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気鋭写真家・宮本隆司さんが捉えた「渋谷」 解体工事やスナップを写真集に

写真集「本気にすることができない渋谷」(インスクリプト)カバー

写真集「本気にすることができない渋谷」(インスクリプト)カバー

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 「100年に一度」と言われる大規模再開発が進み、日ごとに変化する渋谷駅周辺の様子を捉えた写真集「本気にすることができない渋谷」(インスクリプト)が6月7日、刊行された。

再開発が進む渋谷駅を捉えた一枚

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 著者は、世界各地の都市を巡り解体される建築物が変貌していく姿を独自の視線で捉えてきた宮本隆司さん。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、建築誌の編集部員を経て、1975(昭和50)年に写真家として独立。1983(昭和58)年に半年にわたり撮影した中野刑務所の解体現場をはじめ、雑誌の取材で訪れたドイツで撮影したベルリン大劇場の解体など、世界各地の変貌する都市と建築を捉えた4年間の作品群を「建築の黙示録」として発表。同名の作品集は「木村伊兵衛賞」を受賞した。

 渋谷を「被写体」に選んだ同著では、工事途中でむき出しになったコンクリートや、鉄パイプや建設養生ネットなどで所々が覆われた駅のホームなど、変わりゆく渋谷駅の姿をモノクロ写真に収めている。街の風景と共にページに並ぶのは、宮本さんが「たまたま街で出会いすれ違った」若者や外国人観光客などのスナップ写真。2020年~2025年の6年間で撮影した作品のうち89点を掲載した。

 宮本さんは「渋谷スクランブル交差点は多くの人々が行き交う日本の顔になっている。100年に一度と言われる都市の『大改造』が現在進行中で、そんな渋谷の都市改造現場を眺めるのと同じ目線で、通り過ぎる人々も撮りたいと思い、5年ほど前から毎週のように通って撮影した」と振り返る。

 渋谷をテーマに写真を撮ろうと思ったきっかけについては、旧東急百貨店東横店(2020年営業終了)の3階から通りに降りていく際に、特に狙って撮影したのではなく「偶然に、すれ違ってカメラに写った人の姿だった」と言う。かつての東京メトロ銀座線のホームで乗降する人々のすぐ脇で、「遮るものなく見えている解体工事が進行するのを記録した。駅やデパートの解体が、まるで都市を彫刻するように丁寧に進められているように見えた」とも。

 タイトルの「本気にすることができない渋谷」は、英・詩人のT.S.エリオットの長編詩「荒地(The Waste Land)」にある詩語「Unreal City」を、英文学家・吉田健一が「本気にすることができない都会」と日本語訳したものに着想を得た。世界から大勢の人が押し寄せ、「信じられないようなにぎわいの渋谷スクランブル交差点、次々に高層ビルが建てられ、驚くほど短期間に変化している、夢のような渋谷の街を表した」と話す。

 本の最後には、12ページにわたり、宮本さんの「渋谷」に対する思い出や、駅周辺の建築物、行き交う人々や、タイトルに込めた意味などについての随筆を収める。今後の渋谷についても、「渋谷は、渋谷川、宇田川が合流する谷の地形に街があり、近代的な都市計画を実施しにくい街。この独特な地形の場所に、日本を代表する建築家たちが、どのような都市を建設するのか期待している。完成するまで見続けたい、撮り続けたい」と思いを明かす。

 価格は3,500円。全国の書店やアマゾンなどで販売。

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