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ヒカリエで「イングレス」を活用した初の避難訓練 防災ガールが企画

小雨がぱらつく中で、ミッション遂行に向けてポータルを巡る山田さん(左)、水野さん(右)。明治通り・ビッグカメラ前の「ホープくん」を見つけ早速ハックする2人。

小雨がぱらつく中で、ミッション遂行に向けてポータルを巡る山田さん(左)、水野さん(右)。明治通り・ビッグカメラ前の「ホープくん」を見つけ早速ハックする2人。

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 「防災の日」を翌日に控えた8月31日早朝、グーグルが提供するスマートフォンの位置情報ゲーム「INGRESS(イングレス)」を活用した次世代版の避難訓練「LUDUSOS(ルドゥオス)」が渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)を中心として渋谷駅周辺で開催された。早朝7時、時折小雨が降る悪天候の中にもかかわらず、ゲームユーザー100人余りが参加し、スマホを使った新しい避難訓練に積極的に取り組んだ。

ポータルを見つけ、災害クイズに解答する様子

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 主催したのは一般社団法人「防災ガール」。20~30代の女性たちで構成される同団体は「防災をもっとオシャレでわかりやすく」をコンセプトに、防災グッズの開発や実用的な防災情報の発信、ユニークな防災イベントやワークショップなどを展開している。今回は「イングレス」を活用。青(レジスタンス)と緑(エンライテンド)の2陣営に分かれて行う同ゲームは、リアル(地域の名所旧跡や建物など)とバーチャルが融合した地図上のフィールドで陣地を取り合うもの。現在、全世界のダウンロード数は1000万回以上を超える人気を誇っている。

 イングレスを使った避難訓練は今回が初めて。防災ガール代表の田中美咲さんは「もともと私自身がイングレスのファンで、防災と組み合わせたら面白いのではないかと思った」ことがきっかけだという。「街に人が多い日中の時間帯に実施すると歩きスマホを助長してしまう。平日は参加者の皆さんも仕事があると思うので、いつもよりちょっと早起きして出勤前に参加してもらいたかった」と早朝訓練の理由を明かす。

 今回の具体的な訓練方法は、イングレス上に渋谷駅周辺の防災・災害に関連する4~5所のスポット(ポータル)を1ミッションとし、主催者側で計20ミッションを用意。2つの陣営に分かれた参加者は、制限時間60分間内に指定されたポータルに足を運び、ゲームのミッションクリアを目指す過程の中で、「一次避難場所」「帰宅支援ステーション」「帰宅困難者受け入れ施設」など、実用的な災害対策に関するクイズなどを通じて情報が学べるユニークな取り組み。訓練名称の「LUDUSOS(ルドゥオス)」は、古代ローマの剣闘士の「Ludus(訓練施設)」+「SOS(緊急事態)」を合体した造語だという。

 イベントに参加した会社員・山田さんは「まだ始めたばかりでレベル3だが、会社帰りにイングレスをしながら帰るのが楽しい。ダイエットにもなるし、とてもはまっている」と話す。今回は同僚の水野さんと一緒に参加し、「宮益坂編」(渋谷ヒカリエ→ホープくん→神社案内→ローソン→第三西青山ビル入り口→Lotus Women Mosaic)のミッションに挑んだ。各ポータルで出題される災害クイズについて、水野さんは「職場は虎ノ門で渋谷に全く土地勘がないので、実際に災害が発生したら、どう避難すれば良いのか迷うと思う。例えば、割れたガラスや建物の倒壊など、イングレスを通じてどこをチェックすれば良いかが理解できた」という。クイズの正解・不正解に応じて、参加者たちが一喜一憂する姿も目立ち、通常の防災訓練とは異なる和気あいあいとした雰囲気が見られた。

 そのほか、「渋谷は道幅も狭く高いビルが多い。実際に地震が起きたら、建物の倒壊を避けるのが難しくより危険を感じた」(男性30代、会社員、横浜市在住)、「すぐ目の前にポータルがあるのに信号があったり、歩道橋があったり、なかなか思うように巡れなかった。渋谷駅周辺の道の複雑さをあらためて感じた」(女性30代、会社員、川崎市在住)など、渋谷の街に潜む危険を肌で実感したという声も寄せられた。

 ゲーム終了後には、参加者同士がミッション成功・失敗を振り返るとともに、「避難経路」「避難場所」についてディスカッションを行う時間も設けられた。ゲームは僅差ながらエンライテンドチーム(緑色)が勝利し、笑顔でお互いの健闘をたたえ合う姿も見られた。田中さんは「防災に対する行動変化につながったと思う。今回の事例を仕組み化していき、企業や行政など、全国で行っている通常の防災訓練の中でイングレスを活用していきたい」と手応えを口にする。

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