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表参道で「三島由紀夫」題材の企画展 初長編作・遺作テーマに新作アートなど

小説家・平野啓一郎さんの作品

小説家・平野啓一郎さんの作品

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 小説家・三島由紀夫を題材にした展覧会「永劫回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100年=昭和100年」が7月15日、表参道の商業施設「GYRE(ジャイル)」(渋谷区神宮前5)3階のギャラリー「GYRE GALLERY」(TEL 0570-05-6990)で始まる。

会場の様子

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 1925(大正14)年生まれの三島(本名=平岡公威)は、1949(昭和24)年に初の書き下ろし長編「仮面の告白」を刊行。代表作は新潮社文学賞を受賞した「潮騒」、読売文学賞を受賞した「金閣寺」など。1970(昭和45)年に自衛隊市谷駐屯地で自決した。

 同展を担当したキュレーターの飯田高誉さん(高ははしご高)は、「生意気ながら文学者としては通俗的な作家という印象を持っていた」と言うが、中学2年の時に三島が自決したことで興味を持ち、「なぜ、自決したのか動機を知りたかった」と、高校生で全集を購入。「小説からは全く解明できなかった。今でも解明できていないが、三島が今生きていたらどういうことを言うのだろう、という興味を持っている」と同展を企画したという。

 昭和元年に生まれた三島は、今年で生誕100年を迎えるのと同時に、昭和も続いていれば今年で「100年」。飯田さんは「昭和と共に生きていた、時代精神を体現していた人」と三島を称し、「単なる一作家としての軌跡を追うのではなくて時代というものも追うことができる」と企画に至った経緯を振り返る。「次世代に三島由紀夫と出会ってほしい」と思いを込めた。

 会場には、「仮面の告白」、遺作となった4部作「豊饒の海」をテーマに、作品が並ぶ。飯田さんが「最初にお願いした」のが、アーティスト森万里子さん。森さんは、三島の作品に登場する仏教の思想「唯識」の概念「阿頼耶識」についてリサーチする中で「豊饒の海」を読んだという。同展には、第1巻「春の雪」に登場する松枝清顕の魂を表現した「ユニティIII」、彩倉聡子の魂を表現した「ユニティV」、悟りの境地をイメージした「ユニティIV」の3部作を出品する。

 カナダのジェフ・ウォールさんの作品は「春の雪」第34章の、彩倉が車の中で脱いだ靴から砂を床に落とす一場面を写真で「再現」。現代美術作家の杉本博司さんは第2巻「奔馬」の右翼の青年が自決する最後のシーンを表現した作品と、最終巻「天人五衰」の最後に登場する「記憶もなければ何もない庭」を表現した作品という、同展に向けて今年の正月に相模湾で撮影した海景シリーズの2点を出品している。

 故・中西夏之さんのインスタレーション「着陸と着水」は、中西さんの妻で画家の直野宣子さん協力の下、同展バージョンで「再現」。友沢こたおさんは「仮面の告白」を題材に、同作の表紙をイメージした作品と、「好きなシーン」だと言う暑中休暇の場面の挿絵をイメージした作品を制作。2023年に「三島由紀夫論」を刊行した小説家・平野啓一郎さんは当初ステートメントのみ展示する予定だったというが、同書に穴を空けてさまざまなものを刺して磔刑図をイメージした作品を手がけた。

 音楽家・池田謙さんは同展のために楽曲を作曲。「三島が切腹した瞬間にどのような曲を聞いたか」を考えて、三島の声、リヒャルト・ワーグナーのオペラ、当時のフリージャズ、故・藤圭子さん、鶴田浩二、美輪明宏さんらの昭和歌謡などをサンプリングしたという。楽曲はヘッドホンで聞きながら会場内を見て回れる。

 開催時間は11時~20時。8月18日休館。入場無料。9月25日まで。

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