
建築家・内藤廣さんの建築思考を紹介する企画展「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」が7月25日から、渋谷ストリーム(渋谷区渋谷3)ホールで開催される。
2023年に島根県芸術文化センター「グラントワ」内「島根県立石見美術館」で開催された展覧会の巡回展。1950(昭和25)年生まれの内藤さんは、早稲田大学大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン・マドリッド)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981(昭和56)年に内藤廣建築設計事務所を設立。「鳥羽市立海の博物館」(三重県)や「とらや赤坂店」などのほか、渋谷エリアでは東京メトロ銀座線渋谷駅の特徴的なM形アーチの駅舎の設計も手がけている。
会場は3フロアで構成。4階には、学生時代の卒業設計、「代表作」という「海の博物館」「牧野富太郎記念館」など1990年代の主要プロジェクトや、2001(平成13)年以降に手がけた「日向市駅」など4つの駅舎、「島根県芸術文化センター/グラントワ」など2000年代前半のプロジェクトを紹介。未公開インタビュー映像5本も初上映する。
5階では、2006(平成18)年以降の実現に至らなかったプロジェクト8点、「高田松原津波復興祈念公園 国営 追悼・祈念施設」など復興関連のプロジェクト4点、「多摩美術大学 新棟・講堂」など最新プロジェクトを含め、2010~20年代の9点を紹介。「現在進行形の建築思考」に迫る内藤さんの撮り下ろしインタビューも上映する。
6階には、「渋谷」と「益田」という異なる都市をテーマにした新作模型と映像作品を展示。駅周辺を中心とした約300メートル四方は200分の1スケールで俯瞰(ふかん)できる都市模型で展示。東京メトロ銀座線渋谷駅や駅東口と渋谷ヒカリエをつなぎ明治通りを渡る「渋谷駅街区東口二階デッキ」、計画中の「西口3階上空施設(仮称)」の20分の1スケールの模型なども。益田エリアは、島根県芸術文化センター「グラントワ」を中心に市街地を200分の1スケールで再現した模型や、グラントワの大ホールや中庭、美術館ロビーの20分の1スケールの模型などを展示し、渋谷と益田を対比させる。
場内には内藤さんの近年の著作から抜粋した「赤鬼的」「青鬼的」な言葉を壁面に展開する「言葉の壁」の展示も行うほか、各作品には内藤さんの中に宿る「赤鬼」「青鬼」などの視点の作品解説を添える。
場内では、7月中旬発売予定の関連書籍「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘」や既刊図録「建築家・内藤廣 BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」(4,290円)、ポストカードなどを販売予定。
関連企画として初日には渋谷ストリーム稲荷橋広場で島根県石見地方の伝統芸能「石見神楽」の公演を、同28日には渋谷スクランブルスクエア(渋谷2)東棟15階の「SHIBUYA QWS」内「スクランブルホール」で内藤さんの講演を予定する。
内藤さんは「2023年の島根県益田市での展覧会の時に、東京からもたくさんの方が見にきてくださった。その中に私が関わっている渋谷の再開発に関係する方たち、とりわけ商店会のメンバーもいた。彼らから、『これをぜひ渋谷でやってほしい』との声があり、その熱意に応えるつもりで、この渋谷の展覧会を催すことにした」と経緯を明かす。
展示内容については、「益田での展示を基にしつつ、美術館とは異なる場所での展示なので、展示の仕方も変え、大きく加えたのは渋谷に関する展示。これから渋谷がこうなっていく、というまちづくり全体を俯瞰する模型を多くの方に見てもらいたかったので、新たに制作した」と言う。
「『過疎』発祥の地と言われる益田と、『オーバーツーリズム』で人が集まりすぎる渋谷。この二つは我が国の都市が抱える問題を典型的かつ対比的に象徴しているようにも見える。建築家としてのこれまでの積み上げと延長の上に現在の私の立ち位置があるとすれば、それを見ていただき、この時代に対する思いの一端を共有していただけたら」とコメントを寄せる。
入館料は、一般=1,500円、大学生以下=1,000円、未就学児無料。8月27日まで。