駅 元町・中華街駅

■みなとみらい線開通を契機に観光強化を図る横浜

みなとみらい線のPRを担う「都心部活性化連絡協議会」も、開通を契機とするプロモーションの強化を図る。開業時は特に東京都心部でのPRに力を入れ、1月28日から31日までは「丸ビル」でキャンペーンを展開し、29日には「丸ビル」で中田宏・横浜市長が蝶ネクタイ姿のバーテンダーに扮し、来場者にカクテルをサービスした。また、同31日と開通日となる2月1日は、渋谷駅周辺でパンフレットなどの配布を予定している。横浜市は2005年度までに観光客の10%増を目標に掲げている。さらに、同線開業を記念したイベントも目白押しだ。同協議会では2月1日から15日まで「みなとみらい線開通記念 観光施設割引WEEK」と題したサービスを行う。期間中、横浜美術館やランドマークタワーなど、横浜市内の24の観光施設で割引サービスを行うもので、対象は、みなとみらい線一日乗車券(大人450円、こども230円)利用者と、観光案内所やみなとみらい線各駅などで配布される「ヨコハマ・わくわく・トクトクガイド」の持参者。

横浜観光コンベンションビューロー

「2003年問題」などで、オフィスの空室率が高まるなどの不安も残る中、みなとみらい線の開通を契機に明るい材料も増えてきた。「元町・中華街」近くは、みなとみらい線を使った通勤・通学の利便性をアピールする高層マンションの建築ラッシュが続いている。これまで商業地的な性格の強かった中華街付近も居住者が増え、少なからず環境に変化を与えそうだ。また、都心部からの移転組も出てきた。国連大学の研究・研修センターの一つである国連大学高等研究所は今春、渋谷の国連大学に隣接する現在地からみなとみらい21地区の「横浜国際協力センター」(パシフィコ横浜会議センター内)への移転を決めた。国際協力の一環として、国際機関の誘致を進めている横浜市の積極的な働きかけに応じたものだ。さらに今秋、同じくみなとみらい21地区(「新高島駅」前)にオープンが予定されている大型アミューズメント施設内に、TBSが昨秋まで運営していたライブハウス「赤坂ブリッツ」が、「横浜ブリッツ(仮称)」として登場する。収容人数は約2,000人。さらに企業誘致を積極委的に進める横浜市は、日産自動車にも、みなとみらい21地区への本社機能の移転を打診している。

■広域鉄道ネットワークの鍵を握る東横線の進化

1927年(昭和2年)に渋谷~横浜間が開通した東横線も2月1日、みなとみらい線の開通を契機に大きな変化を迎える。東横線は、横浜~桜木町間の廃止に加え、相互直通運転に伴う横浜駅の地下化に伴い、約1,000億円を投じて横浜~東白楽間を地下化した。中でも、横浜駅の地下化には膨大な時間とコストが費やされた。現状2階部分にある東横線横浜駅の真下部分に地下駅を建設するため、仮受けの人工地盤で上部構造を支えながらその下で地下を掘り進めるといった作業を、終電後始発までの短い時間に繰り返し行った。このため、横浜駅の北から南まで全工期には5年を費やす大工事となった。

こうした地下化や菊名~横浜間のATC(自動列車制御装置)化などにより、東横線は渋谷~横浜間の最短所要時間が27分から26分(下り特急、平日・日中)に短縮されるほか、深夜時間帯の上り特急を平日に3本、土休日に1本増発し、特急の運行時間帯を拡大する。実はこの「1分」の背景には「JR東日本VS東横線」のスピード競争がある。2001年3月、東急は東横線に初の「特急」を走らせ、渋谷~横浜間の最短時間を27分に縮めた。一方、JR東日本は同年12月「湘南新宿ライン」の運行を始め、渋谷~横浜間を乗り換え無し最短24分で結び、東横線に3分の差をつけた。ただし「湘南新宿ライン」の「普通」での所要時間は28分で、ここでは東横線に軍配が上がる。こうした因縁の時間競争の中、1分の短縮の意味は小さくない。

さらに2月1日、東横線には車体に広告を掲載した電車が運行を始める。東横線は、東京都・川崎市・横浜市にまたがって運行しているため、これまで川崎市の屋外広告物条例施行規則により車体広告を実施することができなかったが、昨年、同規則が改正されたことにより実施が可能となった。広告掲載場所は、車体側面のドアと窓の間(約75cm×約70cm)と窓の下(約45cm×約2m)の2カ所で、広告料金は1ヶ月1編成(8両)あたり300万円。すでに全日本空輸、読売新聞、クイーンズスクエア横浜などが出稿を予定している。同社は世田谷線(軌道線)で車体広告電車の運行実績があるが、鉄道線での実施は今回が初のケースとなる。

東急電鉄

東横線は、2012年度に渋谷駅で営団13号線との相互直通運転の実施を予定している。これが実現すると東部東上線・西武池袋線~池袋~新宿~渋谷~横浜が1本の路線でつながり、1都2県を結ぶ広域鉄道ネットワークが形成される。さらに、横浜方面からは東急目黒線経由、営団南北線を通じて埼玉高速鉄道で埼玉県「浦和美園駅」までが結ばれるなど、東横線を核に南北に伸びる民間鉄道網の整備が進む。こうした商圏の広がりを背景に、2月29日、埼玉スタジアムに近い「浦和美園駅」で開催される「ひな祭りコンサート」イベントには、横浜のホテルや中華街などが協賛、来場者に抽選で割引券や宿泊券などを提供し横浜方面への鉄道利用を呼びかける。広域鉄道ネットワークの拡充は、横浜方面への集客力向上に貢献するのは必至だ。一方、鉄道網の広域連携化は渋谷への影響も少なくない。高い集客力を支えてきた東横線渋谷駅が通過駅となり、ターミナル(終点)でなくなる日に向けてのカウントダウンは、すでに始まっている。

渋谷駅
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