特集

無店舗系企業・ブランドが続々開店
渋谷・個性派リアルショップ事情

■エンタテインメント企業がギャラリー専門店開設

2003年11月15日、青山「こどもの城」近くにチェコアートのセレクトショップ「ano(アノ)」(TEL 03-3407-6560)がオープンした。同店のマーチャンダイジングを手掛けるのは映画や映像の企画・制作・配給などを手掛けるレンコーポレーション(杉並区)。同社では1999年8月、チェコアニメの秀作を集めた初の企画「チェコアニメ映画祭'99」を中野武蔵野ホールで開催した。それまでほとんど知られていなかったチェコアニメを日本に紹介し、そのレベルの高さが話題を集め、同館の動員実績を塗り替えた。同社取締役の深澤さんは「共産主義時代、国策でもあったチェコアニメは、生産量も世界一を誇っていた。当然、アニメの教育水準も高く、結果としてレベルの高いアニメが多く輩出された。その後も、実力のあるアーティストが多く集まり、水準の高い作品を送り出していることから、映画祭での紹介を機に、日本でも話題を集めた」と話す。

同社では、その後も個性豊かなチェコのアニメ作品を次々と日本に紹介し、その度にチェコから輸入した作品関連グッズを上映館や上映館近くの書店などの一角で販売を行ってきたが、やはり、販売期間が限定されることもあり、ファンからは常設店を望む声も少なくなかった。昨夏、新宿のギャラリーで開かれたチェコアニメ展で関連グッズを販売したところ、予想以上の手応えを得たことから、同ギャラリーのオーナーとのコラボレーションにより、3ヵ月後、常設店として同店オープンの運びとなった。客層は「圧倒的に20代~30代前半の女性が多く、次いで学生さん。全国のチェコアニメファンが上京したついでに立ち寄るケースも多い」(深澤さん)と話す。

約10坪の店内にはチェコのリトグラフ、ポスター、マリオネット、美術書籍、インテリア雑貨などが並ぶほか、チェコアニメに関するDVDや書籍などの日本のグッズも集積されている。売れ筋はチェコアニメの絵本やDVD。チェコでは国民的人気のモグラのキャラクター「クルテク」の絵本は、日本のチェコアニメファンの間では「定番の」人気グッズになっている。一方、チェコのアニメに比肩するのがポーランドのポスター。ポーランドのポスターアートは世界的にも水準が高く、同店ではチェコアニメ同様に注力しているジャンルだ。リアルショップ出店により、これまで実現できなかったプロモーションも可能となった。3月19日から4月1日まで、同店近くの青山ブックセンター青山本店と連携して「チェコアート」展の開催が決まっている。今後、同店では常設店ならではの企画を通じて、チェコアニメ・カルチャーを活性化させながら、新たな顧客獲得を目指す。

チェコアートセレクトショップ ano レンコーポレーション
ano(アノ) ano(アノ) ano(アノ) ano(アノ)

■オンラインショップ、通販系企業がリアル店舗開設へ

セーレン(本社:福井市)は2月20日、同社オリジナルブランド初の直営店となる「anetmonet(アネットモネット)代官山店」(TEL 03-3477-0755)を、ラ・フェンテ代官山2階にオープンした。同ブランドは2003年2月、インターネットのみでの限定販売用のオリジナルブランドとしてスタートした。同社ならではの染色技術を生かした大胆なプリントと鮮やかな発色で、「フェミニンでキュート」「クールでシック」といった相対する二面性を表現しているのが特徴だ。同店では、20代女性をターゲットにタンクトップやTシャツ、長袖シャツを中心にしたトップス各種、スカート・パンツを中心としたボトムスの他、小物などを取り扱い、価格帯はTシャツ6,200円から、スカート8,900円からとなっている。

同社ビスコテックSPAグループ長の多田さんは、リアル店舗出店の背景について「ネット販売の売り上げがすでに1店舗分を確保していることや、会員数がすでに約4,000人を突破し、顧客の出店要望が高まってきたことなどを背景に、昨年末あたりから物件を探し始めた」と話す。開店後は、場所柄フリーの来店客が多く、こうした顧客にもネット販売を告知することで、相乗効果を狙うと言う。各種産業用素材等を製造する総合素材メーカーである同社では、その総合力を生かし同ブランドで本格的なSPAを実践している。SPAとはspecialty store retailer of private label apparelの略、つまり製造小売業を意味し、自社で商品企画から生産加工を行った商品を店頭で売り切る仕組み。GAPやユニクロがこの仕組みを採り入れていることで知られる。「アネットモネット」でも、サンプル商品や最低限の陳列商品以外は在庫を持たず、ネットや店頭で販売状況に応じて随時追加生産・販売を行っているのが特徴だ。

オンライン販売を始めて1年後にリアル店舗の開設・・・こうしたスピード展開の背景には商品力やブランド力もさることながら本格的なSPAが欠かせなかった。自社生産だからできる多品種小ロット生産、しかも在庫ロスが発生しない点が、スピーディな展開を可能にしている。多田さんは「企画ありきで一定ロットを海外発注し在庫リスクを抱えるより、国内生産なら消費者の多様なニーズに細かく応えられる」と、国内生産の再拡大を予見する。

アネットモネット セーレン
anetmonet(アネットモネット)代官山店

カタログ通販の「住商OTTO」は3月24日、JR恵比寿駅・駅ビル「アトレ恵比寿」5階に初のリアル店舗「On View(オン ビュー)」を開店する。「住商OTTO」は、住友商事と世界最大級の通販会社ドイツオットー社の合弁会社で、日本国内では1986年から通販事業を手掛ける老舗ブランド。これまではカタログやインターネットを媒体に、レディスアパレルやファッション雑貨を販売してきた。2003年2月期の売り上げは395億円を誇る。

同店の店舗面積は約34坪で、店名の「On View=上映中」をテーマに、スクリーンなどをモチーフにしたカジュアルな空間演出を図る。同社広報の森岡さんは「住商OTTOの強みはインターナショナルのファッションをカタログで届けることだったが、今はネットなど販路が広がり、それだけが強みではなくなった。カタログ通販の主要顧客層は人口比同様40代~50代がピークだが、ファッション分野ということで同店では20代~30代をコア・ターゲット据え、新しい顧客開拓に結びつけたい」と、出店意図を説明する。

取り扱いアイテムの70%はカタログ商品だが、残りは独自の買い付けを行ったセレクト商品で、カタログのマーチャンダイジングとは一線を画したリアル店舗ならではの展開を打ち出す。さらに森岡さんは「もっとリアルタイムに、店頭と同じぐらいのスピードでカタログを作りたいという思いがあった」とも話しており、オンラインビジネス主体であった同社も、商売の基本でもある店頭マーチャンダイジングを改めて見直そうという姿勢が現れている。

住商OTTO
On View(オン ビュー)

■セレクトショップ向けサプライヤーが独自ブランド化

セレクトショップ「no°44」などを運営するシマムラ・トーキョー・コーポレーションは1月31日、「0044」のオンリーショップ「0044 Boutique」(TEL 03-5771-0044)を神宮前3丁目・原宿通り沿いにオープンした。「0044」は、同社のパリアトリエ「Shimamura Paris & Co.」が「no°44」設立以前から企画・生産してきたブランドで、1997年の設立当初はセレクトショップ「no°44」への商品供給からスタートしたが、その後、コレクションという形でショップオリジナルから脱却し、ブランドして独立した経緯を持つ。

現在ではパリ11区の直営店のほか、「ボンマルシェ」などのデパートでも取り扱っている。また、今春夏コレクションからはミラノの合同展示会に出展したり、ニューヨークのセールスオフィスにサンプルを預けるなど、フランス以外の国での展開も始まった。同店ではメンズ、レディスのフルコレクションを中心に、世界観を共有するデザイナーの服や靴、アクセサリーなどのセレクト商品も取り扱う。プレスの酒井さんは同店を「モードを知り尽くした大人のためのショップ、大人の店にしていきたい」と抱負を語る。商品は「やさしいトーンの色で、ナチュラルな素材のものに、アクの強いアメリカのアクセサリーを組み合わせたものが人気」(酒井さん)だと言う。今後は「セレクトショップの一ブランドではできなかったことを手掛けてみたい」(酒井さん)と言う。

シマムラ・トーキョー・コーポレーション
0044 Boutique

「洋服を作り続ける劇団」として設立されたアパレルユニット「シアタープロダクツ」は2月21日、初の直営店となる「THEATRE PRODUCTS SHIBUYA SHOP」(TEL 03-3477-5911)を宇田川町・渋谷ゼロゲートの3階にオープンした。シアタープロダクツは2001年10月、デザイン担当の武内さん、中西さん、企画広報を担当する金森さんの3人によって設立され、ニールドパンチを使った「はがして」手に入れる服や、プレハブ風の小屋をショップに見立てて「巡業」販売を行うなどパフォーマンス色のある発表・販売を行ってきた気鋭のブランド。

リアル店舗出店の背景について金森さんは「期間限定のショップやイベントで、消費者と交流しながら各地で販売を行う中で、毎日、消費者と出会える場所が欲しいなと思ったのがきっかけ」だったと言う。「そこで場所を探し始めた。ものすごい繁華街のど真ん中でやってみたかった。今までは自分たちの世界観を伝えるために時間も場所も限定してきたが、今度は不特定多数の人に対してどこまで出来るかを試してみたかった」と加える。ただし、シアタープロダクツにとっては単なるテナント出店ではなく、あくまでも「移動しない」店舗と捉える。これまで時と場所を変えてきた店が、たまたま365日、同じ場所にあるだけのことなのだ。

店舗の空間装飾には「パーマネントでないもの」を使った。「店を作り込んでもいずれ産業廃棄物になってしまうことに疑問を感じていた。ここで使っているものは全部再利用可能なものばかり」(金森さん)という言葉通り、店を仕切る壁代わりにシリアルナンバー入りのイタリア製の椅子約120脚を組み合わせて空間を構成するほか、ファッションショーなどで使った厚さ約10センチの平台などが組み合わせて使われている。ちなみに椅子120脚は1脚28,000円で予約販売されており、すでに10脚が売約済みだと言う。ちなみに引き渡し時期は1年後を予定している。さらに、演出の一環としてモデルが務めるマネキンが毎週1回(金曜・土曜隔週実施)店内でポージングを行い、空間にアクセントを添えているのも特徴だ。

金森さんは、開店後「今までの顧客に加えて、下の看板やディスプレイを見た通りがかりの人で、シアタープロダクツの活動を気にしていた人が来店くれることが嬉しい。開店前までは、そんな人達が本当にいるのかどうか不安だった」とも言う。やはり、リアル店舗ならではの手応えを感じているようだ。商品は同レディスのほかメンズライン「KINGLY THEATRE PRODUCTS」の販売も行う。2004年のテーマは「大自然」で、春夏では「前編」を、秋冬で「後編」を展開する。価格帯はパンツ2~3万円、ジャケット5~6万円。

シアタープロダクツ

通販やオンラインで先行する無店舗系企業・ブランドが続々とリアル店舗を構えている。消費者の利便性を考え抜いたオンラインショッピングが「ワン・トゥ・ワン」ビジネスの究極の姿と言われる一方、リアル店舗増殖の背景には何があるのだろうか。オンラインショップはまさに「オン」と「オフ」の世界。メーカーは、一旦顧客になれば、その後は理想の「ワン・トゥ・ワン」マーケティングが展開できるが、顧客にならない消費者とは接点が持ちにくいという側面がある。つまり、店頭を通りかかったり、ふらっと入店する偶然性や、あれこれと迷いながら店員とコミュニケーションするといったプロセスが、そこには見られない。こうした消費者との偶然の出会いや店頭での逡巡こそが、マーチャンダイジングの大きなヒントになるという見方が浮上しているのかもしれない。リアル店舗は、商売の原点でもある店頭に自社の商品を並べてみて、改めてその反応を確かめる実験の場でもあるのだ。

住商OTTOの森岡さんは「もっとリアルタイムに、店頭と同じぐらいのスピードでカタログを作りたいという思いがあった」と話していた。マーチャンダイジングでは、プログラムや回線の早さといったデジタル環境の進化も必要だが、実は店頭にこそ最大のスピードが求められる場なのかもしれない。消費者のニーズに応じて巧みに商品を提案し続ける店頭にこそ、「売れ筋」を生み出すヒントがありそうだ。

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