特集

今、セレクトショップが業態進化を遂げる?
増殖する「カルチャー・ショップ」事情

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■原宿にアートギャラリーを核とする複合空間

2002年3月にリニューアルした「フォレット原宿」3階に、9月12日インテリア・ギャラリーカフェ「INCUVADER(インキュベーダー)」(TEL 03-5785-0301)がオープンした。アパレルや雑貨等を取り扱うリラックス(千駄ヶ谷)が初めて手掛ける飲食店併設のギャラリーで、店舗面積は87坪と広く、全体の約三分の二をカフェが占める。原宿という場所柄、10代~20代前半の利用客が多いが、深夜0時までオープンしているということもあり、仕事帰りのアート好きな人や外国人など客層は幅広い。同店プロデューサーの恩田さんによると「大学生の頃から世界中を旅しながら世界のギャラリーを見てきた。そこでは年齢や職業、国籍など関係なくアートを楽しんでいた。また、自分の腕ひとつで力を試しているアーティストという存在にも興味があり、そうした人たちと活力のあるスペースを作りたいと思っていた。それがギャラリーというカタチになった」と話す。

同ギャラリーは2週間ごとに新鋭アーティスト達の発表の場になっており、9月12日~19日までは、高橋幸宏やアメリカンラグシーなどとコラボレーションしてきたミュージシャンであり画家の「ISSEI OTANI」のイラスト展が開催されている。また、併設されているカフェでは健康に気を遣っている人も気兼ねなく食べられメニューが多く、土地・季節のおいしいものを探し日本の美味食材を最大限に活かしたものをウエストコースト風にアレンジしている。「ウエストコースト風とは、シンプルだが素材の味がしっかりでるような味付け・盛りつけのこと」(恩田さん)。同店の人気メニューは、「豚の鉄観茶角煮丼」(1,000円)、「テール蕎麦のボンゴレ」(900円)などで、他にも約30種類を提供する。

INCUVADER INCUVADER INCUVADER

アパレルメーカーのアウトバーンは5月29日、新世代のカルチャー・ショップ「Re unitts(リ・ユニッツ)」(TEL 03-3407-7390)を原宿・キャットストリート脇にオープンした。同ショップは「アートコンプレックス」をコンセプトに、現在は10名程度のアーティストのアートワークから発したウェアやキャップ、CD・レコードなどのグッズを販売するほか、世界中のアーティスト達の新しいカルチャーを発信する複合型ショップとして存在している。例えば、ロサンゼルス出身のプロスケートボーダーでアーティスト、詩人の「マーク・ゴンザレス」のアートをモチーフにしたアイテムはTシャツ(4,800円~)、スエット、パーカーなど多岐に渡り、中には同店でしか購入できないオリジナルもある。また店内の壁面アートワークは同氏と、ロンドンを中心に活躍するアーティスト、ベン・サファーが手掛けている。

店長の西川さんによると「アーティスト達の自由な発想とメッセージを伝えるショップとして存在したい。例えば壁面アートはパネル状になっていて取り外しができるので、今後は時代を担うアーティスト達とコラボレーションしながら、店も変化していきたい」と話す。同店のオススメはサンフランシスコ在住で昨年死去した「マーガレット・キルガレン」のアイテムで、Tシャツやデニムのパンツなどがある。Tシャツに関しては同店でしか購入できないものもあり、場所柄10代を中心とした若者達から注目を集めている。

Re unitts Re unitts Re unitts

■雑誌を核にしたカルチャー・ショップが静かに増殖

世界16カ国で発売されている、クリエーターを紹介する日本語・英語のバイリンガル雑誌「+81magazine(プラス・エイティワン・マガジン)」のギャラリーが2003年1月、「キラー通り」から少し入ったブラジル大使館の前にオープンした。同ギャラリーは主に雑誌で紹介したクリエーターの展示スペースとして注目されていたが今年3月19日、「+81」のセレクトショップとしてプレミアムスニーカーを中心にクリエーターとのコラボレーションアイテム、海外の若手デザイナー商品などの販売も始めた。同ショップの名前は「+81Gallery ZORX(プラス・エイティワンギャラリー・ゾークス)」。雑誌の特集と連動させ、特集ごとに毎月取り扱うアイテムやレイアウトを変更するなど、常に新しい感性を投げかけている。

現在はメンズアイテムが中心だが、10月10日からは次号の「+81」で「フィンランド特集」を組むため、マリメッコの雑貨を展示・販売するなどレディーライクなアイテムも増えるそうだ。同店マネージャーの甲斐田さんによると「もともとはギャラリーとして展示のみだったが、雑誌で紹介したアーティストの作品を直接見たいという声が多く、セレクトショップの機能が加わった。だが、販売を第一の目的とするショップではなく、あくまで「+81magazine」で紹介したコアなアーティスト達を紹介していくという姿勢は変えない。看板なども出さずに営業しているのは、ギャラリーのイメージを壊したくないから」と加える。

同店のオススメは、エール、ダフトパンク、テイトウワなどのCDジャケットのデザインで有名な、ロンドンを中心に活動するグラフィック・デザイン集団「Abake(アバケ)」のストリートウェアブランド「Kitsune(キツネ)」。同店では、トレーナー(8,900円)、パーカーなどを取り扱っている。 また異業種とのコラボレーション展開にも取り組み、第一弾として代官山にある古着屋「styles(スタイルス)」、家具屋「STICH(スティッチ)」とのコラボによって完成したTシャツ(4,800円~)などの販売も手掛けている。商品はネット上でも買うことができる。

+81Gallery ZORX

雑誌を核とするリアルショップの動きは活発だ。今年8月26日には、雑誌「TOKION(トキオン)が今年9月5日に約2年ぶりに復刊するのに伴い、中目黒にNYに次ぐ2号店を出店した。雑誌で紹介したアーティストや、様々なブランドとのコラボレーションアイテムが中心となっている。

トキオン 【シブヤ経済新聞】記事
+81Gallery ZORX +81Gallery ZORX +81Gallery ZORX

■インディーズ音楽を核とするコンテンツ系ショップ

南青山に9月1日、インディーズ・コンテンツ・ショップ「+MUSIC(プラス・ミュージック)」(TEL 03-5771-2875)がオープンした。店名は「ART+MUSIC」だったり「FASHION+MUSIC」だったりと、「常にそこに音楽がある」ということを理想としながら、あらゆるジャンルのアーティスト、異業種ともコラボレーションしていくという姿勢を象徴している。同店の経営を手掛けるネオプレックス(南青山)は、2001年の設立以来特異性のあるコンテンツメーカーとして様々なインディーズのアーティストたちを世に送り出している。設立2周年という節目と、CMや広告といったプロモーション手法ではなく直接手にとって視聴することにより音楽の素晴らしさを伝えたいという想いから同ショップをオープンさせた。店長の畠山さんによると「ネオプレックスの原点はインディーズのレコードショップで、その後流通、制作という過程を辿っている。出発点がユーザーに一番近いところだったため、ユーザーの気持ちが分かる制作会社としてリアルショップを展開できる」と話す。

ジャンルを問わずバラエティに富んだ展開でインディーズアーティストのCD、DVDはもちろんTシャツや本をはじめ、アーティストの表現を全方位にサポートして販売できることが同店の特徴。「インディーズはメジャーのように制約があまりないからアーティストの個性を生かした制作活動をすることができる。ストリートやライブハウスで活動する『生きた』アーティストたちと一緒に盛り立てていきたい」と畠山さんは続ける。同店のオススメは、京都出身の4人組バンド「スムルース」。関西を中心にライブハウスなどで活動し、サマーソニック03にも出演。7月23日にリリースされた「ヒマワリサン」(1,800円)はCMソングとしても使われている。ジャケットデザインはボーカルの徳田さんがすべて手掛けているなど、インディーズならではの自由な発想が光る。

また、10月8日には「and records(アンド・レコード)」という新レーベルがスタートする。「&」という世界共通のシンボルのもと、「Cool & Warm」な海外のアーティストを紹介していく。同プロジェクト担当は前出の畠山さんで「レコードショップのバイヤーや音楽ライターの経験を活かし世界中のアーティストを取りあげていきたい」と、レーベルにかける抱負を語る。さらに今後はジャケット・デザイナーの個展や世界のインディーズ・ジャケット展、情報交換ができるサロン、アーティストとファンが交流できるイベントスペースなど幅広い目的で同店を機能させ、インディーズを軸にしたエンタテインメント展開を予定している。

ネオプレックス

オリジナルと独自の視点でセレクトされた海外買い付け品などでマーチャンダイジングを展開する「セレクトショップ」と呼ばれる業態が登場して久しいが、「カルチャー・ショップ」はまさしくこの延長線上にあると考えられる。セレクトショップはアパレル、インテリア・雑貨とジャンルは違えど「モノ」という共通点の上に成り立っていた。しかし「カルチャー・ショップ」では、「モノ」と「コンテンツ」を複合的に取り扱う点が最大の特徴。「モノ」から発想するのではなく、アーティストや作品などの「コンテンツ」から発想する点が差別化のポイントで、アーティストやミュージシャンが生み出す世界感をコンセプトに、多様なマーチャンダイジングが展開されている。見方を変えると、彼らの多様で豊かな感性自体が商品になっているとも受け止められる。コンテンツと連動したリアルショップの増殖は、まだまだ続きそうだ。

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