浮世絵に描かれた「おじさん」に焦点を当てた企画展「浮世絵おじさんフェスティバル」が現在、原宿の浮世絵専門美術館「太田記念美術館」(渋谷区神宮前1、TEL 03-3403-0880)で開催されている。
2023年に開催した「広重おじさん図譜」以来となる、浮世絵に描かれた「おじさん」に焦点を当てる企画展。岐阜の中山道広重美術館で開催された同様のコンセプトの展覧会を着想源に、同館の所蔵作品で構成した。
展示数は150点以上で、前後期で入れ替える。「広重おじさん図譜」では歌川広重の作品に焦点を当てたが、今回は葛飾北斎や歌川国芳、小林清親などの作品も増やし、「より多彩な『おじさんワールド』」を感じられるようにした。同展は、広重の作品を集積する「広重おじさんワールド」、さまざまな絵師の作品を並べる「みんなのおじさん」、歌舞伎や武者絵、戯画などに登場するおじさんを紹介する「物語の中のおじさん」、群衆図を集めて「好きなおじさん」を見つける「おじさんを探そう」の、大きく4章で構成。場内では、作中のおじさんを拡大したパネルも並べる。
広重の「東海道五十三次之内 四日市 三重川」は、強風を題材にした名作として知られるが、同展では風で飛ばされた菅笠を追いかける旅人に注目。国芳の「東都名所 新吉原」には、「地回りなのでは」といわれる人物が、叫んでいるのか歌っているのか分からない口を開けた表情で描かれている。小林清親の「本所御蔵橋」は、隅田川に架かっていた御蔵橋周辺の夕暮れ前を描いた作品で、シルクハットやステッキなど洋装のおじさんの後ろ姿が影絵のように描かれている。制作年代は明治前期といわれ、作品には和装と思われる人物も描かれているのが特徴。
後期に展示する広重の「東海道五十三次之内 鞠子」は、静岡の宿場・鞠子宿を描いた作品。2人組の旅人が名物のとろろ汁などを笑顔で食べている姿が描かれている。同作のように、浮世絵に旅人2人組が登場するようになった背景には、十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」のヒットがあるという。広重の「東海道五十三次之内 御油 旅人留女」に描かれている旅人は、留め女(強引な客引き)から歯を食いしばって逃げようとしているような表情を見せる。渓斎英泉の「岐岨街道 鴻巣吹上冨士遠望」は、描かれている富士山とは反対側の上空を見上げている旅人と思われるおじさんに注目した。葛飾北斎の「諸国瀧廻 東都葵ヶ岡の滝」には、休憩中と思われる棒手振りが描かれ、そのうちの一人が背中を丸めてしゃがみ込んでいる。担当学芸員の渡邉晃さんは「おじさんに注目するにあたり、初めて拡大して見たら悲しい顔をしていた。表情まで見ていなかったので新しい発見があった」と振り返る。
冒頭の「ようこそ浮世絵おじさんフェスティバルへ」のコーナーでは、広重の「東海道 丗四 五十三次 二川」(前期)などを展示。宿場町・二川宿を描いた作品だが、作品中央付近に描かれている人物に注目。手荷物を持たずに扇子を広げて立っているだけだが、「すごくいい笑顔をしている」。描かれている位置や、他の人物より「微妙に」大きく描かれていることなどから、渡邉さんは「(広重は)この人を気に入っていたのかな」と想像する。
渡邉さんは「キャラクターとしての魅力を気軽に楽しめる展示である一方、おじさんに注目するという見方をすることで、浮世絵の細部を見ることになる。浮世絵師のうまさだけでなく、彫り師や摺師が丁寧に細かく仕上げていることのすごさ、細部こそ面白いという新しい魅力にも気づくことができると思う」と話す。
開館時間は10時30分~17時30分。月曜、2月3日・4日・24日は休館(2月23日は開館)。入館料は、一般=1,000円、大学・高校生=700円、中学生以下無料。3月1日まで。