特集

「高級化」&「味見」需要で粒単価アップ
渋谷バレンタイン商戦2003

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■大型商業施設系のバレンタイン企画

「渋谷エクセルホテル東京」5階の「エスタシオンカフェ」では2月1日~14日、特別メニューとしてチョコレートの中にストロベリーが香るバレンタインカクテル「ラブメッセージ」(850円)を発売中。チョコレートドリンク、ストロベリークリームリキュール、ストロベリーシロップを使い、頭の上に雪のようなミルク、ココアバターをトッピングしたホットデザートカクテルは、アルコールが苦手な女性にも最適。また、2月14日には当日限定で、ケーキ、ブリュレ、アイスクリーム、お茶(コーヒー、ハーブティー、紅茶、中国茶から1品選択)がセットになった「バレンタインスペシャルケーキセット」(1,300円)を用意する。同社広報担当の森さんは「昨年、バレンタイン企画を打たなかったところ、皆様から『バレンタインは何もしないのですか?』という問い合わせがあった。『エスタシオンカフェ』は待ち合わせスポットになっているし、ホテルは駅とつながっているので終電を気にすることなく、ゆっくりくつろいでもらいたい」と話す。2月1日に販売を開始したバレンタインカクテル「ラブメッセージ」はすでに「売れ行き好調」とのこと。バレンタインデーを待つまでもなく、女性客はスイーツに敏感に反応している。

一方、「渋谷マークシティ」では、EAST棟3階「スターバックスコーヒー」前に特設コーナーを設け、2月14日まで「マークバレンタイン」を開催中。「ダロワイヨ」「ゴディバ」「ノイハウス」「ソニープラザ」「レオニダス」「アフタヌーンティーティールーム」など6店のチョコレートを販売している。

渋谷エクセルホテル東京 渋谷マークシティ

「セルリアンタワー東急ホテル」(桜丘)では、2月9日~14日まで、バレンタインデーをロマンチックに彩る宿泊プラン「バレンタインスペシャル」を実施する。同社は昨年、同様のプランを実施し、好評を博したことで本年も試みることになった。東京の夜景を見渡せる「スーペリアフロア」の部屋にスパークリングワイン(ハーフボトル)が届けられ、朝食も部屋でとる(ルームサービス)ことができる。2名1室40,000円(25~34階)での宿泊。

セルリアンタワー東急ホテル

開業以来の大規模リニューアル後、初のバレンタインを迎える「渋谷パルコ」は、アメリカ人マネキン家族が繰り広げるブラックコメディ「オー!マイキー」をバレンタイン・キャラクターに採用し、スペイン坂上の「SR6」に「マイキーハウス」を開設し11体のマネキンを展示しているほか、チョコレート型タオルなど会場限定のバレンタインオリジナルグッズも販売している。期間中、「パート3」(一部店舗除く) でショッピングをすると先着総計1万名にパルコオリジナル「オー!マイキー」シールがプレゼントされるほか、「パート1」では各ショップで10,000円以上の購入者の中から抽選で総数250名に映画「クリスティーナの好きなこと」(主演:キャメロン・ディアス)関連グッズ(鑑賞券をペアで25組50名、映画オリジナル特製チョコレート50名、限定パンフレット&ポスター150名)をプレゼントする。

パルコ

「東急ハンズ渋谷店」でも各フロアでバレンタイン関連企画を展開している。東急ハンズでは目的に応じてチョコレート関連商品を3つのジャンルに分類しているのが特徴。

  1. 商品を求めている人には「完成品コーナー」
  2. 手作り派には「手作りセット・レシピ・キッチン雑貨コーナー」
  3. ラッピングに凝りたい人に「ギフト&ラッピングコーナー」

例えば(2)では生チョコやパウンドケーキ、ブラウニーなどが手軽に作れる「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ生チョコセット」(1,500円)や「手作りミニチョコパウンドセット」「ブラウニー」「ガトー・クラシック・オ・ショコラ」(各500円)などを2階Cフロアに揃えている。さらに、同じフロアに手作りで欠かせない調理器具、「ハンドミキサー」(1,780円)や「ゴムべら」(1,500円)、ダブルホイッパー(1,400円)が並んでいる。(3)ではチェコレートに応じて、ボックスやバスケット、ペーパーシートなどが豊富。ラウンドボックス(500円)やハートボックス(300円)の人気が高い。

東急ハンズ
渋谷パルコ SR6 東急ハンズ渋谷店 東急ハンズ渋谷店

■表参道周辺に集積する本格派ショコラティエ

近年、耳にする機会の増えた「ショコラティエ」と「ショコラトリー」。前者はフランス語で“チョコレート専門店”を意味するが、日本ではパティシェ(菓子職人)と区別するために「チョコレート菓子職人」まで含めて総称することもある。一方、「ショコラトリー」は“チョコレート工房”や“チョコレート製造アトリエ”の意味合いが強い。店名に「ショコラ」や「ショコラティエ」、「ショコラトリー」をつける店は当然のことながらヨーロッパ発のブランドショップが多く、渋谷にも有名店が店舗を構えている。

パリ5店舗、ニューヨーク2店舗、東京に1店舗の直営店を展開する世界のブランドが「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」。1998年に表参道に誕生した、国内1号店の「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」(北青山)には、パリのアトリエで作られた繊細で芸術的なチョコレートが並んでいる。通年販売している「ボンボン・ドゥ・ショコラ」(1粒280円)は特に人気が高い。ショップマネージャーの佐藤さんは「表参道という場所柄オシャレな女性が多い。お小遣いの少ない若い女性たちは店頭でボンボン・ドゥ・ショコラを1粒、2粒つまんで帰る。彼女たちはやがて歳を重ねて自由に使えるお金が増えた際には、バレンタインの時期など多少高額のチョコを買ってくれるようになる」と話す。

バレンタインデー直前には店頭に列がつくことで有名な同店。しかし、それ以上に「配送が追いつかないほど忙しい」(佐藤さん)のも事実。本年のバレンタイン限定販売商品は、「ペイネの恋人たち」が描かれたハート型ナッシュを赤いリボンで結んだ「ラブ・デクラレーション」(5,000円)。ミルクチョコレートの台座の上にハート型ナッシュとハート型チョコレートが並んだもので、同じく「ペイネの恋人たち」が描かれたガナッシュが入ったハート型ナッシュと、ボンボン・ドゥ・ショコラの詰め合わせ「ハートボックス」(T1=2,400円、T2=7,700円、T3=13,500円)とともに「すでに予約が殺到している」(佐藤さん)という。ほかにも大人味のボンボン・ドゥ・ショコラの詰め合わせ「ミニ・コフレ・メゾン」(3,600円)が好評。佐藤さんは「最終的に問われるのは味。とにかく顧客は味に敏感。バレンタインの時期は、普段から利用してくれる顧客とともに全国から注文が入る。13日がピークになりそうだ」と話す。

ラ・メゾン・デュ・ショコラ
ラ・メゾン・デュ・ショコラ ラ・メゾン・デュ・ショコラ

「アニヴェルセル表参道」(北青山)の今年のバレンタイン限定ショコラは、今年初登場の「ラ ムール ブレ」(5,000円、限定300個)と、毎回売り切れるという「フォンダン ショコラ」(2,800円、限定2,000個)。同社では昨年より、FAXで事前予約を行っている。2品のオーダー受付は、2月7日本日の午後8時まで。「テーマ性を設けているのが当社の特徴」(広告宣伝担当の星さん)の言葉どおり、「ラ ムール ブレ」は四つ葉のクローバーをモチーフにし、それぞれの葉には「愛」「健康」「富」「名声」という4つの願いが込められている。「愛」を表すフランス産のローズジャムと濃縮したバラのエキスが特徴のビターショコラ、「健康」を表すフランス産ブルーベリーを使用した身体にやさしいショコラ、「富」を表すシャンパンとブランデーの香りをプラスしたリッチなショコラ、「名声」を表す力強いビターテイストのグランショコラなどから成る、凝った詰め合わせ。一方、ビスキーの味わいとガナッシュのハーモニーが絶妙のハート型の「フォンダン ショコラ」は同店の記念日限定ショコラとして定番人気の一品。ほかにもハート型のケースごと食べられる「ル クール ダンジュ」(3,800円)や、丸型トリュフ、四角のトリュフ、生チョコから成る「プレミアム トリュフ」(3個入り800円、6個入り1,600円)も人気とのこと。

同社の商品づくりの特長は女性スタッフの意見が反映されていること。「素材や味にこだわるのはもちろんだが、夢とテーマ性のあるチョコレートを届けたい」と星さんは語る。また、今年の傾向しとして「不況、デフレ経済と言われる中、消費者は自分にとって必要なものをじっくり選択するようになり、より本物志向になってきた。おいしいものを少しずつ食べたいという欲求はさらに高まっている。また、男性が自分用に購入されるケースも増えてきた」と具体例を挙げる。

アニヴェルセル表参道

表参道周辺にはほかにも、フランスの高級チョコレートメーカー「ヴァローナ」社の直営店「サロン・ド・ショコラ」(北青山)や、スイスの本格派生チョコを販売する「レダラッハ」(南青山)なども店を構えており、いわば“スイーツ激戦区”となっている。

アニヴェルセル表参道 アニヴェルセル表参道 アニヴェルセル表参道

■代官山に登場した気鋭のショコラティエ

2002月6月、代官山にオープンしたのが、グローバルダイニングが手掛ける初のショコラティエ「デカダンス ドュ ショコラ」(鉢山町)。洋館を改装した店舗にはすでに絶えず顧客があふれ、ニューフェイスの人気ぶりが伺える。「カカオ豆の産地や品種にこだわった、最高級クーベルチュールや厳選された素材を使い、同店のオリジナル製法で、本来の苦み、酸味、コクを一粒一粒に封じこめた」という姿勢は、同店の人気商品「インデックス」(42枚4,800円、21枚2,500円)や「チョコレートボックス」(3,500円)に表れている。シェフパティシェを務める三浦さんが工夫を凝らして作り上げた商品である。「インデックス」はカード状になった7種類のクーベルチェール。「チョコレートボックス」は、最高級のクーベルチュールを使い、厳選したドライフルーツやナッツをあしらった宝石箱を思わせる一品。三浦さん自身が厳選して詰めるという。同店は、イートインができるのも特徴。同社広報担当の田中さんは「初めて迎えるバレンタインだが、すでに電話やウエブでの問い合わせが殺到し、発送が追いつかないほど。当初予想した以上に忙しく、反響の大きさに驚いている」と話す。

グローバルダイニング
デカダンス ドュ ショコラ デカダンス ドュ ショコラ デカダンス ドュ ショコラ デカダンス ドュ ショコラ

■専門店以外も独自の企画で商戦に参入

和菓子業界もバレンタイン商戦を逃さない。広尾の和菓子店「菓匠正庵(かしょうしょうあん)」では、バレンタイン商品として「生チョコ大福」(1個350円)を販売。ミルクあんに生チョコを詰め、モチの皮で包んでココアパウダーをふった大福は幅広い人気を集めている。一方、「東急フードショー」に出店している「富留屋古賀音庵」(幡ヶ谷)から2001年にデビューした新ブランド「創り人英喜」が今年、送り出すのが「バレンタイン上生」(1,000円)。洋菓子のテイストを取り入れた和菓子として注目されている。販売は予約のみ。

菓匠正庵/TEL03-3441-1822 富留屋古賀音庵

世界各国のワインをセレクトする「ワインマーケットPARTY恵比寿店」(恵比寿)では、ワイン好きに贈るチョコレートが多品種揃っている。特にフランス・ソーテルヌ産貴腐ワインを使用した「レザン・ドレ・オゥ・ソーテルヌ」(250g=1,800円、50g=550円)シリーズが人気。珍しいボトルスタイルの「レザン・ドレ・オーソーテルヌ・ハーフボトル」(2,600円)はボトルの下からショコラを取り出すユニークな商品。他にもカカオバター以外の乳脂肪やオイルを一切使用していないイタリアのブラックチョコレート「ドモーリ・ブレイク」(500円)も話題になっている。チョコレートコーナーでは、陶器に入ったフォンデュ用チョコレート「フォンデュ・オン・ショコラ」(2,200円)にもユーザーの関心が寄せられているとのこと。同店食品マネージャーの徳永さんは「昨年夏に店に入った『レザン・ドレ・オーソーテルヌ・ハーフボトル』は通年商品としても人気が高い。バレンタイン期間は、食後酒とセットで売り出すほか、ワイン1本にチョコを添えてもらうよう提案している」と、ワインショップらしい工夫をほどこしている。

ワインマーケットPARTY
ワインマーケットPARTY恵比寿店

イタリア語で「綺麗・素晴らしい」という意味を表す、イタリアの食材を輸入販売する「ベリッシモ」(桜丘)。2001年9月に開業した同社はイタリアにこだわるイタリア食材セレクトショップ。1月度の売れ筋1位はマイアーニ社(イタリア・ボローニャ)の「フィアット・クレミーノ・チョコレート」。「フィアット・クレミーノ」は、新鮮なヘーゼルナッツのクリーム、ミルクチョコレート、アーモンドのクリームが4層になって重り合ったもので、もともとは1911年発売されたフィアット社「タイプ4」の宣伝に使うために、フィアット社から直接、製作を依頼されたチョコだったため「4」にちなんで4層になったというエピソードがある。「バレンタインギフトラッピング」の受け付けは1月末に終了しているが、同社のような専門店もバレンタイン商戦に参入し、消費者の選択肢が広がっている。

ベリッシモ

バレンタインを前に、早くもホワイトデーに向けた商品企画にも動きもが出ている。カルピス(恵比寿西)は3月3日より、バレンタインデーのお返しのための「カルピス プチサイズホワイトデーセット」(280円)を全国で新発売する。これは「カルピス」プチサイズ(紙容器120ml)が2本セットになったもの。同社では「バレンタインのお返しには、以前はキャンディーがよく使われていたが、最近ではハンカチ、アクセサリー、クッキーやぬいぐるみなど幅広くなっている。義理チョコのお返しにも、女性側はクッキーやチョコなど手軽なちょっとしたもので十分と考えている。男性が選ぶホワイトデーのお返しにも低価格の手頃なおやつ類が多いようだ」と定め、「カルピス プチサイズホワイトデーセット」の発売に踏み切ったとのこと。

カルピス

■定番人気の「ゴディバ」も期間限定商品で応戦

ベルギー王室御用達の高級チョコレート「ゴディバ」は、1972年の日本上陸以来、すでに30年以上の歳月を経た今もなお圧倒的なブランド力を発揮している。今年のテーマは“Love In Bloom”。「手に取った瞬間からそこに恋の花が咲く」というイメージで、パッケージも華やかに真っ赤なバラのモチーフをあしらっている。同社は昨年まで、バレンタイン商戦は定番の商品で対応してきたが、今年からバレンタイン期間限定の商品を登場させた。赤いプチ・ハートとゴディバのマークを表面にあしらった「パレ・バレンタイン(ミルク/ビター)」や、可憐な花々を形どった「フラワーチョコレート(ミルク/ホワイト)」などを組み合わせたプチ・ゴージャスな商品が売れている。中でも「バレンタイン・カラクS」(6枚入り、650円)は薄くてコンパクトなため、義理チョコ用としても人気が高い。広尾にオフィスを構えるゴディバ・ジャパンの江森さんは「今の時期は、まず女性が“味見”を兼ねて自分で食べてみる時期で、2月10日を過ぎたあたりから“本番用”の商品が動き出す」と話す。特に今年のバレンタインは金曜日であるため、業界としても期待が高いそうだ。店頭での売れ筋は1,000~1,500円の商品。

ゴディバ・ジャパン

「ヨーロッパに行って本場のチョコを口にしている女性が増えている。まがいものは通用しない」(「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」ショップマネージャーの佐藤さん)というように、日本の女性は世界中のおいしいものを口にしている。こうした本物志向の高まりを受けて、バレンタイン商戦は従来の「ギフト一色」だった商戦から、「自家用」の高級グルメ商戦へと大きく変貌を遂げつつある。不景気を背景とした雇用関係の流動化は、「義理チョコ」の個数減少へと向かわせる。プランタン銀座が行った「2003年版バレンタインのアンケート調査」(1月)によると、今年予定している「義理チョコ」の数は7.5個で昨年の7.8個に比べて0.3個減、価格は750円と昨年の970円から大幅にダウンした。「義理チョコというより、会社ではOLが集まってお金を出し合い、信頼おける上司だけには高級チョコを贈るようになっている」(「アニヴェルセル表参道」広告宣伝担当の星さん)というように、「義理」でなく、いわば「信頼の証」としてチョコレートが贈られている。当然ながらこの場合も、自分たちで吟味し、美味しいと思った本物が贈られる。一方で、本命チョコレートにかける価格は3,520円と昨年の3,410円を100円上回る結果となり、本命への集中度が高まる結果となっている。さらに同調査では「自分用にもチョコレートを買う」という答えも75パーセントを占めた。「どれも同じような」商品イメージだった以前に比べ、海外老舗専門店や国内気鋭のショコラティエの参戦で選択肢が多様化した今、自ら商品を吟味するポテンシャルが一気に上がったと考えられる。

消費者の本物志向を反映して、「高級化」と「個性化」が進むチョコレート市場は、バレンタインデーを控えたこの時期、従来の「ギフト需要」から「自家需要」へと静かなシフトが続く。日本チョコレート・ココア協会では今年のバレンタイン商戦のチョコレート市場は昨年同様の520億円と予測している。これは「義理チョコ」需要が低下する中、高級商品の登場で確実に1個当たりの単価が向上していることを物語る。景気低迷期の中の「プチ贅沢」として、チョコレート市場はオトナの新たな「食」のマーケットを開拓する。

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