渋谷マークシティ連絡通路内で公開中の岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」の恒例「すす払い」が11月7日と14日の終電後、2日間にわたり実施された。延べ32人のボランティア(事務局員除く)が参加し、1年間で作品表面に付着したほこりや汚れを丁寧に取り除いた。
1954(昭和29)年3月1日、米・水爆実験で被爆したマグロ漁船「第五福竜丸」をテーマとした同作は、「日本版ゲルニカ」とも称される大作。1960年代後半にメキシコの新築ホテルのロビーに飾るため描かれたが、依頼主の経営悪化によりホテルは未完成のまま放棄。長く行方不明となっていた作品は、2003(平成15)年にメキシコ郊外の資材置き場で発見され、「明日の神話再生プロジェクト」によって修復。2008(平成20)年11月17日に渋谷で一般公開が始まった。
「すす払い」は翌2009(平成21)年から毎年行われており、京王井の頭線の終電後、始発までの約3時間という限られた時間の中で行われている。今年は、幅30メートル、高さ5.5メートルの壁画全体を14ブロック×縦3段=計42ブロックに区分したうち、右側の8ブロックを対象に清掃した。ボランティアらは右手に「はけ」、左手に掃除機を持ち、作品を傷つけないよう細心の注意を払いながら、表面に付着した綿埃(わたぼこり)を丁寧に払い落とした。
壁画の下は、現在では1日20万人以上が行き交う渋谷の主要な動線の一つ。NPO法人「明日の神話保全継承機構」によると、「今年も作品表面に付着した埃をきれいに取り除くことができた」という。今夏は連日の猛暑に見舞われたが、長期保存のために保護剤の塗布を行っているほか、壁面裏側には換気設備を設置するなど、湿気やカビの発生を防ぐ環境改善にも取り組んでいる。
同NPOでは、クラウドファンディングによる修復支援を元に、第3期改修工事を2026年3月~5月(予定)に実施予定。正面から見て左側6ブロック(今回清掃を行わなかった残り)の壁画の改修を行い、2023年に始まった修復作業が全て完了する見込み。
同NPO事務局長の原和弘さんは「今年は大阪・関西万博の開催や、映画『大長編 タローマン 万博大爆発』の上映など、岡本太郎への関心が高まった一年だった。今年のすす払いには2日間で32人が参加し、昨年より多くの方が加わった。清掃を通じて『明日の神話』に触れ、この作品を共に守っていく輪が広がっていくことを、うれしく思う」と話す。