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恵比寿三越、26年の歴史に幕 常連客ら500人が行列、閉店セレモニーも

「三越恵比寿店」閉店セレモニーで頭を下げる田代直子店長ら

「三越恵比寿店」閉店セレモニーで頭を下げる田代直子店長ら

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 三越恵比寿店(恵比寿ガーデンプレイス内)が2月28日、閉店した。最後の営業日を迎えたこの日は常連客らが次々と訪れ、「よく利用していたので残念」などと口にし、閉店を惜しんだ。

エントランスのライオン像と記念撮影する来店客も

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 1994(平成6)年10月、恵比寿ガーデンプレイスの開業とともにオープンした三越恵比寿店は、地下2階~地上2階、広さ約1万8000平方メートルの売り場を展開し、周辺住民や渋谷や六本木、大崎など半径約3キロ圏内に住む30~40代のファミリー層をターゲットに、食や化粧品などを中心に日常使いできる店づくりを行ってきた。

 この日は開店前に約500人が行列。特に地下2階の食料品売り場が盛況で、レジには長蛇の列ができ、総菜などは夕方の時点で多くが売り切れていた。訪れた客の中には、エントランスのライオンの像と共に記念撮影する人の姿も多く見られた。

 近隣に越してきた時期と同店の開業が重なり「げた履きで来られる唯一のデパートだった」と話す60代の主婦は「主に食料品の売り場を利用していた。好きなものがあった。すごく残念。最後の日なので来た」。24年間恵比寿に住んでいるという40代の女性会社員も地下食品売り場のファンだったと言い、「毎週末必ず来ていた。食料品の良さがほかのスーパーと違った。すごく寂しい」と残念がった。

 恵比寿ガーデンプレイス内にあるオフィスに勤める40代の会社員男性は「(店を利用し始めて)7年目。昼ご飯を食べに来たり、弁当を買ったり、食料品売り場もよく使った。無くなると困る」と寂しそうに話していた。

 19時15分からは閉店セレモニーが行われ、田代直子店長があいさつ。訪れた客も見守った。「今日は気持ちいい晴天に恵まれた。一日お客さまとごあいさつをしてきたので声が枯れてしまった」と前置きしたうえで、「これまでご愛顧いただいたお客さまに心からお礼申し上げる」と26年間の感謝の意を述べた。続けて、コロナ禍でも「以前と変わらずお越しいただいた。(自粛期間中の)臨時休業明けの再開初日、プロムナードに並ばれた多くのお客さまを目にしたときには本当に感動した」と声を震わせながら、昨年の様子を振り返った。

 営業終了に当たり、「何を伝えたいか」と話し合った結果できあがったというコンセプトが「えびす顔で、ありがとう」。店が立地する恵比寿にちなみ、「えびすさん」と笑顔を掛け合わせ感謝の気持ちを表現したという。「最後は湿っぽくなく明るく」との思いから、店内数カ所に近所の住人らを写した写真パネルを展示するなど、「これまでに実施していないような、さまざまなイベントも企画してきた」と話し、集まった客を前に「お楽しみいただけたでしょうか?」と問い掛けると拍手が起きる場面も。

 中でも、閉店に際し館内BGMとして流してきた、音楽クリエーター・ヒャダインさんが手掛けたオリジナルソング「えびす顔で、ありがとう」については、「私たちはお客さまに育てられ、恵比寿という街が大好きになった。笑顔でお客さまに『ありがとう』と伝えたかった」と制作に至った経緯を明かし、「せっかくのご縁、これでお別れではなく、これからもどこかの店で会いましょうという思いを、社員約15人が1フレーズずつ歌った」と説明。

 最後は「またどこかの店で笑顔でお会いするのを楽しみにしている。今日2月28日の花言葉は『あたたかみ』。この店にぴったりの言葉だと思った。私もいくつか店を担当してきたが、お客さまとのこの近い距離感は初めてだった。私たち従業員もお客さまとの距離が近いこの店で仕事をすることが楽しく、誇りを持っていた」と胸を張り、最後は「店が無くなっても、恵比寿三越のことを少しでも思い出していただけたら。本当に長い間、ありがとうございました」と、マネジャー10人と共に頭を下げた。見守っていた客の間からは「ありがとう」の声も聞かれた。

 同店が入居していた恵比寿ガーデンプレイスの商業棟は2022年秋、リニューアルオープンする予定で、来秋のオープンに先駆け、来春には地下2階の食品・生活雑貨フロア(約4300平方メートル超)が先行オープン。ナチュラルスーパーマーケットを併設する「セントラルスクエア業態」のスーパーマーケット「ライフ」やスーパーマーケット「明治屋恵比寿ストアー」などが出店を予定している。

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