渋谷の解体工事現場の約50メートルにわたる仮囲いを「舞台」に、写真家ヨシダナギさんが捉えた、渋谷区観光協会観光大使で歌手の小林幸子さんらの写真を掲出する「BAG@渋谷二丁目ストリートギャラリー」が2月27日、全面オープンした。
東京建物が手がける同プロジェクト。「BAG」は、同社が2021年10月~2025年10月に京橋で運営していたアートギャラリー「Brillia Art Gallery」の頭文字に由来する。他社との差別化や社員の創造力向上などを目的に、自社のビルや拠点、解体予定のマンションなどを活用し、アート作品を展示するなどのプロジェクトを展開してきた。
同プロジェクトは、東建インターナショナルビルと東建長井ビル跡地(渋谷区渋谷2)の開発担当者から仮囲い活用の相談を受けたことをきっかけに始動。両ビルは再開発に伴い解体工事が進んでおり、新たな建物が完工するまでの空白期間を活用する。
渋谷区の基本構想「ちがいを ちからに 変える街。」を踏まえ、多様性や街に関わる人々に焦点を当てるテーマに決定。撮影は、少数民族やドラァグクイーンなどを撮影してきたヨシダさんに依頼した。ヨシダさんが広告ではなく屋外で作品を展示するのは初めてだという。「仮囲いという、それ自体を目的に訪れる人はほとんどいない場所で、偶然通りがかった人の目に入る。しかも仮囲いはいつか必ず撤去される。その刹那(せつな)性がすごくいいと思った」と振り返る。
展示スペースは約50メートル。昨年10月に第1弾として、渋谷区観光協会観光大使でミュージシャンの小宮山雄飛さん、渋谷女子インターナショナルスクール(渋谷2)校長で渋谷区観光協会観光フェローの赤荻瞳さん、ビームス(神宮前1)設楽洋社長、シブヤスタートアップス(神南1)渡部志保会長らを起用した10点を展示。今回、新たに小林さんと、一般公募から選ばれた渋谷にゆかりのある12組の計13点を追加した。写真はポリ塩化ビニール系のシートにプリントし、屋外用ラミネートを施している。仮囲い沿いを歩く人の目線の高さや、作品と一緒に記念撮影できることを意識して展示した。
ヨシダさんが公募で選ばれたモデル未経験者を撮影するのは、少数民族以外では初めて。「渋谷だったら撮れるかも、やってみたら面白いかも」と感じたという。撮影には「不安もあった」が、「無理に誇張したり演じてもらったりしなくても、その人が立つ姿そのものがドラマや映画のワンシーンのようにはまった。撮る側としてはシャッターを押すだけでよかった」と振り返る。「渋谷は脇役のいない街。どこに立ってもその人が主役として進んでいく物語がある珍しい街だと感じた」とも話す。
撮影場所は全て渋谷区内。指定場所もあったが、ヨシダさん自身も下見をして選んだ。区内に住んでいたこともあるというヨシダさん。学生時代は「新宿派」だったと言い、「行きたいけれどハードルが高い、憧れの場所だった。センター街などを歩けてうれしかった」と笑顔を見せた。
色彩豊かな作風で知られるヨシダさんは、「場所そのものに色味がないと出せない。ヨシダナギらしく見える場所」を探したという。「普段は仮囲いを見ずに歩くと思うので、少しでも視界に入ったときに『何だろう』と思ってもらえるような強い色、いつものような色合いが出るよう仕上げた」と話す。「作品はもちろん、見に来る過程で渋谷に足を踏み入れたとき、誰もが主役になってなじめることを体感してほしい」と呼びかける。
東京建物・住宅事業企画部マーケティンググループ・グループリーダーの鹿島康弘さんは、「工事現場は味気ない場所だが、見に行ってみたいと思ってもらえたら。従前から人通りが多い場所ではなく、劇的に増えるとも思っていないが、訪れた人の目に留まり、記憶に残るものになれば」と期待を込める。
展示は10月31日まで(予定)。以降の展示企画についても検討していく。