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「渋谷ストリーム」内部公開 渋谷川再生で広場も、駅南エリアで新たなまち形成へ

官民連携で再生された「渋谷川」に面し広場も出現する

官民連携で再生された「渋谷川」に面し広場も出現する

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 東急東横線旧渋谷駅ホーム・線路跡地などを活用した複合商業施設「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREAM)」(渋谷区渋谷3)の内部が9月5日、報道陣らに公開された。

「渋谷ストリーム」外観

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 東急電鉄と東横線隣接街区の権利者が主体となり進める渋谷駅南街区の再開発プロジェクト。東京メトロ副都心線との相互直通運転で東横線渋谷-代官山駅間が地下化したことに伴い生まれた跡地を活用。施設の前を流れる渋谷川などの「ゆるやかなストリートの流れ」を表現するとともに、「次代の流れを生み出し続けたい」という思いを込め、「流れ」などを意味する「STREAM」と命名した。

 「クリエーティブワーカーの聖地」を目指し、多様なワークスタイルに対応するビジネス環境をつくるほか、歩行者ネットワークで新たな人の流れを形成。渋谷川の再生も核に、「魅力的な」都市環境を目指す。総事業費は約700億円。

 敷地面積は約7100平方メートルで、地上35階・地下4階、高さ約180メートルの高層ビルを建設。フロア構成は、1階~3階=商業ゾーン、4階・9階~13階=エクセルホテル東急、14階~35階=グーグル日本法人オフィス(2019年度移転)。4階には年内をめどに、サイクルカフェと人工芝を敷く屋外の多目的広場「TORQUE(トルク)SPICE&HERB, TABLE&COURT」がオープンを控える。

 商業ゾーンには、「渋谷流=シブヤ・カスタム」をコンセプトに、日本初上陸1店舗、新業態13店舗、都内・渋谷エリア初出店7店舗を含む飲食店30店舗が出店する。スーパー「プレッセ」の新業態やデリなどをはじめ、定食や「フレンチおでん」、タイ料理、レモネード専門スタンドなど多様な業態を展開。「自分基準でカスタマイズやアレンジをする大人」をターゲットに据える。

 4階とオフィスエントランスロビーとなる5階は吹き抜け空間でつなぎ、6階カンファレンスフロアを含め、グーグル日本法人が主に活用する。7・8階は機械室。隣接する7階建ての別棟にはスタンディングで約700人収容するホール「渋谷ストリーム ホール」を備える。

 デザインアーキテクツは、シーラカンスアンドアソシエイツ(恵比寿西1)が担当。ファサードには縦長のホワイトパネルをランダムに配置し、屋上と低層部の壁面を緑化。地表から空にグラデーションにつながるデザインで周囲との調和を図るという。館内のエスカレーターやエレベーターなどの動線には「ストリームイエロー」のカラーリングを施す。北側ファサードは、渋谷スクランブル交差点から着想を得た「動く標本箱」をコンセプトに、エスカレーターなどの流れがガラスから透けるデザインを採用する。

 渋谷川沿いには2つの広場が誕生する。駅南側エリアの玄関口となる「稲荷橋広場」と、金王橋に面する「金王橋広場」で、広場から2階にかけては施設の象徴的な空間となる大階段を設ける。大階段のある低層部「ポーラス」は、外部と内部をつなぐ孔を設け空間を細かく分節化。大階段はLEDでライトアップする。

 2階には、旧東横線渋谷駅の高架橋を再利用し、貫通通路「ストリームライン」を整備。国道246号線をまたぎ、旧駅舎跡に2019年度中の開業を予定している高層ビル「渋谷スクランブルスクエア東棟」と渋谷ストリームをつなぐ。東横線へのオマージュとして、横断デッキ屋根は「かまぼこ屋根」を再現。2階商業ゾーンの床面には、東横線沿線で使用していたレールを埋め込む。

 エスカレーターやエレベーターなどで多層を上下で結ぶ「立体広場空間(アーバンコア)」は、地下2階~地上2階にわたって整備。東急東横線や東京メトロ副都心線の16b出入り口と接続することで、246や明治通りなどで駅のにぎわいから分断されてきた渋谷3丁目エリアと駅のアクセス向上も見込む。将来的に3階部分に新設予定のJR南改札(仮)と東西自由通路をつなぐ計画。

 二級河川「渋谷川」は、再開発に伴い官民連携で再生した。清流復活水を活用した「壁泉」と呼ぶ水景施設を整備することで水の流れを作り、桜などを植栽する東横線の線路跡約600メートルにわたる遊歩道を整備。代官山・恵比寿方面への歩行者ネットワークの形成を図る。

 代官山方面に向かう遊歩道の先に当たる線路跡地には、同日開業する複合施設「渋谷ブリッジ(SHIBUYA BRIDGE)」(東1)を開発。原宿方面から渋谷、代官山と、南北につながる人の流れを生み出し、東急電鉄が渋谷駅前半径2.5キロ圏内で打ち出す「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」構想の魅力向上につなげる考え。

 渋谷ブリッジは、区道を挟む全長約180メートルに2棟の建物を整備し、A棟には保育所認定子ども園が入居。B棟には「THINK GREEN PRODUCE」(以下TGP、神宮前6)が初めて手掛けるホテル「MUSTARD HOTEL」をはじめ、「博報堂ケトル」(港区)が運営するカフェ「NO RAIL, NO RULE.」などのカフェやオフィスなどが入る。

 東急電鉄の高橋和夫社長は「かつて関東初のターミナルデパートや東急文化会館などを次々に開業してきた」と自社の歴史を振り返り、近年の再開発事業として2012年に開業した「渋谷ヒカリエ」や、昨年キャットストリート沿いに開いた「渋谷キャスト」などを挙げた。「ビジネスや文化など、渋谷らしい新しいクリエーティビティー発信の場づくりと、訪れる方の利便性や回遊性向上を目指し、楽しさを体感していただくまちづくり」を一連の再開発のコンセプトに掲げた。

 「さまざまな個性が集まる寛容性がある。刺激にあふれるまち」と渋谷の特長を分析。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、「来年度開業する渋谷スクランブルスクエアを含め、各施設が魅力を高め合い、『エンターテインメントシティ渋谷』実現を目指す。引き続き、変わりゆく渋谷にどうぞご期待ください」とあいさつを締めくくった。

 渋谷ストリームは9月13日11時開業。

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