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出店ラッシュで注目ストリートに再浮上
周辺エリアにも波及!?変わる渋谷・文化村通り

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オープン日には5千人の列−「ヤマダ旋風」で競合を圧倒

 9月26日早朝、文化村通り沿いにずらりと並ぶ行列客。お目当ては当日オープンしたヤマダ電機「LABI渋谷」で売り出される、安価な家電製品の数々。ヤマダ電機の都市型ストアブランド「LABI」業態の都内9号店(全国では12店舗目)としてSHIBUYA109の真隣に出現した同店は、これまで渋谷で営業してきた競合「ビックカメラ」「さくらや」をものともしない全7フロア、総売り場面積5,565平方メートルの規模で存在感十分。

 ほかを圧倒する「広さ」を有効活用し、商品陳列などにゆとりを持たせた広々とした各フロアでは、テレビや冷蔵庫、パソコンなどの家電に加え、CD、DVDや玩具、ブランド品なども取り扱い、全体に女性客の利用も考慮しているのが特徴。通りに面した1階エントランスには、ソフトバンクモバイルのCMで人気の「お父さん犬」を忠犬ハチ公像にかけて特別に作った「像」も設置し話題となるなど、開業当初から「ヤマダ旋風」を巻き起こした。

 同店建設前のこの土地は、建設・不動産会社、長谷工コーポレーション(港区)が所有していた旧「長谷川スカイラインビル」(2003年に譲渡)跡地にラウンドワン(大阪府堺市)がいったんは新築ビルを一括賃貸するかたちでボウリング場などの複合レジャー施設を計画、2007年3月の開業を目指していたが、郊外型の店舗に比べ土地面積が狭く建築上の制約があることや賃料の高騰などで投資効率が悪いなどの理由から計画を断念。その後2006年5月からバイクに特化した駐車場になっていた。

 ヤマダ電機の建設計画が表面化したのは昨春。約1年間駐車場となっていた同地では同年中に工事が始まり、建設用の囲いには「LABI渋谷」の文字を完成パースとともに大々的に掲出、「渋谷上陸」をアピールしてきた。109の真隣にありながら、ここ数年比較的地味な印象だった「玄関口」付近の土地に活気が戻ったことで、文化村通り全体の人の流れも変貌(ぼう)を遂げつつある。

ラウンドワン、渋谷Bunkamura通りにボウリング場など開設へ(シブヤ経済新聞) 「バイク王」子会社、文化村通りにバイク特化の駐車場(シブヤ経済新聞) 渋谷に「ヤマダ電機」旋風−LABI渋谷開業で文化村通りに長蛇の列(シブヤ経済新聞)

来秋開業、スウェーデン発「H&M」が作る新ファッション動線

 ヤマダ電機出店に加え追い打ちをかけたのが、今年9月日本1号店となる銀座店開業の際に約5千人の行列ができるなど、ファッション界だけでなく今年の一大ニュースにもなったスウェーデン発・人気衣料チェーン「H&M」(社名=エイチ・アンド・エム へネス・アンド・マウリッツ)の「渋谷出店」のニュース。

 1947年にスウェーデンで設立された同社は、トレンドをいち早く取り入れたカジュアル衣料を値頃感のある価格帯で提供、現在、欧米やアジア各国などに1,600店以上の直営店を展開。GAPなどの海外SPA(製造小売業)ブランドの中でもデザイン性には定評があり、これまでステラ・マッカートニー、ヴィクター&ロルフら著名デザイナーと展開してきたコラボレーションでは、11月にオープンした原宿2号店を皮切りに売り出されたコム・デ・ギャルソンとの協業ラインも世界的話題となるなど、勢いが止まらない。

 国内3号店となる渋谷店出店のニュースは、話題の「ファスト・ファッション」ブランドが渋谷に大型店を出すというだけでなく、その出店地も注目の的に。出店予定地は渋谷住民や来街者にとってはかつて「ブックファースト」として知られたなじみの土地。昨年4月、渋谷で「唯一」の大型書店となっていたブックファースト渋谷店の閉店を運営元の阪急電鉄グループ(本社=大阪市)が発表した際には、「なぜ」「困る」などの声が続出。その後の動向にも関心が集まっていた。

 H&Mを国内展開するH&Mヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン(渋谷2)によると、渋谷店の売り場は国内最大となる2,800平方メートル。「H&Mのすべてのコンセプトを取りそろえたショップ」(同社)となる予定で、同ブランドのフルラインがそろう大型店が渋谷に誕生することになる。ビルは今年4月に着工し、来年7月にも完成予定で、開業は「秋」(同社)になる見通しだ。

 これまで文化村通りといえば、玄関口にこそSHIBUYA109が「君臨」するものの、ファッションでは渋谷パルコへと続く公園通りや、公園通り周辺に広がるビームスや古着店などが集積する神南エリアなどに比べ、印象はやや薄め。ギャルやティーン層だけでなく、20~30代女性の取り込みにも成功している109とも顧客層は重なるとみられ、109からH&Mへと続く買い物目的の「動線」が密度を増すことは容易に想像できる。

 銀座店ではオープンの際、買い物熱に「スイッチ」が入った客や行列を避けた客らで周辺店舗もにぎわう「H&M特需」も見られたことから、109や周辺のアパレル店舗、飲食店を含め、人の流れが一変する可能性もある。一方で、公園通りや神南エリアなどの集客力が落ちることも懸念され、H&M効果で訪れた来街者を「街全体」でどう取り込んでいくかも、今後渋谷エリア全体の課題と言えそうだ。

H&M、渋谷ブックファースト跡地に大型店−日本出店続々と(シブヤ経済新聞) 「H&M」日本上陸、銀座に1号店−オープン待ちわびる長蛇の列(銀座経済新聞) H&M原宿店オープンに2,000人−ギャルソン限定ライン求め男性客も(シブヤ経済新聞)

開店ラッシュで忘ら去られる歴史も−文化村通り「表」と「裏」

 SHIBUYA109前「道玄坂下」交差点から東急百貨店本店前まで約200メートルにわたって続く「文化村通り」が現在の名称になったのは、東急本店隣に総合文化施設「Bunkamura」が開業した1989年。従来の「東急本店通り」から名称を一新した通りには当時、109よりも顧客年齢層の高い「ONE-OH-NINE(ワンオーナイン)」と、後に改装でブックファーストと飲食店の商業ビルに生まれ変わる「ワンオーナイン30’s」が並び、東急グループのクラスターゾーンと化していた時期があった。

 1986年に開業したワンオーナインには、90年代に入りキーテナントとして「HMV渋谷店」が入っていたが、1998年に現在の渋谷センター街へと店舗を移転後は、パチンコ店「マルハン」が増床し、1階に化粧品店「ザ・ボディショップ」、2階~6階にマルハン、上層階に飲食店が入る「パチンコタワー」の印象が強い商業ビルに。もっとも、マルハンでは店内の「ゆったりとした」レイアウトをはじめ、禁煙フロアやカップル席を導入するなど女性客の「使いやすさ」も特徴で、地域柄既存のパチンコ店とは一線を画すサービスもウリにしている。

 その後1999年には東急本店前に総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が出店し、音響や目を引く外観、商品陳列などド派手な呼び込みで存在感を強調。当初は深夜営業が物議を醸したが、深夜帯、若者の待ち合わせスポットとしても定着している。このほか、駅から向かってドン・キホーテ手前にはマクドナルド、カラオケ館などのチェーン店が軒を連ね、集客の「目玉」になるような店や施設はなかったのがここ数年の文化村通り。

 大きな話題が相次ぐ中、一方で記憶の彼方へと追いやられていく「歴史」もある。戦後1950年代ごろ、米兵宛の英文ラブレターを代筆する代筆業が繁盛し、小説家・丹羽文雄が書いた小説「恋文」のモデルにもなったといわれる「代書屋」があった「恋文横丁」は、109、ヤマダ電機の裏手に今でも通る小路の一帯にあったとされる。

 道玄坂へと続くこの道にはかつて、1997年、48年の歴史に幕を下ろした老舗パン店「フレッシュマンベーカリー」があり、閉店後もひっそりと残っていた建物はヤマダ電機の進出で姿を消した。LABI渋谷には正面の文化村通り口をはじめ、裏手にもエントランスが設けられ、日中この出入り口を使う客も少なくないが、居酒屋や成人向けショップなど「裏」の印象が強いこの通りで真新しく光るヤマダ電機のエントランスはある意味異様にも見える。

 「ハレ」の通りを一本入ると、ラブホテルなどが点在する「ケ」の裏通りにつながる一方で、向かい側は文字通り渋谷の「中心」に位置するセンター街と、「道玄坂」「宇田川町」エリアを1本で分断する文化村通りは、変化の目まぐるしい「カオス」の街、渋谷ならではの光景を今、身をもって「体現」している。

大規模再開発のうわさも?−周辺エリア「宇田川町」「神山町」最新事情

 文化村通りの集客力がさらに高まるのに呼応するように、渋谷センター街の奥地にあたる宇田川町・神山町方面でも小規模なものを含め、再開発の動きが活発だ。

 来秋開業予定の「H&M」裏手に位置する、かつて飲食店などが入っていた4つのペンシルビルのあった敷地は、ビルの解体後、現在は更地状態に。同所向かいには2006年にオープンした吉本興業の無料ライブホール「ヨシモト∞(無限大)ホール」があり、収録を見に訪れる若者も多いほか、すぐ手前の旧パルコ「クアトロ」ビルは今年5月に物販営業を終了後、現在は直営のライブハイス「クラブ・クアトロ」のみを存続、7月には撤退後の1階~3階にブックオフが出店し、「文化度」も増してきた。

 この再開発地の行方も気になるところだが、ここからさらに進み、現在区が段階的な道路改修工事に着手している裏通り沿いには工事のため囲われた再開発地が密集。地元不動産関係者が相次ぐ再開発について背景を説明する。

 「この辺り一帯では昔、大規模な再開発計画があり、東急本店方面に抜ける新道の計画やかつて流れていた『宇田川』の再建計画も盛り込まれていた。立ち退きの話も進んでいたが、一軒どうしても立ち退きを受け入れなかったところがあると聞いた。住民らの間で説明会などはあったがいつの間にか立ち消えになってしまった。結局、新しい建物を作ろうと工事に着手したものの、手つかずの土地も多い」。

 センター街奥に広がる宇田川町エリアの中でも、地元不動産業者らがひと際注目するのが、テレビ収録を行っていたフジテレビの自社スタジオ開設に伴い昨年9月に閉鎖後、現在は一部のテナントを除きもぬけの殻になっているテレビスタジオ「渋谷ビデオスタジオ」がある広大な敷地の行方。施設には、路面にあったいくつかのテナント区画のうち、残すところ営業を続けるのは人気ハンバーグ店「ゴールドラッシュ」のみ。「ゴールドラッシュが閉店次第、取り壊されると聞いている。広大な土地なので大型の高級ホテルが進出するといううわさも。周辺も含めた大規模な再開発が行われるのでは」(前出・不動産業者)。

 かつては、NHK放送センターから「アフター5」に流れて来る業界関係者が落としていく飲食代で「NHK村」とも称された宇田川町から神山町にかけての飲食を中心とした商圏も、「ここ最近は『おひざもと』で飲むな、というかん口令が敷かれて下火になっている。『ぶら下がり系』ではなく味やサービスにこだわりを持つ飲食店が元気」(同)という。

 東急本店奥、宇田川町の先に広がる神山町には今年、出版社と書店が一体になった新型の書店「SHIBUYA PUBLISHING&BOOKSELLERS(シブヤパブリッシングアンドブックセラーズ=SPBS)」が開業。両施設の中間にあるトツネビルにはアップリンクが運営するミニシアターなどの複合施設があり、深夜になっても客足は途絶えない。

 人通りの多い「表」の文化村通りに比べ、個々の店舗、施設の「個性」が求められる「裏」の周辺エリアでは、来秋のH&M開業に向け、来街者を取り込むさらなる集客力が求められる。

吉本興業の無料ライブホールがオープン−初の収録も(シブヤ経済新聞) 渋谷「パルコクアトロ」物販営業終了−ライブハウス業態に特化へ(シブヤ経済新聞) ブックオフ、渋谷に古着との複合店−パルコクアトロ物販フロア跡に(シブヤ経済新聞) 神山町に新型書店「シブヤパブリッシング」−出版と小売り一体化(シブヤ経済新聞) アップリンク、宇田川町の自社拠点で「カルチャー蚤の市」(シブヤ経済新聞)

まだまだ続くオープンラッシュ−「玄関口」にアディダス国内最大店

 文化村通りでは年末にかけても、出店ラッシュが続く。仏・高級美容室「モッズ・ヘア」を国内展開するアトリエ・エム・エイチ(渋谷区千駄ヶ谷1)は11月23日、キーテナントとして路面にauショップが入る商業ビルの3階に、同美容室世界初のインテリアを導入した新スタイルの直営店「モッズ・ヘア渋谷店」をオープンした。モッズ・ヘアブランドの渋谷エリアへの出店は同店が初。

 世界規格の新コンセプトで渋谷に初進出した店舗は、「パリに住む友人の部屋」をイメージ。ゆったりと間を取った空間には低めのセット台を配置し、壁面にはファンデーションカラーを採用するなど「リラックス感」を重視、若年層の顧客獲得も目指すという。

 11月に入り飛び込んできたのは、「玄関口」SHIBUYA109の真向かいに位置し、路面区画の大規模な改装工事が始まり行方が注目されていた商業ビル「ハイマンテン渋谷ビル」への「アディダス」出店のニュース。出店個所にはすでに大きくオープン告知のビジュアルが掲出され、通行者にオープンをアピールしている。

 出店予定は今年12月23日。1階~3階には各スポーツシーンに合わせトータルコーディネートを提案する「アディダス パフォーマンスセンター 渋谷」、地下1階には、ファッションアイテムを提案する「アディダス オリジナルスショップ渋谷」がそれぞれオープンし、アディダス国内最大規模の大型複合店が誕生する。

 109や駅前の「TSUTAYA」が入るQFRONTビルなど渋谷駅周辺でも最も人通りが多いこのエリアに進出することは、高い情報発信性の確保も意味する。これまで居酒屋などが入るビルの印象が強かった同ビルの路面区画に同ブランドが乗り込むことで、文化村通りのイメージ向上にもつながるとみられ、今後次なる大手ファッションブランドの進出も現実味を帯びてきそうだ。

渋谷・文化村通りに「モッズ・ヘア」世界初コンセプトの新サロン(シブヤ経済新聞) アディダス、渋谷・文化村通りに国内最大規模の大型複合店(シブヤ経済新聞)

渋谷駅再開発で高まる「東西」の回遊性−街全体で魅力創出へ

 大手企業や世界的ブランドの相次ぐ進出で活気を増す文化村通りにも、華やかな話題に隠れ姿を消して行く店は少なくない。入居者のないまま数カ月建つ物件やテナント募集、閉店セールをうたう店もあり、今後ますます増加が予測される人通りに反し、集客力の望めない店には「撤退」の文字が重くのしかかる。

 文化村通り周辺の動きは、さらに大きな流れとも連動する。駅を挟んで逆側の渋谷駅東口では、今年6月の地下鉄・副都心線開業に伴い、東急文化会館跡地で高層ビル建設を含む大規模な都市計画が進む。副都心線は2012年度中に東急東横線との相互直通運転を開始し、埼玉県南部から横浜をつなぐ一大路線が完成する。

 東急グループではこれに照準を合わせ、文化会館跡地の複合高層ビルに東急百貨店の新店を出店。地上33階(地下4階)建てとなる同ビルの中層部にはミュージカル劇場やエキシビションホールから成る文化施設を開設するほか、ビルは地下3階部分で地下鉄ホームとも接続、1階~4階の各フロアで周辺道路などと通じる専用通路を整備するため、駅東側での人の流れは大きく変わる。

 駅周辺ではこのほか、東横線の地下化に伴い現在駅の南側に孤立している埼京線ホームを山手線ホームの並びに移設するなどの大規模な整備方針も明らかに。ホームに加えコンコースの拡充で複雑化する乗り換えにも対応するほか、ハチ公口へとつながる動線では、文化会館跡地の高層ビルから渋谷マークシティに連結する「空中通路」を建設し、「西側」への歩行者の回遊性を高める。

東急百貨店、渋谷・文化会館跡地に新店開業へ−2012年完成(シブヤ経済新聞) 渋谷駅周辺再編計画、本格始動へ−変わる景観、埼京線ホーム移設も(シブヤ経済新聞) 人が動く、街が動く−開業目前!東京メトロ・副都心線「渋谷駅」の全容と未来(シブヤ経済新聞)

 駅再編を含む大規模再開発で客足が伸びる要素がそろう東口と、文化村通りの活気を筆頭に大型案件ではないながらも話題性では引けを取らない西口。来街者を奪い合う駅周辺地域の競争は「熾(し)烈」さこそ伴うが、エリア間で各地域を高め合ういい意味での「刺激」にもつながる。大小の開発を全体のうねりに変え、街全体で魅力を創出していくことが、今後集客の鍵になりそうだ。

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