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渋谷のミニシアター「シネマライズ」、30年の歴史に幕

最終上映に来館した観客一人一人にあいさつして見送る頼光裕社長

最終上映に来館した観客一人一人にあいさつして見送る頼光裕社長

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 渋谷・スペイン坂上のミニシアター「シネマライズ」(渋谷区宇田川町)が1月7日、閉館した。

最終上映後に館内の写真を撮る来館者たち

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 1986(昭和61)年6月に開館した同館。同館が入居するライズビルは、建築家・北川原温さんが「機械」をイメージしてデザインした外観などが特長的。1996年に2スクリーンへ改装し、2004年にはバーが営業していた地階にデジタル上映劇場「ライズX」をオープンするも、2010年からは開館当初の1スクリーン(303席)で営業。2011年からはパルコ(神泉町)エンタテインメント事業部に上映作品の番組編成を業務委託していた。

 開館以来数多くのミニシアター系ヒット作を上映してきたが、渋谷パルコの建て替えに伴い周辺環境が「激変する」ことや、映画館を取り巻く環境や興行業界の構造の変化などから約30年の歴史に幕を閉じることを決めた。

 同館のオープニング作品は、第2次世界大戦~戦後を背景に英国人女性の人生を描いた「プレンティ」。歴代上映作品で一番の人気作品は、36週にわたるロングラン公演となった「アメリ」で、以降はアーヴィン・ウォルシュのカルト小説が原作の青春映画「トレインスポッティング」、マサラムービー「ムトゥ踊るマハラジャ」などが続く。最終上映作品は、「黄金のアデーレ 名画の帰還」だった。

 営業最終日に合わせて来館した人も多かったこの日、映画関係の学校に通っていたこともあり10年近く前から同館に足を運んでいたという女性は、「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」(2008年初上映)などを同館で鑑賞したと言い、「ランドマークが無くなってしまう感じで悲しい」と話した。「ミニシアター世代」である会社員・佐藤宗睦さん(52)は閉館を聞きつけて初めて来館したという。「(ミニシアター系は)2000年以前に終わっていたのかな」と寂しげな表情を浮かべつつ、「(同館の)影響力はあったと思う。閉館しても皆の胸の内には残る。最後に来て良かった」笑顔を見せた。

 同館を経営していた泰和企業(宇田川町)の頼光裕社長は、昨秋閉館を発表し以降、「反響がすごかった」と言い、同館で見た映画の思い出や感謝の言葉などがツイッターに投稿されているのを見て「いい仕事ができたのかな」と胸をなでおろす。2010年に1スクリーンに戻った時が「一番厳しかった」と振り返りつつ、「楽しくやってこられて満足」と話す。今後は、洋画の買い付けなど「映画に携わり続けていきたい」とも。「いろいろな点で至らない劇場だったと思うが、見に来てくれた方々がいたので、これまでやって来られた」と感謝の気持ちを表した。

 閉館日となったこの日は、ロックバンドMAN WITH A MISSIONの新曲「Memories」のミュージックビデオが、同館劇場内で撮影されていたことも明らかになった。蜷川実花さん監督の下、同館「最初で最後の試み」(頼社長)で制作サイドからの要望を受けて昨年12月に撮影されたという。

 同館閉館後の跡地には、スペースシャワーネットワーク(港区)が手掛ける地階のライブハウス「WWW」の2号店が9月にオープンを予定。同館のホームページは今月8日、アーカイブサイトとして刷新する。

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