人気作家・小林エリカさん、渡米後初の個展「US」-表参道で

若手作家・小林エリカさんが米国帰国後初の個展。会場には米国横断の記憶が残る作品も

若手作家・小林エリカさんが米国帰国後初の個展。会場には米国横断の記憶が残る作品も

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 独特な表情を浮かべる少女が印象的なコミックや、反戦思想を「泊まり歩きプロジェクト」形式でつづった書籍など、独自の視点から繰り出される表現で注目を集める若手アーティスト、小林エリカさんの個展「US」が10月14日より、表参道の「GALLERY 360°」(港区南青山5、TEL 03-3406-5823)で開催されている。

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 1978年東京生まれの小林さんは、1998年に雑誌「H」(ロッキング・オン刊、今年休刊)の連載コミック「爆弾娘の憂鬱」でデビューし、小説やドローイングなど幅広い分野で活躍。昨年から今春にかけて渡米、NYのアーティストインレジデンスで創作活動に励み、帰国前には約1カ月かけて米国横断の旅も経験した。

 帰国後初の本格的な個展となる同展では、ビート・ジェネレーションを代表する作家のひとり、ジャック・ケルアックの自叙伝的小説「On the Road(邦題=路上)」と、長期滞在したアメリカ、生まれ育った日本をテーマに、横断中に描いたドローイングや日米で出会った人々に小林さん自らインタビューし18歳の記憶を探った作品など、旅の記憶も鮮やかな2つのシリーズ作品とドローイングを中心に展示する。

 小林さんが過ごした米国時間と、その際の東京の時間を同じ絵に刻んだ「わたしの時間/あなたの時間」は、NYから西海岸へと向かう米国横断中に小林さんが現地で実際に描いたドローイングを、シルクスクリーンで再現した作品。「遠く離れた米国の街と東京の距離が、恋人などに思いをはせる瞬間に「パッと結び付く瞬間が面白い」と小林さん。旅では、食べたドーナツや朝食、原爆実験が行われたニューメキシコ「トリニティーサイト」へ向かう道の景色など、何気ない風景を描き立ち止まってみることで「時間の流れの変化」(小林さん)を感じたという。

 小林さんの米国横断に同行したのが、小林さんがNYで知り合ったという台湾人女性アーティストのイエローさん。ケルアックと、友人ニール・キャサディーとの交流を描いた「On the Road」に着想を得た小林さんは、旅を共にしたイエローさんと自身を描いたドローイングも、今回制作した。

 米国縦断の旅からは、ケアルックの短編集「Lonesome Traveller(邦題=孤独な旅人)」をもじり、「孤独な旅人へ」と題した作品も生まれた。ボックス作品には旅の様子を日記形式でつづった約3メートルにも及ぶテキストと写真、旅先で偶然手に入れたビーズなどの思い出を詰め込んだ。

 旅の記憶をたどる作品群と並び、会場で多くのスペースを占める継続中のシリーズ作「わたしたちの歴史-わたしたちは18歳だった。」は、日米で出会った人々に「18歳の時のこと」を聞き、それぞれのエピソードを小林さんがテキスト化し、実際に18歳だった時の写真と並べて展示したもの。

 今回米国を旅した小林さんが、初めてNYを訪れたのも18歳の時。シリーズの中には、初めての米国で撮った写真とともに、小林さんとボーイフレンドそれぞれの「18歳」の記憶を振り返ったテキストを収めた作品「わたしとあなたの1996年」も。すでに150人以上にインタビューしているという同シリーズは、今後書籍化も考えているという。

 営業時間は12時~19時。日曜・祝日定休。今月29日まで。

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