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宇宙飛行士を目指した写真家・高松聡さん、表参道で初個展

高松さんが訓練中に来ていた宇宙服などが並ぶ一角

高松さんが訓練中に来ていた宇宙服などが並ぶ一角

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 宇宙飛行士を目指した写真家・アーティスト高松聡さん初の個展「FAILURE」が9月4日、表参道・青山通り沿いの「SPACE FILMS GALLERY」(港区北青山3)で始まる。

高松さんが受け取った訓練センターの「卒業証明書」

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 1963(昭和38)年生まれの高松さん。6歳から宇宙飛行士になることを夢に見、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から一番近い筑波大学に進学。JAXAへの就職を目指すも視力が足りずかなわず、22歳で宇宙飛行士を諦め電通に入社。在籍中に国際宇宙ステーション「ロシアモジュール」を舞台に計3回CMを撮影し、ロシアとの関係ができたこともあり、2015(平成27)年1月~9月、52歳で民間人では日本人として初めて国際宇宙ステーション滞在を前提とした宇宙飛行士訓練をロシア「星の街」内の施設で受けた。

 英国人歌手サラ・ブライトマンさんのバックアップクルー(交代要員)として訓練を受け始めたが、5月にブライトマンさんが訓練を中止し、飛行を辞退。高松さんはバックアップする相手を失ったことから正式なクルーから外され、荷物をまとめて帰国するよう言われたが、「最後まで訓練させてくれ」と交渉し最後まで訓練を続け、卒業証明書も受け取った。

 小学6年からカメラに触れるなど「写真好き」の高松さんは「二度と行けない所なので撮ろう」と、施設に一眼レフなどのカメラを持ち込んでいた。帰国を言い渡され「いつまでいられるか分からない」状況になったことから、「猛然と」施設などの写真計1万枚以上を撮影した。会場には、雪が積もる「星の街」の風景、レンガ造りの建物、ユーリイ・ガガーリンが亡くなった時に乗っていたジェット戦闘機、帰還した本物を回収したソユーズ(ソ連・ロシアの宇宙船)の帰還船、原寸大の宇宙ステーションのモックアップ、イクラ缶などの宇宙食が置かれているダイニングテーブルなどの写真が並ぶ。

 訓練で使っていた実際の宇宙服はガラスケースに入れて展示。高松さんはそれが棺桶に見え「宇宙飛行士としての高松聡の死」を感じたという。そこから映画「アポロ13号」に登場するセリフ「Failure is not an option」に着想を得て「FAILURE(失敗)」と個展のタイトルを付けた。宇宙服の周辺には、ガガーリンのイラスト、宇宙服を着たマネキンの写真、教会が写っている「星の街」の風景写真を展示した。

 「写真家・アーティストして生きていこう」と決めていたことから打ち上げ基地のあるカザフスタンにも足を運んだ。正式なクルーを外され自由行動ができる時間ができたことから、カザフスタンの砂漠に破棄されていたというソ連版「スペースシャトル」、ソユーズの現役格納庫、電車で運ばれるソユーズ、打ち上げ前夜の星空なども捉えた。高松さんは「ジャーナリストなどでも撮れないポジションで写真を撮れた。ポジティブに考えれば(クルーを外されて)良かったのかな」と振り返った。

 場内には、受け取った本物の卒業証明書も展示。受け取ってから2日後くらいまでは宇宙飛行士として「認定されたと思っていた」が、ロシア語で書かれた証明書には訓練を終えたことは書かれていたものの、「宇宙飛行士に認定した」という記載は無かった。

 帰国後はSNSの更新も止まり、メディアの取材対応もせず沈黙していた高松さん。「宇宙飛行士になる夢はついえたが、写真家としての自分を発見して、これを仕事にしていこうと思うことができた」と話す。現在、「『宇宙に行って見る地球』を現代の可能な限りの技術を集結して撮影し、地上で疑似体験できる作品・場をつくること」を新たな夢に掲げ、宇宙旅行に必要な約65億円を集め2・3年以内に宇宙へ行くことを目指す。

 開催時間は11時~19時。入場無料。月曜定休。今月27日まで。

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