写美で森村泰昌さん新シリーズ展「なにものかへのレクイエム」-20世紀振り返る

「創造の劇場」シリーズより「ジャクソン・ポロックとしての私」(2010年)について説明する森村泰昌さん

「創造の劇場」シリーズより「ジャクソン・ポロックとしての私」(2010年)について説明する森村泰昌さん

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 名画の登場人物や映画女優などに「なる」変身型セルフポートレートで知られる美術家・森村泰昌さんの最新シリーズ「なにものかへのレクイエム」が3月11日、東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス内、TEL 03-3280-0099)2階・3階展示室で始まった。

「硫黄島の星条旗」をモチーフとした作品

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 テーマは「20世紀の男たち」。森村さんが2006年から取り組んできた4部構成のシリーズ企画で、「変身」する対象は、1951(昭和26)年生まれの森村さんが「リアルタイムで体験した」という三島由紀夫さんからスタートし、レーニン、ゲバラ、アインシュタインといった世界史上の偉人・英雄たちへと続いてきた。

 初公開となるのは、ピカソ、ウォーホル、手塚治虫など20世紀の芸術家たち10人の肖像に挑んだシリーズ「創造の劇場」と、昭和天皇マッカーサー会見、タイムズスクエアの終戦記念パレードなどの報道写真を再構築する最終シリーズ「1945・戦場の頂上の旗」。

 「鼻をつけただけ」で手塚治虫さんに扮(ふん)した肖像写真では、机に向かう手元に手塚作品に加えて森村さん自身が書き記した作品も配し、両者のイメージが「折り重なる」(森村さん)ように心がけた。また、マルセル・デュシャンとしての肖像写真では、背景に「かつて自分が撮影したデュシャンがテーマの作品」などを並べて「画面の中がすべて偽物」から成る世界を作り上げた。

 会場の展示作品の最後を締めくくる映像作品「海の幸・戦場の頂上の旗」は、アメリカ兵が硫黄島の山頂に星条旗を掲げる姿をとらえた報道写真「硫黄島の星条旗」をモチーフにしたもの。兵士に扮した森村さんが国旗の代わりに掲げるのは「一枚の薄っぺらな画用紙、白い旗」。

 同館が取り組む、「最も『旬』な作家に焦点を当て、重点的に収集する」プロジェクトの中でも、内容・予算ともに「最大の規模」で展開する同展。レクイエムシリーズ第1章を鑑賞した同館が、森村さんへ「21世紀を振り返る大型企画展示を」と話を持ちかけ、豊田市美術館・広島市現代美術館・兵庫県立美術館との共同企画とすることで3年を経て実現にこぎ着けた。

 関連イベントとして今月28日18時~、森村さんと小説家の平野啓一郎さんよる対談も行う。同展は今後、豊田市美術館、広島市現代美術館、兵庫県立美術館を巡回。「今年はモリヤマイヤーとなるだろう。20世紀を振り返りながら時代を映し出すスケールの大きさを感じてもらえれば」(同館学芸員の石田哲朗さん)。

 開館時間は10時~18時(木曜・金曜は20時まで)。入場料は、一般=1,000円、学生=800円、中高生・65歳以上=600円。5月9日まで。

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