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渋谷区役所にデフリンピック「応援アート」 地元中学生ら制作

お披露目された応援アートと制作した門秀彦さん(中央)や原宿外苑中学校の生徒ら

お披露目された応援アートと制作した門秀彦さん(中央)や原宿外苑中学校の生徒ら

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 デフ(耳が聞こえない)アスリートの国際スポーツ大会「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」に向けた機運醸成として制作された応援アートが8月5日、渋谷区役所1階東エントランスに登場した。

門秀彦さんがベースの手を描き生徒や地域の人たちがメッセージなどを書き込んだ

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 デフリンピックは聴覚に障害のあるアスリートが参加し、補聴器などを外して競技を行う大会。1924年にフランスで始まり、オリンピック・パラリンピック同様4年に1度春と夏に開催。今年は11月に東京を中心に日本で初めて開催。渋谷区内にある東京体育館(渋谷区千駄ヶ谷1)で開閉会式や卓球の試合が行われる。区では昨年度から、デフアスリートによる学校訪問やトークイベント、普及パネルの制作・貸し出しなどを通じて大会の周知などに取り組んでいる。

 応援アートは、聴覚障害のある両親を持つ「コーダ」であるアーティストの門秀彦さんと、原宿外苑中学校の生徒らが協働し制作。「世界中から来るデフアスリートを応援する」というコンセプトから、世界共通のハンドサインとなっている「拍手」と「頑張れ」の手話を合わせた「サインエール」をモチーフに、「立ち上がって身振りしているようなイメージ」の手を門さんが描き、その手の中や上に、同校で6月7日に開催されたパラ・デフスポーツ体験イベント「原リンピック」で生徒や来場者らが応援メッセージやイラストを描いた。サイズは高さ1.6メートル×幅1.1メートル。

 アートは大会期間中を含む11月12日~26日、同体育館近くの千駄ヶ谷大通り商店街にフラッグ(約76枚)として掲出。来街者のおもてなしなどを担う区独自の大会ボランティアのユニホームやキャップ、ネックストラップなどにも展開する。。当初からフラッグに展開する計画があり、風に吹かれて「動いて見える」ことも想定した絵にしたという。

 区役所には、門さんが制作した、開催日までのカウントダウンボードも設置するほか、同所の電子掲示板では区オリジナルの応援動画も上映。動画は、デフアスリートや手話通訳、区民、スポーツボランティアなど渋谷に関わる人たちの「応援の声」を集めて制作した。日本手話・日本語・英語字幕をつけ、海外の人も含め、聞こえる人・聞こえない人双方に伝わるようにした。9月以降は、渋谷センター街や原宿エリアの屋外ビジョンでも上映する。

 展示初日となった5日、門さんや同校の校長・副校長と共に生徒会副会長の鈴木瞬さん(中学2年)、書記の岡正史朗さん(同)らが、長谷部健渋谷区長を表敬訪問。

 鈴木さんは、絵が得意ではないながらも「応援したい気持ち」を込めて手を挙げた顔を描いた。「小さい絵を描いたが、皆が描くとものすごい迫力になって元気になる」と完成作品の印象を語り、区役所や街なかで展示されることについては「友達と見たら『皆で作ったやつだ』と楽しみたい。いろいろな人に見てもらえるのがものすごくうれしい」と喜んだ。

 作品制作には参加できなかったが、イベント当日に来場者が絵などを描く様子を近くで見ていたという岡さんは「早いペースで絵が埋まり、アートの力ってすごいんだなと感じた。このアートの力強さであれば、選手にも(応援の力が)届くのでは。いろいろな人に見てもらえると、デフリンピックや(参加した)皆の情熱が伝わると思うので、すごく楽しみ」と続けた。

 門さんは「パワーや勢いみたいなものが感じられるので近くで見てほしい」とも呼びかける。大会に合わせて展覧会やワークショップを含むポップアップストアも展開予定。「デフリンピックという一つのお祭りを盛り上げることも大事だが、堅い印象を持ったりちゅうちょしたりする人もいる。ろう者や手話などに出会う、もっと入りやすい入り口を作りたい。その機会になれば」と話す。

 「パワフル」と作品の感想を口にした長谷部区長。渋谷区はかねてパラを含め障害者スポーツの普及に努めてきたこともあり、「いろいろな方にデフスポーツを知ってもらえるチャンス。こういう世界もあるということを知ってもらえると楽しみ方も増えてきて、知ることでいろいろなことのきっかけになると思う」と期待を込める。

 原画の展示は、区役所=11月14日まで(10月30日~11月3日は渋谷ヒカリエで開催される「超福祉の学校」場内で展示)、東京体育館の会場内=大会期間中の同15日~26日。応援動画の上映は同26日まで。

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