
渋谷・宇田川町「シスコ坂」の名称の由来にもなり、伝説のレコード店として知られた「CISCO(シスコ)」のフリーペーパー「BPM」の全号を収録した書籍「BPM ARCHIVES」(東京キララ社)が7月9日、発売された。
シスコは、海外アナログレコードの豊富な品ぞろえなどで人気を集め、1990年代から2000年代初頭にかけて渋谷を中心に複数の店舗を展開。「レコードの聖地」として知られる宇田川町を代表するレコード店の一つだったが、ネット販売への切り替えに伴い2007(平成19)年、全店を閉店した。
楽曲のテンポを表す単位・BPM(Beats Per Minute)を誌名に据えた「BPM」は、シスコが12インチシングルの新譜を紹介するために発行していたフリーペーパー。東京キララ社(千代田区)社長で、DJとしても活動し、当時をよく知る中村保夫さんが今回、「復刻」を実現させた。
誌面上で「新譜」として紹介している「12インチシングル」は、1970年代のディスコブームの中、それまで1曲が3~4分ほどだった7インチシングル盤に対し、イントロ(前奏)とブレーク(間奏)が長めに収録されたシングル。12インチシングルの登場で、DJがターンテーブルを2台使い、曲同士のBPMを合わせてスムーズにミックスできるようになり、職業としての「DJ」に注目が集まり出すきっかけにもなったとされる。
1980年代半ばには、人気歌手やバンドの12インチシングルもリリースされるようになり、一般にも流通。日本でも国内盤は店に並ぶようになったが、シスコではいち早く、アメリカやイギリスの輸入盤の最新12インチシングルを扱った。「店内に所狭しと並んでいて、DJやクラブミュージック・ファンにとっての聖地になっていた」と中村さん。
1987(昭和62)年~1993(平成5)年の6年間で全68号が発行された同誌では毎号、幅広いジャンルの12インチシングルを、ジャケット写真と解説と共に紹介。中村さんは「現在と違って、インターネットもサブスクもない時代、わずか数行のコメントだけを頼りに新譜を購入していた」と当時を振り返り、「ほとんど情報がない中でのレコード選びには、独特の緊張感と発見の喜びがあった。今や誰もが知る名曲を、当時の担当者はどう紹介していたのか。そういった時代背景を考慮しながら、楽しんでいただければ」と、同書の見どころについて話す。
1号~39号(1987年4月~1990年11月)分を上巻の「BPM ARCHIVES 1-39」に、40号~68号(1991年1月~1993年7月)分を下巻の「BPM ARCHIVES 40-68」(各176ページ)に、それぞれ収録。全て原寸・カラーで、「BPM自体の誌面の大きさが途中から変わったので、原寸に合わせて、それぞれB5サイズ(上巻)、A4サイズ(下巻)に分けた」(中村さん)と、こだわりを明かす。
新譜紹介のほか、DJクボタタケシさん、DJ SHUFFLEMASTERさん、DJ吉沢dynamite.jpさん、中村さんの座談会(上巻)や、元「渋谷本店」店長の武田洋さんと中村さんの対談(下巻)なども掲載している。
価格は各巻2,750円。特典ステッカー付きの上下巻セットは5,500円。オンラインのほか、渋谷エリアでは、「タワーレコード」「ディスクユニオン」「マンハッタンレコード」「HMV」などでも取り扱う。