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渋谷・道玄坂の老舗中華「長崎飯店」がいったん閉店 来春移転、再開発に伴い

渋谷・道玄坂の「長崎飯店」外観

渋谷・道玄坂の「長崎飯店」外観

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 渋谷・道玄坂の路地裏にある老舗中華料店「長崎飯店」(渋谷区道玄坂2、TEL 03-3464-0528)が2023年1月中旬、「道玄坂二丁目南地区」再開発に伴うビル解体工事に伴い、同所での48年の営業にいったん幕を下ろす。

「長崎飯店」の村中さん夫婦

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 長崎出身の同店オーナーの村中博孝さん(81歳)は、学校卒業と同時に上京。中華料理店での修業を経た後、「郷土の味を東京で広めたい」という思いから、1964(昭和39)年に「長崎ちゃんぽん」「皿うどん」をメインとする同店を東京・大森で創業。その後、羽田・大鳥居、新橋烏森と移転を繰り返しながら、1971(昭和46)年、現在も営業を続ける高田馬場店を開業。さらに1975(昭和50)年、渋谷・道玄坂に同店を開業し、約半世紀にわたり家族経営で2店舗を切り盛りしてきた。

 渋谷出店の理由について、村中さんは「当時、長崎ちゃんぽんや皿うどんは、東京の人にほとんど知られておらず、お客さんを求めて繁華街である渋谷を選んだ。本当は道玄坂のメイン通りに店舗を構えたかったが、家賃や資金もなかったので仕方なく路地裏に(笑)。渋谷は九州や長崎出身者が多く、郷土の味を懐かしむ彼らが徐々にお客さんを連れて来てくれるようになった」と当時を振り返る。

 看板メニューの「長崎ちゃんぽん」と「皿うどん」(ランチ=各900円、夜=各950円)は、長崎から「ちゃんぽん麺」を取り寄せ、カキやアサリ、白菜、キクラゲなど7種類の具材をふんだんに使い、開業から変わらぬ味とボリュームを提供し続ける。「学生時代に来たという人が定年になってやって来て、『当時と変わらないお店と味に安心した』と言ってくれた」と村中さん。

 中でも印象深い思い出は2017(平成29)年、テレビ東京のグルメドキュメンタリードラマ「孤独のグルメ」シーズン6 で紹介されたこと。「放送直後から行列が途切れなかった」といい、「同じ注文メニューで、(井之頭五郎役の)松重さんが食べるように調味料やソース、洋からしを付けて食べる人が増えた」とテレビの影響力の大きさに驚いたという。

 「道玄坂二丁目南地区」再開発事業は、同店などが入居する「新大宗ビル3号館」(1971年、築50年)のほか、クラブ「Sound Museum Vision Tokyo」などがあった「新大宗ビル1号館」(1964年、築55年)、イベントスペース「FORUM8」などがある「新大宗ビル2号館」(1971年、築50年)など、計7棟のビルを包括的に見直す大規模な再開発プロジェクト。2022年度に解体工事着手、2023年度に新築工事を開始し、2026年度に高さ約155メートルのオフィス・店舗等から構成される「高層ビル」と、高さ約60メートルのホテル・店舗などが入居する「中層ビル」2棟の竣工を予定する。

 再開発終了後、同店は新築ビルに再出店を予定しているが、それまでの期間、同じ道玄坂エリア内の渋谷フクラス近くに新店舗を構えて営業を再開させる。「現在の店舗から30メートル以内で店舗を探していたが、コロナが落ち着き始め、渋谷駅周辺の家賃は2、3倍に高騰していて、店舗探しに1年近くかかった」と苦労を明かす。

 路面の新店舗は、現在よりもスペースがやや広くなり、席数も増やす予定。「新店舗での営業が順調にいけば、4年後に移転せずに(渋谷エリアでの)2店舗体制に拡大してもいいかなと考えている」(村中さん)と80歳を過ぎてもなお商売への意欲を燃やす。

 「長崎ちゃんぽん、皿うどんを愛していただき、感謝している。新しいお店にもぜひ足を運んでほしい」と呼びかける。

 営業時間は11時~14時30分、17時~22時(土曜はランチのみ)。日曜・祝日は定休。現店舗の営業は1月15日ごろまで。新店舗のオープンは3月初旬ごろを予定している。

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