特集

味覚のリミックス効果で新世代の定番化
渋谷と「マヨネーズ」の美味しい関係

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■マヨネーズのプロフィール

マヨネーズ(Mayonnaise)は、フランス語で女性名詞である。語源は諸説あるが、最も有力なのが(1)「スペイン・メノルカ諸島のマオン説」である。18世紀半ば、地中海に浮かぶイギリス領のメノルカ島(現スペイン)にフランス軍が進軍。総司令官がその島の港町マオンで食事をした際に出会ったソースがマヨネーズのルーツ。総司令官は帰国後、「Salsa de Mahonesa」(スペイン語で『マオンのソース』)と紹介する。それが「Mahonnaise」(マオンネーズ、あるいはマオネーズ)と呼ばれ、その後「Mayonnaise」(マヨネーズ)になった。他には(2)中世フランスで卵黄のことをモワイユ(マヨン)と呼んだことが転じた「フランスの卵黄ソース説」 (3)フランス人のマオンさんが作ったという「人名説」 (4)フランスのバヨンヌ(バイヨンヌ)という町で作られたことが転じた「バヨネーズ(バイヨネーズ)説」など全部で10説ほどある。ともあれ、マヨネーズはフランスを拠点にヨーロッパ全土に広まり、フランスからアメリカに渡った移民たちによってアメリカの代表的なドレッシングのひとつとなっていく。

国内初のマヨネーズが誕生したのは1925年(大正14年)。製造元はキユーピー。創業者の中島董一郎(とういちろう)氏が衣食住の洋風化が進むのを見て製造を開始。アメリカで遭遇したマヨネーズを日本人の栄養不足、体力不足を補うために改良し、日本人の口に合った商品を販売した。当時の日本ではサラダを食べる習慣はなく、マヨネーズはサケ缶やカニ缶など魚介類と一緒に食べられていたという。第二次世界大戦のため製造を一時中止したが、戦後、原料事情が好転し、卵黄が多く、うま味の強いマヨネーズの市場は飛躍的に拡大。家庭では欠かせない基本調味料のひとつになる。食生活の向上、洋風化の加速がマヨネーズ消費を促し、サラダ中心の消費からマヨネ-ズを使った料理のバリエーションが増えたことがマーケットの拡大につながる。外食の一般化により、外食産業でのマヨネーズ需要も伸びる一方、今日では食のヘルシー志向に対応する新商品も登場している。

1952年に設立された「全国マヨネーズ協会」(中央区)が本年5月に公表した「ドレッシング類生産量と1人あたり消費量の年次別推移」によると、すでに市民権を得た今日でもマヨネーズの生産量、1人あたり消費量とも飛躍的に伸びていることがわかる。

  マヨネーズ生産量 1人あたり消費量
1990年 217,363t 1,752g
1995年 226,576t 1,804g
2000年 240,443t 1,895g
全国マヨネーズ協会
マヨネーズ・イメージ

渋谷に本社を置くマヨネーズの最大手、キユーピー商品部調味料グループの山下さんは、日本の食文化にマヨネーズがこれほど浸透した背景を次のようにまとめる。

  1. 食文化の見地から言えば、日本では昔から基礎調味料として味噌やしょう油などが 使われているが、これらは発酵調味料として熟成していく商品群。マヨネーズも卵黄の中 にたくさんアミノ酸が入っているので、その濃厚なおいしさとうまみを増す熟成していく 工程に違和感がなかった。
  2. 京料理で使う「黄み酢」(酢と卵黄を混ぜて作る調味料。これに油を足せばマヨ ネーズに近い形となる)のようなスタイルがあったように、マヨネーズに似たものは昔か ら食べられてきた。マヨネーズが日本に誕生してまだ77年だが、実は古くから日本人の遺 伝子に記憶されていた味なのではないかと考えている。だからおにぎりや寿司に使っても違和感がない。
  3. 半固体のマヨネーズは性質上、舌の上でその味覚が長く残る特性を持っている。味 覚が持続する食べ物は数少なく、これを繰り返し行っているうちにマヨネーズを食べると いう習慣性を持った。

山下さんは“マヨラー”についても冷静に分析する。「マヨラーのようなブーム的なことはマヨネーズにとってはいいことだが、一過性で終わってしまうのはメーカーとしては好ましくない」。続いてマヨネーズを色々なものにかけて食べることが続いている背景として「コクとうまみが増すからだ」と核心を捉えている。「これは消費者調査をしてわかったことだが、例えばお好み焼きにかけると全体のバランスが良くなり、深みのある味覚が長く続くというコメントが届いたかと思えば、焼きソバに使うとウェット感が出て食べやすくなるとか、冷やし中華のタレに混ぜると味の厚みが出るとか、様々な例が挙がっている。味噌、しょう油、ケチャップと合わせても、そのものの味を殺さないで本来の味が増すような働きが強くなる。そういったところがマヨネーズの消費を伸ばしている要因ではないかと思う」と説明する。

キユーピーマヨネーズ

さらに現在、マヨネーズ市場が成長している要因のひとつに「ローカロリー」製品の需要拡大が挙げられる。今年9月7日に発売された「健康エコナ マヨネーズタイプ」(発売元:花王)は、中性脂肪がつきにくい食用油としてヒット商品の仲間入りを果たした「健康エコナ」を使用した商品として注目を集めている。これは「高機能食品」「コレステロール制御食品」分野のマーケットを意識したもので、マヨネーズ市場にもその波が押し寄せてきたと言えそうだ。すでに日清製油が約20年前にノンコレステロール「日清マヨドレ」を発売し、定番商品となっていたが、最大手キユーピーも今年2月、「キユーピーゼロノンコレステロール」を発売。この商品では特許技術を用いてノンコレステロールを実現した。マヨネーズは大好きだが、コレステロールやカロリーが気になる中高年やダイエットを意識する女性をターゲットとした「ローカロリーマヨネーズ」「ノンコレステロールマヨネーズ」が新たなマーケットを開拓している。

花王 健康エコナ 日清マヨドレ
キユーピー

■マヨネーズ・ジェネレーション誕生の背景

一方、マヨネーズ市場で欠かせないのが若者の支持。カロリーやコレステロールをそれほど切実な問題として捉えていない若者世代では、もはや「常食」と言われるほど食生活に浸透している。特に10代半ばから20代前半はまさに「マヨネーズ・ジェネレーション」とでも言うべきコア・ユーザーが多い。若者にとって今や身近な存在であるコンビニにマヨネーズ関連商品が登場したのは約20年前。1983年、「セブンイレブン」が最初におにぎりの「ツナマヨネーズ」を発売。1989年にはマクドナルドがマヨネーズで味付けした「てりやきマックバーガー」を発売。この頃からマヨネーズは様々な料理に使われ始め、ファーストフード店やファミリーレストランがマヨネーズを積極的にメニューに取り入れるようになる。

マヨネーズをこよなく愛する人たちを総称する「マヨラー」なる言葉が登場したのは、1997年とされている。1996年に安室奈美恵が大ブレイクし、“アムラー”と呼ばれるフォロアーが登場。篠原ともえのような「ハデかわいい」ファッションの女の子を“シノラー”、同年にはシャネル愛好者を“シャネラー”と呼ぶなど、共通の趣味嗜好を持つグループを「〇〇ラー」と表現することが定着。その後、「スマップ」の香取慎吾が「チューブからそのままマヨネーズをすするくらいマヨネーズ好き」と自らマヨネーズ愛好者であることを“カミングアウト”するなど“マヨラー”は市民権を得る。1998年2月には、「朝日新聞」朝刊家庭欄に「味つけ何でもマヨネーズ」という記事が掲載、本文に“マヨラー”という言葉が紹介されるに至った。

お菓子業界にマヨネーズ味が進出したのも1997年頃。カルビーが「かっぱえびせん マヨネーズ味」「ポテトチップしょうゆマヨネーズ」を発売、一気にマヨネーズ味のスナック菓子が市場にあふれる。カルビーはその後、「ポトテチップス 明太子マヨネーズ」「ポテトチップス ソースマヨ」「かっぱえびせん ピリピリマヨネーズ味」「かっぱえびせん つぶつぶ明太子マヨネーズ味」など数多くのバージョンを重ねる。今日、コンビニに出向けば、各社が競うようにマヨネーズ風味のお菓子を販売し、ディスプレイされている光景を見ることができる。

一方、女子高生を中心とした「食べ合わせシリーズ」が身近な遊びとして密かなブームとなったのもこの頃である。ちゃめっけあふれる遊び心と、若者に浸透したミクスチャー文化が身近なところで顕在化した例である。「牛乳と○○を一緒に食べると、○○の味になる。試してごらん」といった噂は携帯電話やメールの普及とともに女子高生の間で広く伝聞され、新たな“都市伝説”を生み出していく。荒唐無稽なものから具体的なものまであったが、多くは最も身近にあるファーストフードとコンビニの商品、調味料同士の組み合わせが対象であった。やがて「フライドポテトにマヨネーズをかけるとおいしい」「納豆巻きとマヨネーズは抜群の相性」「レトルトカレーはマヨネーズで味付け」といった実際に役立つ組み合わせメニューが“定番”として残っていく。同時にマヨネーズは他の調味料や個性的な味覚との相性が良いことも発見される。それらのほとんどは言語を短縮して、ツナマヨ、チーズマヨ、七味マヨ、からしマヨ、わさびマヨ、カレーマヨ、明太マヨ、チリマヨ、トマトマヨ、味噌マヨなど愛称のように呼ばれていく。中にはツナマヨやからしマヨ、わさびマヨのように実際に商品化されたものもある。このようにして1990年代末に同時多発的に誕生した10代後半~20代前半の“マヨラー”が、様々な食べ合わせを発見し、貪欲に試食を続けていく。これが今日の“マヨネーズ・ジェネレーション”の基盤となったのである。

東急プラザ8階の「辻クッキングスクール渋谷東急校」校長の味田(みた)さんは、マヨネーズの浸透ぶりを次のように話す。「レギュラークラスでは普通にマヨネーズを料理に使っている。実は魚の上にマヨネーズを乗せて一緒に焼く“文化焼き”など、古くから料理としてあった。味をやわらかくし、簡単に味を変えることのできるマヨネーズは重宝している」。昨今では低カロリー、ノンコレステロールのマヨネーズが話題を集めているが、味田さんは「ノンコレステロールの『健康エコナ マヨネーズタイプ』の人気は家庭の奥さんが中心。若い子はコレステロールなど、切実な問題としては気にしていない様子」と寸評する。さらに身近なエピソードを披露。「先日、教室で普通の巻寿司を作った際に、何人かの生徒から『マヨネーズを下さい』という申し出があった。カリフォルニアロールならわかるが、普通の巻寿司に醤油でなく、マヨネーズをつけるとは、私も新鮮だった」。クッキングスクールでもマヨネーズは料理に欠かせない存在になっている。

辻クッキングスクール

2002年4月には、マヨネーズ本の集大成というべき「マヨネーズ大全」(カベルナリア吉田著/データハウス刊/1,600円)が発売。マヨネーズ誕生物語、日本マヨネーズ食卓史、「日本人」とマヨネーズ、全国のマヨネーズ、マヨネーズとの食べ合わせ(試食)など、マヨネーズを多角的に捉えた貴重な一冊である。編集を担当した同社の中村さんは「著者である吉田氏の持ち込み企画だが、マヨネーズは身近な商品であり、地方限定商品もある。著者がすでに多くの資料を持っていたことと、マヨラーという言葉も定着し、マヨネーズの調味料としての地位も上がっていたので、これは本になると判断した」と、発刊の経緯を話す。表紙に様々なマヨネーズの容器やパッケージの写真を並べたところ、中村さんは「マヨネーズのパッケージは想像以上に華やかで明るく、モダンな色づかいであることに気づいた。これがしょう油の容器だったら、これほど華やかな雰囲気は出なかっただろう」と感想を語る。

データハウス
マヨネーズ大全

■センター街を中心に渋谷を浸食するマヨ・メニュー

外食産業に登場したマヨネーズ料理は、ファーストフード、クレープ、お好み焼き店、イタリア料理店、パスタハウス、和食店、寿司店など、様々な飲食業態に広がりを見せる。

「マヨネーズラーメン」で名を馳せた「喜輪味(きわみ)ラーメン」。都内に7店舗を展開し、今秋には2店舗が加わる。運営はフードベンチャーの「インター・ビジネス・リンク」(本社:港区)。宇田川店店長の石田さんによると、女子高生の娘を持つ社員から「娘が市販のラーメンにマヨネーズをかけて食べている。試してみたら、これがなかなかうまい」というエピソードが企画会議であがったことが商品化の発端。1号店の下北沢店で販売したところすぐさま話題を集め、1999年にオープンした宇田川店では、開店と同時に「マヨネーズラーメン」(300円)を発売した。作り方は(1)器に醤油ベースの元ダレを入れ、続いてそこに特製マヨネーズを注ぐ(市販のマヨネーズは酸味が強いので、同社オリジナルのマイルドなマヨネーズを使用) (2)元ダレと特製マヨネーズを混ぜる (3)スープを入れる (4)麺を入れて完成。マヨネーズの風味がスープにまるみを出し、クリ-ミーでマイルドな仕上がりとなっている。

石田さんは「まず、女子高生の間で流行し、その後、数多くの取材を受け、今では客層は広がった」と説明する。他店では380円で発売しているが、同店は「マヨネーズラーメン」で有名になった店なので料金は300円に据え置き。現在でもお目当ては「マヨネーズラーメン」。「来店者の半数が注文する」(石田さん)という。「特に女性客が多く、みんなマヨネーズ好き。最初はジョークで食べた人が次から常連になるケースが多く、性別・年齢にかかわらずリピーター率は高い」と、「マヨネーズラーメン」効果を語る。一方、波及効果は違う面でもあらわれる。「地方からウチに食べに来た方から『地元でもマヨネーズラーメンを始める店が登場した』と聞くなど模倣も行われている」(石田さん)という。喜輪味ラーメン270円、塩ラーメン290円と低価格。マヨネーズチャーシューメン(480円)もある。

喜輪味ラーメン
喜輪味(きわみ)ラーメン マヨネーズラーメン

牛丼にマヨネーズをかける若者も今では珍しくない。大手牛丼チェーンの「すき家」では2001年2月、トッピングメニューとしてマヨネーズ(50円)を導入し、好評を得ているという。「渋谷井頭通店」(宇田川町)でも牛丼やキムチ牛丼にマヨネーズをかけて食べる若い女性を多く見られる。「すき家」を経営する「ゼンショー」(本社:港区)社長室の本多さんによると、マーケティングの担当者がカフェでマーケティング活動をしている時に、女子高生同士が「牛丼にマヨネーズをかけたらおいしかった」という会話をしていたことが導入のきっかけであったという。「女子高生が牛丼にマヨネーズをかけて食べるという話をたびたび耳にし、また当時、マヨネーズが注目されているという雑誌の記事も多く出回り、消費者のニーズにあったものを敏感に対応していくことを貫いている当社としては、マヨネーズの販売を決定した」(本多さん)。

次々と新たなメニュー開発を行う同社だが、新商品に対する社内での反応は不評なことが多いという。「ハーブチーズ牛丼も、マヨネーズも当初は同じく不評だった」と、本多さんは苦笑する。食わず嫌いや女子高生たちとの食生活の違いもあったが、「しかし、実際にかけてみたら意外においしかった。マヨネーズの導入により女子高生や、これまで牛丼店に足を運ぶことのなかった方を取り込めるのではないか。マヨネーズはそのための大きなアイテムだと考えた」という。本多さんはやがて身近にも“マヨラー”を発見する。「当社の新入社員は100人ほどいるが、普通に『キムチ牛丼』にマヨネーズをかけて、キムチとマヨネーズが混ざった牛丼をおいしそうに食べる姿を目の当たりにした。“マヨラー”という世代を大学時代に経験してきた彼らにとって、それは普通のこと。自分たちとは食生活が違うのかなと思った」。本多さんはマヨネーズ文化の定着を「どこの国の何にかけてもおいしくトッピングしできるメニュー」と定義し、コンビニのおにぎりに「ツナマヨ」が登場し、明星「一平ちゃん」などインスタント焼きそばに「からしマヨネーズ」がつくようになった頃から急速にマヨネーズ文化が浸透していったのではないかと分析している。「要はマヨネーズが和食に合うことがわかったということ。特にお米との相性は抜群。マヨネーズの原料は卵なので、米との相性はいいはず」とまとめる。

ゼンショー
すき家 牛丼・マヨネーズ 牛丼・マヨネーズ

全国で複数の業態のファーストフード店を展開する「ピーターパンモコモ」(本社:新宿区)が運営するタコ焼・タイ焼の「一口茶屋」(パルコパート1)では、えびマヨネーズ焼3ヶとほたてマヨネーズ焼3ヶから成る「マヨ焼コンポ」(380円)と、マヨネーズ仕立ての「えびマヨネーズ焼」(380円)が女子高生に大人気。同社経営企画室広報担当の飯田さんによると、2点ともすでに定番メニューであるという。「当初、商品は大たこ焼(380円)だけだったが、実験的にマヨネーズ焼を販売したところ、爆発的な反響を得た。若者に人気で、渋谷では外せない品揃えとなっている」と話す。

ピーターパンコモコ
一口茶屋

センター街入口近くのダッキープラザビルの飲食テナントはすべてマヨネーズ料理が看板。「スパゲッティ屋DON'A渋谷店」(B1F)では「じゃがマヨ明太子」(880円)が同店の人気メニューNO.2にランクイン。他にも「サーモンマヨのせごまソース」「北海道ポテトのツナマヨクリームソース」などマヨネーズを使った料理は多い。同店は渋谷エリアに宮益坂店、道玄坂店、竹下通り店があり、どの店でもマヨネーズ系メニューは好評とのこと。お好み焼き・もんじゃ焼き「ぱすたかん」(4、5、6F)ではオリジナルの「豚チーズマヨネーズ焼」(880円)ほか「プリプリえびのごまチーズマヨネーズ焼」「サーモンとホタテの明太チーズマヨネーズ焼」など、こちらもマヨネーズ系がいっぱい。レストラン「ダッキーダック渋谷店」(2、3F)では「具だくさん明太子マヨクリーム」(930円)の他に「さわやかハーブのマヨトマト」「チキンときのこのマヨみそ風味」「ほくほくポテトの明太子マヨネーズ」などやはりマヨネーズ系メニューが盛りだくさんである。3店舗を運営する「東和フードサービス」販売促進担当の早坂さんは「渋谷に集まる若者にマヨネーズ系料理は欠かせない。意識して品揃えしている」と話す。

東和フードサービス
スパゲッティ屋DON'A渋谷店 じゃがマヨ明太子

その他、スペイン坂のピザハウス「ピエトロ」では、フレッシュサラダとマヨネーズをトッピングしたトマトソースのピザ「プリマベーラ」(900円)が人気。同じくスペイン坂のジャズバー&カフェ「ベイビー・トーク」では、ツナマヨネーズのホットサンド(650円)が女性に好評。宇田川町のパスタハウス「赤とんぼ」では和風パスタの意欲作「地鶏とごぼうの胡麻マヨネーズ」(980円)が人気メニューに加わっている。

和食店でもマヨネーズ料理は少なくない。創作寿司店の定番メニュー「カリフォルニアロール」はマヨネーズを使った逆輸入寿司として人気メニューだが、「パルコ」パート1のレストラン街の廻る寿司「dai-sushi」では「エビにキャビアマヨネーズ」(300円)が定番メニュー。宇田川町の居酒屋「三四味屋」の「じゃがいもたこの明太マヨ焼」(750円)は酒に合うメニューとして好評。定食チェーン「大戸屋」の「まぐろ竜田サラダ定食」はマヨネーズがたっぷりかかった、カッパッチョ風料理。女性に支持される料理である。このように渋谷の飲食店を例に挙げれば、枚挙にいとまがない。

ちゃんと 大戸屋

1925年、日本にマヨネーズが誕生した際に20代であった世代の子供たちがすでに親となり、中学生・高校生の子供を持つ年代に差しかかっている。高度経済成長時代に食卓でマヨネーズを食して成長した世代が現在40代~50代を迎え、その世代の子供たちはあふれる商品と情報に囲まれて、今日マヨネーズを何にでも合うオールマイティーなマヨネーズを上手に利用しているのである。生まれた時から多様なマヨネーズに囲まれて育った世代にとって、それは空気のような存在と言えそうだ。

もともと恵まれた気候風土と島国であることから、日本では新鮮な海の幸・山の幸が豊富に入手できる。これが「生食・サシミ文化」を生み出した。それがドレッシングの普及に一役買ったのである。また、淡白で繊細な日本米には、味の濃いおかずが必要であった。これが日本に様々な調味料を発展させた。しょう油、味噌はもとより、日本人にはマヨネーズ、ケチャップ、ウスターソースなど味のはっきりした調味料が好まれる。特に味の濃い日本式マヨネーズの卵黄、酢のうま味が淡白な日本の米にはベストマッチした。つまり卵黄と酢という日本人がこよなく食してきたアイテムから「ごはんに合うマヨネーズ」が完成したのである。

一方、マヨネーズはアレンジ好きの日本人の心をくすぐるアイテムであったとも表現できる。海外から取り入れた食文化を自分たちの舌に合うよう研究改良を重ねる姿勢は日本人特有のもの。それは音楽や映画、ファッションの世界でも共通する姿勢でもある。洋食にも和食にも合う味のマヨネーズは、アレンジ好きの日本人だからこそ愛されているのである。アレンジ好きの日本人は輸入品を独自の食べ物に“仕様変更”してきた。カレーしかり、ラーメンしかり。いつの間にか「カレーうどん」や「とんこつラーメン」を生み出したように、改良に改良を重ね、オリジナルがわからないほど独自の食べ物を作り出してきた。これが日本の食文化の変遷である。そもそも海外で生まれたマヨネーズが日本人向けにアレンジされ、ロングセラー商品となっていること自体がアレンジ文化の産物である。

マヨネーズ人気はもはや一時期のブームを超え、若者にとってごく当たり前の嗜好となった。渋谷では多くの飲食店でマヨネーズ系料理は定番メニューとなっている。味覚や嗜好性の変化と共に、既存の食べ物にマヨネーズをかけたり、調味料とマヨネーズをかけあわせて新しい味覚を発見・創造したりしている彼らは、視点を変えれば“味覚のリミックス”を楽しんでいるようにも映る。若者にとってマヨネーズはサンプリング素材として抜群の応用力を持っていたとも解釈できそうだ。同時に一見相容れない食材同士をマッチングさせる「仲介役」としてこれほど柔軟なアイテムも珍しい。洋食から和食、何に使ってもおいしく食べられるマヨネーズはもはや、渋谷に集まる若者にとって音楽や映画同様、五感を大いに刺激してくれる必須アイテムとなっている。

ピエトロ 赤とんぼ 大戸屋
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