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渋谷区と東急が包括連携協定締結 ウィズコロナ時代のまちづくりに向けて

左から長谷部健渋谷区長、東急・高橋和夫社長

左から長谷部健渋谷区長、東急・高橋和夫社長

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 渋谷区と東急(渋谷区南平台町)が8月26日、グローバル拠点都市の形成に関する包括連携協定を締結した。

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 東急東横線渋谷駅跡地に渋谷スクランブルスクエア東棟が昨年開業し、今年初めに銀座線・新渋谷駅ホームの供用が始まるなど、ハード面における再開発が一つの節目を迎えた。こうした中で、「渋谷区産業・観光ビジョン」を提唱する渋谷区と、「エンタテイメントシティSHIBUYA」を掲げる東急が協定を結ぶことにより、ソフト面でのまちづくりをより一層推進していく。両者はこれまでも、渋谷駅周辺の大規模な再開発や官民一体で取り組む「渋谷駅前エリアマネジメント」の活動、地域イベントの協力など、さまざまな分野で連携してきたが、正式に協定を結ぶのは今回が初めて。

 締結式で、長谷部健渋谷区長は「東急とは既に大規模再開発や防災など、まちづくりに関するさまざまな計画で連携している。今まで何の協定も結んでいなかったのが不思議なくらい。それを改めて表明し、さらに深くまちづくりを進めていくため、膝を突き合わせてやっていきたい」と関係強化を強調した。

 ウィズコロナ、アフターコロナを意識した新たなまちづくりや、新たな行政運営が求められる環境下、今回の協定締結では「竹のようにしなやかな弾力性や、たおやかに復元する」という意味を持つ「レジリエンス」というキーワードを重視。「都市レジリエンスに向上に資する新しい技術実装」を目指し、渋谷が持つ「テクノロジー」「イノベーション」の力を加速させていく。

 第1の取り組みは、幅広いプレーヤーが活躍し誰もが起業にチャレンジできる街として、7月に東京都から「イノベーションエコシステム形成促進支援事業」の指定エリアに渋谷が認定されたことを受け、区内に拠点を持つスタートアップ企業や関連団体などと積極的に協業を進めていく。渋谷スクランブルスクエア内のオープンイノベーション拠点「渋谷キューズ(SHIBUYA QWS)」運営や、「東急アクセラレートプログラム(TAP)」の立ち上げなど、これまで東急はスタ―トアップ企業の支援に力を注いできた。今回の協定締結で区と相互に協力を行い、外国人が起業しやすい環境整備やスタートアップ企業の実証実験から実装に至るまでの支援など、将来的なソーシャルユニコーン企業の輩出なども見据え、世界を代表するイノベーション都市として成長させることを目指す。

 もう一つ大きな取り組みは「5G通信環境」の整備。渋谷では第5世代移動通信システム「5G」を活用した「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を立ち上げ、アート、音楽、ファッションなど渋谷が持つエンターテインメントを深化させる取り組みを展開している。こうしたプロジェクトの推進に向け、東急が運営する商業施設などを含め、渋谷駅前を中心とした5G環境の「面的」な整備を進める。コロナ禍の中、渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」をはじめ、リアルとバーチャルを融合するエンターテインメント産業の新たな動きも出始めており、「渋谷への来街のみならず、国内外に発信力のあるイベントなどを発信していきたい」という。

 イノベーションエコシステムや5Gを支え、渋谷区のスマートシティー化を進める基礎となるのが、ビッグデータやオープンデータを利活用する「データプラットフォーム」構築。一般社団法人渋谷未来デザインを中心にデータコンソーシアムを立ち上げ、区や東急、モバイルキャリアをはじめ産官学民のデータを掛け合わせ、渋谷が抱える課題や産業振興政策などを創出していく。具体的なデータ活用については、11月開催の「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷2020(SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA)」で発表する。

 こうしたさまざまな取り組みをスムーズに進めるため、今年4月、両者の職員を互いに1人ずつ出向させる試みを始めた。「区に民間の血を入れることで、変化が起こることを期待している」(長谷部区長)とし、今後さらに人材育成や人的な交流も推し進めていきたいという。

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