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渋谷の地で64年、東急プラザのロシア料理店「ロゴスキー」いったん閉店へ

茶系の色を基調にした「落ち着いた雰囲気」の店内

茶系の色を基調にした「落ち着いた雰囲気」の店内

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 東急プラザ渋谷(渋谷区道玄坂1)9階のロシア料理レストラン「渋谷ロゴスキー」(TEL 03-3463-3665)が3月22日、同館の閉館とともに閉店する。

同店オリジナルの「いなか風ボルシチ」

 同店は、終戦とともに失業した軍人の長屋緑と妻の美代が1951(昭和26)年に出店したのが始まり。店名は、緑が軍に在籍していたころに満州(中国)ハルピンのキタイスカヤ街で食べたロシア料理店「ロゴジンスキー」を短くしたもの。現在の京王井の頭線渋谷駅のホームがある辺りにあったマーケットの「人通りまれな『四等地』」で、当初は8人で満席になるほどの規模だった。

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 読売新聞の記事で紹介されたことをきっかけに来店客が増え、1955(昭和30)年に、現在の東急プラザ渋谷の裏手に位置する大通り(当時)へ移転。約30坪の店舗だったという。建物の老朽化などもあり移転を考えていた中、「渋谷東急ビル」(現・東急プラザ渋谷)開発の話を聞き、ロゴスキーの客でもあった東急不動産の担当者の推薦などから、開業と同時に同館へ移転し現在まで営業を続けてきた。

 かねては大人数向けの本館(桜丘町)や横浜のショッピングセンター「ジョイナス ザ・ダイヤモンド」(横浜市西区)内にも店舗を出店していたが、現在直営で営業しているのは東急プラザ渋谷店と、2009年にオープンした姉妹店「深沢カフェ」(世田谷区)の2店舗。

 店舗面積は63坪ほど。席数は、駅西口エリアを一望できる窓際のテーブル席など92席を用意。改装などはあったが、茶系の色味を基調に「落ち着いた雰囲気」の店内は変わらず、湯沸かし器「サモワール」やロシアに関する絵画などをディスプレーしている。

 美代のレシピをベースにした料理を提供する同店。当時日本人になじみの無かったロシア料理を提供するに当たり、日本人の口に合うようにアレンジや工夫を施したという。そうした同店オリジナルの初期メニューは、現在の日本でのロシア料理のイメージとして定着しているものも存在するという。

 その一つが「ボルシチ」。大きめにカットする肉やジャガイモ、ニンジン、玉ねぎなどの野菜が入るトマトベースの「いなか風」は同店オリジナルで、小ぶりにカットする肉やニンジン、キャベツ、豆などの野菜が入る「ウクライナ風」(以上、各972円)が本来のロシアスタイル。春雨入りのピロシキ(292円)も美代が考案したメニュー。当時のロシア料理本では、肉や野菜から出る水分(スープ)を絡めるために「小麦粉を振り入れる」とあったが、美代は春雨を代用したという。客単価は、昼=1,500~2,000円、夜=4,000円~5,000円。

 駅周辺の再開発の話が持ち上がった10年ほど前から同館閉館の話はあったものの、明確な閉館時期が決まったのは昨年の4月。「寂しい気持ちもあるが、一つのビルの立ち上げから最後まで営業することができたのはうれしい」と話す緑・美代の孫で3代目となるロゴスキー(世田谷区)副社長の横地美香さん。

 米ソ冷戦時には「嫌がらせ」があったり、バブル崩壊後は客足が遠のいたりする時期があった反面、昨年のソチ五輪・パラリンピック開催時にはメディアの取材などから来店客が増えるなど「良いことも悪いこともあり、撤退を考えたこともある」と振り返る。「目先の流行にとらわれず東急不動産が営業を続けさせてくれたことが、『いつもここにある』というお客さまの安心につながり利用いただけたのでは。ありがたい気持ちが大きい」という。

 比較的落ち着くという夏季も、昨年は例年より混雑していたといい、現在もオープン前から行列ができるなど多くの人が来店しており、すでに閉店当日の予約も入っているという。顧客は50~80代など長年利用している人が多く、親子3代での利用などもあるという。

 横地さんは「席配置や景色、店内の空気感含めて一つの店舗。この雰囲気は味わえなくなってしまうので、一度足を運んでいただければ」と来店を呼び掛ける。今後については、渋谷を中心に移転先を探しているが、良い物件に巡り合えず未定だという。6月をめどに再出店を目指している。

 営業時間は11時~22時。

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