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原宿・東郷記念館が災害時の帰宅困難者受け入れ施設に 渋谷区と支援協定

災害時の帰宅困難者支援に関する協定を締結した(左から)長谷部健渋谷区長と東郷神社の福田勉宮司

災害時の帰宅困難者支援に関する協定を締結した(左から)長谷部健渋谷区長と東郷神社の福田勉宮司

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 渋谷区と宗教法人東郷神社(渋谷区神宮前1)が1月30日、災害時の帰宅困難者支援に関する協定を締結した。

池の湧き水を視察する長谷部健渋谷区長と福田勉宮司

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 渋谷区内で災害が発生し、公共交通機関が止まった場合などに帰宅困難者が発生した際の対応に関する協定。同法人は、発災時に区の要請などに基づいて、同法人が所有する原宿・明治通りの東郷神社内の東郷記念館などに帰宅困難者を受け入れる。

 受け入れ施設となるのは、結婚式場などで活用する東郷記念館の1~4階の洋室(4室)と和楽殿の計4室(1529平方メートル)で、900人を収容する。旧写真室など4室(40平方メートル)を備蓄保管場所として活用し、自主財源で賄う水は8100リットル、乾パンなどの食品8100食、アルミブランケット900枚などを備えていく。

 1969(昭和44)年に開館した東郷記念館は、老朽化などから2020年末に休館し建て替え工事を行い2022年3月にリニューアルオープンした。

 建て替えは老朽化もあり5~6年前から計画。阪神淡路大震災後に足を運んだ神戸の繁華街で被害状況を目にした福田勉宮司は、発災時には観光地でもある竹下通り近くに位置する同神社にも多くの人が訪れるとかねて考えていた。実際に2011(平成23)年の東日本大震災発生時には帰宅困難者70人ほどが神社に訪れ、茶を提供するなどしたという。

 そのような背景もあり、30年以内に首都直下型地震が発生する可能性が高いなか、建て替えに合わせて設備を整えた。63時間連続稼動可能な発電機を備えたほか、敷地内(屋外)には、仮設トイレを設置できるよう下水道管路につながるマンホールも5カ所設置。敷地内の池には湧き水が出ていることから、その水を飲み水にできるように浄化する設備も導入する予定。外国人への対応として通訳機も用意するほか、少人数のスタッフだけでは対応しきれないと考え、避難者の中で余力がある人にも手伝ってもらうシステムも組んでいるという。

 原宿生まれ・育ちの長谷部健渋谷区長は、小学校の頃に敷地内の池でコイを釣ったことがあるエピソードを明かしつつ、「(原宿は)特に休日には多くの観光客であふれる。何かあった場合は多くの帰宅困難者の問題が発生することが明白。このような場所があることを多くの人に知ってもらって、安心して街に来てもらいたい」と話した。福田宮司は「(大きな災害が)起きないことを祈っているが、柔軟に対応できるように考えないと、救える命も救えない」と力を込める。

 帰宅困難者受入施設の拡充を図っている渋谷区は、区業施設やオフィスビル、大学などと連携を進めており同記念館で57カ所目となる。基本的に区の要請に合わせて受け入れ施設として開設されるが、区から連絡が取れない場合なども想定し、要請が無くても震度階級によって施設の判断で受け入れ施設として開設してもらうなどスキームを構築している。

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