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渋谷区とJR東日本、落書き対策などで協定 アートで落書き被害対策強化へ

(左から)長谷部健渋谷区長とJR東日本常務執行役員首都圏本部長首都圏本部鉄道事業部長小川治彦さん

(左から)長谷部健渋谷区長とJR東日本常務執行役員首都圏本部長首都圏本部鉄道事業部長小川治彦さん

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 渋谷区とJR東日本が12月13日、落書き対策と帰宅困難者対策に関する協定を締結した。

あいさつする長谷部健渋谷区長

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 昼間人口が多い渋谷区は、2011(平成23)年の東日本大震災時には約10万人が帰宅困難者となり、駅前のハチ公広場などに多くの人が滞留した。外国人観光客も含めた来街者に、一時待避所への避難行動の認知を促し、帰宅困難者対策の一助となることを目指し2017(平成29)年から「シブヤ・アロープロジェクト」を展開している。

 区や商店会連合会、商工会議所などで構成する実行委員会が推進する同プロジェクトは、渋谷と「親和性が高い」アートを用いて一時避難場所の方向を案内するもので、2017(平成29)年から展開。大竹彩子さんやヒロ杉山さん、YOSHIROTTENさんなどを起用しながら、一時退避場所の方向を指す矢印をモチーフにした作品を現在9カ所に設置し、そのうち渋谷架道橋下、宇田川架道橋下、東京都水道局代々木増圧ポンプ場前の壁面が同社の施設となっている。

 区は落書きを「街の美化を損ない、体感治安の悪化とう悪影響を与えるもの」と位置付け、条例で所有者らに原状回復の管理義務を課しているが、落書き被害者に落書きを消去させることになるため「なかなか消去が進まない」のが現状だった。そのため2021年から区が主体となり落書きの消去を進めてきた。

 落書きが発生しやすい場所の特徴として、「夜間に人通りが途絶える」場所を挙げ、架道橋下は「条件にぴったりと合う場所が多く」落書きが描かれていることから、対策が急務だと考えた。同時にアートを描くのにも「最適な場所」と判断し協定締結に至った。

 これまで同社の施設の落書きの消去・アートを制作する際には、個別に協議を行い了承を得てから制作していたが、作業を打診し、同意を得て作業に移るまで約2カ月かかっており、その間に落書きが増えることもあったという。今回の協定を機に、同社の施設13カ所については作業予定を事前に通知するだけで実施することが可能になった。

 「迅速な」落書きの消去・アートの制作に加え、架道橋下など同社の施設に一時退避場所への避難誘導標識を設置することができるようになり、「落書きが描かれにくい状況」を生み出すと同時に、「さらに増える」と予測されるインバウンド客に対して発災時の誘導が「滞りなくされることにつながる」と考える。

 現在同プロジェクトのアートは多くが渋谷駅周辺に設置されているが、恵比寿や代々木などのエリアなどにも「大きく広がる一つのステップアップのチャンス」(長谷部健渋谷区長)となる。本年度中に2~3カ所、同社の鉄道施設にアートを描く予定。アーティストなどは最終調整中で、「インパクトのある、目立つような方」と交渉しているという。

 同社の常務執行役員首都圏本部長首都圏本部鉄道事業部長小川治彦さんは「鉄道施設に対する心無い落書きには心を痛めているし、帰宅困難者問題も我々にとって非常に大きな課題」とし、「架道橋のような落書きされやすい場所を明るくスタイリッシュに飾っていただく、一見遠い関係にあるような独立した問題をアートの力で一括して解決しようという非常にチャレンジングで斬新な取り組みに協力していきたい」と期待を寄せる。

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